エチオピア

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Dr. Aberra Debelo, (カントリーディレクター)

Sasakawa-Global 2000
Kirkos Sub-City, Kebele18, House No. 033 Kazanchis,
PO Box 12771
Addis Ababa, Ethiopia
Email:
SAAエチオピアのスタッフ一覧は、 スタッフのセクションをご覧ください。

SG2000エチオピアの歴史

エチオピアの農業は現在も、大部分が、低インプット・低アウトプットの自給自足農業だということができます。技術水準は一般に基礎レベルであり、面積あたりの収量はおそらく世界で最低水準となっています。作物主体の農業が主流で、人口密度の高い、農業の潜在的可能性が高い地域であっても、知識不足や資金不足、未発達な市場が生産性の制約になっています。

1979-80年度から1991-92年度まで、年間農作物生産量は、487万トンから781万トンの間であったのに対して、人口1人あたりの食糧生産量は、1979-80年度の174キログラム/年から1991-92年度には92キログラム/年に減少しました。

エチオピア政府が1992年に農業開発主導産業化(ADLI: Agricultural Development-Led Industrialization)政策に着手したことで、農業部門の成長につながる政策環境が生まれました。SG2000エチオピア国別プログラムは、1993年に、当時SAA地域ディレクターであったDr. Marco Quinonesの指揮のもと、国の改良普及制度への「インプラント(埋め込み)」として設立されました。すべての国別プログラムと同様、SG2000エチオピアは、特に零細農家の、農場レベルでの生産性の向上を目指す改良普及活動への新たなアプローチの導入を目指すものでした。

SG2000エチオピア・プログラムの主な目的は、現地で、また外部から入手できる、現地の農業水準環境に適した食糧生産改良技術を、より効率的に移転することでした。その目標は、生産量と生産性を向上するとともに、食糧安全保障の向上と農民の所得拡大を支援することです。

2010年に、SG2000エチオピアは、SAAの新たな組織体制と戦略に合わせて、事業の再構築と再編成を行いました。引き続き農作物生産性の向上が主な活動になっていますが、新たな戦略では、ポストハーベストの機会、特に女性農民や農産物加工グループの農業改良普及指導サービスへのアクセスの向上に、より重点が置かれています。さらに、SG2000エチオピアでは、エチオピアで台頭しつつある民間部門が改良普及指導サービス制度強化の一助となるような形での、官民連携の強化に努めています。

現行プログラムの優先課題・活動・パートナーシップ

時間とともにエチオピアの農業が変化するのにともない、国の改良普及制度は、その内容を拡大して対応してきました。現在、改良普及制度では、農民による協同組合の組織化に向けた取り組みの支援や、ポストハーベストとマーケティングの課題への対応、さまざまなサービス提供事業者や組織(特に民間の組織)とのパートナーシップ形成を行うことが多くなっています。

SAAの組織構成はこのような優先課題の変化を反映し、農作物生産性の向上だけでなく、収穫後処理やマーケティングの有効性の向上も含めた、改良普及活動に対するより総合的なアプローチに主眼を置いています。また、新たな官民連携の模索、推進することに一層注力し、そのようなパートナーシップを通じて改良普及サービスを強化し、農民への支援を拡大することを目指しています。それとともに、SG2000国別プログラムを効率的に実施するため、改良普及指導員や農民のキャパシティビルディング、及びモニタリング・評価も重視しています。

2010年には、農務省、オックスファム・アメリカ、SAAの3者間で、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(BMGF)の資金による「エチオピアにおける改良普及サービス強化」プロジェクトを実施するためのパートナーシップが締結されました。本プロジェクトは、世帯レベルでの食糧安全保障と所得の向上のために、零細農家に対する改良普及サービスの実施を改善することを目的としています。農業省がプロジェクトの実施を監督する一方、オックスファムは農民研修センター(FTC: Farmer Training Center)のインフラを増強し、農民に対し改良農業技術を教えるために各FTCに配置される現場改良普及指導員(DA: Development Agent)の移動やコミュニケーションスキルの支援を行います。SG2000は、多様な革新的農業技術やアプローチをFTCに紹介するとともに、DAの能力を強化し、融資保証基金を通じた利益創出活動を導入することにより、FTCが最終的に自分たちで運営コストをまかなえるようにしていきます。またSAAでは、民間部門の参加を促すため、投入資材販売業者や農民協同組合に対して、改良普及サービス提供に参加し、零細農家の市場アクセスを改善するよう働きかけていきます。このプロジェクトは、エチオピア全州のFTC 215カ所で実施され、DA 645人、専門技術者(SMS: Subject Matter Specialist)180人、および農家約21万5,000軒のキャパシティの強化を行っています。SAAとオックスファムが関わるこのパイロットプロジェクトから得られたベストプラクティスは、政府がその規模を拡大して国内の他の農業開発地域で活用する予定です。

SAAはまた、国際協力機構(JICA)とも2つのプロジェクトでパートナーシップを結んでいます。1つ目は、女性農産物加工グループ支援プロジェクトで、資源に乏しい農村女性を農産物加工グループに組織化し、その生産物に付加価値を付け、市場にて販売することにより所得と食料安全保障の向上を図る目的で、2010年10月に開始されました。2つ目は、ティグライ州におけるSAAの過去のコメ振興の取り組みに基づき、同地域においてコメ及びその他作物の改良技術の振興をバリューチェーン・アプローチで支援するものです。このプロジェクトは2011年7月に開始され、4年間実施されます。

農作物生産性向上(テーマ1)

テーマ1の活動の一環として、SG2000エチオピアでは、農民が自分自身のニーズと環境に応じて新技術を採用できるよう、実践を通じて学ぶことができる研修プラットフォームの設立を、参加型アプローチを活用して行っています。女性農民の間では、主に女性支援実証圃場(WAD: Women Assisted Demonstration)を利用して、学習プロセスに参加する人が増えています。SG2000エチオピアは、技術オプション圃場(TOP: Technology Option Plot)とWADで必要な投入資材を提供するのに加えて、TOPやWADの農民に技術支援や監督を行う改良普及員に対しても支援を行っています。エチオピアでは2010年に、合計348カ所のTOPと522カ所のWADが設置されました。これらの実証圃場では、5種類の重点作物に加えて、5種類の穀物、1種類の豆、1種類の野菜が栽培されました。

SG2000では、こうした実証圃場に加えて、近代的な投入資材の購入や利用に慣れている先進的な農家による栽培試験圃場(PTP: Production Test Plot)の設置も推進しています。ただし、そうした農家でも、投入資材の適切な使用法について技術的なアドバイスが必要な場合があります。2010年には、約8,700カ所のPTPが作られました。こうした農家に対しては、必要に応じて地区農業担当官が技術的アドバイスを行いました。

TOP、WAD、PTPで扱う作物(稲、小麦、テフ、トウモロコシ、インゲンマメ、ソルガム、ジャガイモ)は、その作物の地元での重要性や優先順位に基づいて参加農民が選びます。2010年にSG2000のスタッフは、農民870人(内、60%が女性)、地区農業担当官174人、専門技術者(SMS)64人に対し、圃場の設置と管理に関する実地研修を実施しました。

フィールド・デーを開催し、各技術の特徴と、活動地域の農作物生産性に対する各技術の効果を農民に紹介します。2010年には、「ハイレベル・フィールド・デー」が11回開催され、SMSおよび上級役人179人、農民1,175人が参加しました。さらに農民研修センター(FTC)レベル(コミュニティーレベル)でのフィールド・デーが、45回開催されています。これらのフィールド・デーには、(ゲストを含めて)合計で5,000人以上が参加しました。

2010年に実施された作物生産技術圃場

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ポストハーベストと農産物加工(テーマ2)

テーマ2の活動の一環として、ニーズアセスメントに基づいて、ポストハーベスト改良普及学習プラットフォーム(PHELP: Postharvest Extension and Learning Platform)が各地のケベレのFTCに設立されています。2010年には、3つの地域(アムハラ州、オロミア州、南部諸民族州(SNNP)のエネビ・チファール、デンカカ、セメン・ベレサ)でPHELPが設立されました。またSG2000エチオピアでは、ポストハーベストの改良技術を実演するためのフィールド・デーを開催しています。2010年には、複数作物脱穀機や、穀粒クリーナー、刈取り機などの改良技術の実演が4回実施されました。これらの実演の結果、4軒の農家が複数作物脱穀機を購入し、現在、周辺の農家を対象に脱穀サービスを提供しており、こうしたサービスに対する需要の増加が見込まれています。

SG2000エチオピアでは、生産物に付加価値を付け、市場へのアクセスを可能にすることにより収入創出を図るため、女性の農産物加工グループの組織化を支援しています。2010年には、基本的なビジネススキル、組合経営、コメのパーボイル加工、穀物ポストハーベスト処理、農業ビジネスの経営・事業展開(倉庫運営など)等の分野の研修が、既存及び新たな女性農産物加工グループや、改良普及指導員、農民など合計624の団体・個人を対象に実施されました。

PHELPやFTC、農民の農地での実演と意識向上の結果、農民による脱穀サービスの需要が増加しています。起業家精神のある農民の中には、複数作物脱穀機を購入し、地元の農家に脱穀サービスを行っている人たちもいます。この結果、農家では作業時間や労力が軽減されているうえ、高価格の付く高品質の生産品を市場に送り出しています。

官民連携&市場アクセス(テーマ3)

エチオピアにおける官民連携活動では、テーマ3の目標に沿って、零細農家への農業指導サービスを強化するため、投入資材供給業者や生産後加工業者などの振興の民間農企業の能力形成を目指しています。

エチオピアの種子生産システムにおいては今なお公的部門が主ですが、民間のコミュニティーベースでの種子生産も増加しています。2010年に、SG2000エチオピアでは4つの州で農民や研修指導員を対象にした研修会を22回実施し、180人の研修指導員と200人の農民に、種子増殖に関する能力形成を行いました。この研修会では、ハイブリッド・トウモロコシ、ジャガイモ、小麦に重点が置かれ、また種子生産技術のほかに、種子のマーケティングについても指導が行われました。オロミア州やアムハラ州では、ハイブリッドのトウモロコシ種子に対する需要が旺盛なため、農家には、契約栽培制度による市場進出が奨励されました。こうした契約栽培農家は、協同組合を通じて政府から投入資材のすべてを受け取ることが出来、2,457ヘクタールの農地でハイブリッド・トウモロコシ種子の生産を実施しています。

オロミア州・アムハラ州におけるハイブリッド・トウモロコシ種子生産

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エチオピアでは、民間部門による改良普及サービス事業への参加はまだ遅れていますが、SG2000では、民間組織との協議を開始しており、多くの民間企業が、改良普及活動におけるSAAの民間パートナーになることに合意しました。

これまでアフリカの地域では多くの国で、農民、研究者、改良普及専門家、農業関連企業の関係は比較的希薄なものでした。こうした隔たりを解消するための取り組みとして、SG2000エチオピアとAsela Malt Factoryは、2010年6月に2日間の会議を共同で主催し、「研究・改良普及・農民指導協議会」(Research–Extension–Farmer Advisory Councils)の規則・規制を制定しました。その成果として編纂されたマニュアルが、協議会のメンバーとステークホルダーの全員に配布されました。

人材育成(テーマ4)

エチオピアのハラマヤ大学でのプログラムは、笹川アフリカ農業普及教育基金(SAFE)からの資金提供が徐々に終了に近づく中でも、進展を続けています。大学全体で交通手段の制約があるものの、監督事業プロジェクト(SEP: Supervised Enterprise Project)の支援のため、スタッフは現場視察を続けてきました。SEPの監督にはかなりの時間や人的資源、移動コストがかかるために、同プログラムにとって、監督は最も困難な側面であるにも関わらず、継続して現場での監督が実施されていることは、非常に素晴らしい傾向です。このプログラムは、本プログラムに個人的に強い関心を寄せている学長から、強い支持を受けています。

Aハワサ大学では、2010年7月に28名(内、女性6名)の学生が卒業しました。学生は、農学部のスタッフが多数出席したワークショップにて、SEPレポートと提案書をワークショップで発表しました。

SAFEは、バハル・ダール大学と共同でミドルキャリア・プログラムの設立に着手しており、2012年にプログラム開始の予定です。現在、バハル・ダール大学では、SAFE主導による、全国バリューチェーン改良普及研修ニーズ調査を実施しています。

SAFEプログラムと、エチオピアの大学にてSAFEプログラムに参加した卒業生・学生数に関する詳しい情報については、「テーマ4 」と「SAFE」のウェブサイトをご覧ください。

モニタリング・評価(テーマ5)

テーマ5がエチオピアで新たに開始された中、2010年の活動は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の資金提供による新プロジェクトである「エチオピアの農業改良普及実施システムの強化」の、モニタリング・評価・学習(ME&L: Monitoring, Evaluation & Learning)の支援に重点が置かれました。主な活動は、ME&L実施計画の策定、ベースライン調査とニーズアセスメントを実施するためのツールの準備、エチオピアのテーマ別・国別ログフレームの策定などでした。

またME&Lチームは、国際協力機構(JICA)が資金を拠出するプロジェクト「エチオピア農村地域における農産品加工女性組合の自立促進事業」の支援も行いました。エチオピアのテーマ5担当コーディネーターは、ベースライン調査ツールの設計に参加し、データ収集や、サンプリング、データ管理の研修を受け、スーパーバイザーと集計員からなるチームを派遣してプロジェクトのベースライン調査を実施しました。

SG2000実証圃場(TOP、WAD、PTP)の実施状態を評価し、将来のME&L作業に向けて効率的・効果的なデータ収集方法を調査するため、一部のSG2000プロジェクト実施箇所で迅速調査を実施しました。そして、FLP(農民学習プラットフォーム)について得られた教訓やフィードバックは、農作物生産性向上(テーマ1)チームに伝えられました。

SG2000エチオピアの重要な成果

SG2000エチオピアの活動は、プログラムの初年度に、エチオピア国内で大きな潜在性を持つ2つの農業地帯に、トウモロコシと小麦の、農場での改良普及栽培研修圃場(EMTP: Extension Management Training Plot)を161カ所設置することから始まりました。翌年、参加農民は1,474人に、SG2000活動地域は4カ所に増えました。1995年には、EMTPが3,000カ所をやや上回るまでに拡大しています。これが、エチオピアで単独の作期に設置されたSG2000支援の実証圃場数としては、最大となりました。

3年間にわたるEMTPの結果から、エチオピアでは、現地で開発されて利用可能な研究の成果を利用することで、主食作物の生産量を2~4倍に大幅に増加することが可能であることが実証されました。このように農場における実証で確かな結果が得られたことから、当時のエチオピア暫定政府は、類似モデルの改良普及介入活動を立ち上げることになりました。SG2000のアプローチに基づき、暫定政府は、実証プログラムの規模を大幅に拡大することを目的とした、「全国改良普及介入活動プログラム」(NEIP: National Extension Intervention Program)と称する新たな改良普及プログラムを策定しました。

NEIP実証圃場は、1995/96年作期には3万2,047カ所であったものが、2000/01年作期には360万カ所に増加しました。1993/94から2000/01年までの7年間について、トウモロコシ、小麦、テフの全体的平均収量は、それぞれ1ヘクタールあたり50 キンタル、28 キンタル、16 キンタルであったのに対して、従来の圃場では、同じ期間でそれぞれ16 キンタル、11 キンタル、7 キンタル でした。(1キンタル=約100kg)

政府が農場実証圃場を採用・拡大した後、SG2000では、活動の対象を、農業生産に影響を与えるその他の要素に移すことを決定しました。これには例えば、ポストハーベスト技術(複数作物脱穀機・脱殻機、改良型穀物サイロ、ローラー・ミルの導入)の推進、ブロード・ベッド・メーカー(BBM)の開発と普及、穀物在庫担保融資制度の整備、保全耕うん技術の実証、ストライガ耐性のあるソルガム品種と最近の葉枯れ病耐性のあるジャガイモ品種の促進、高品質タンパク質トウモロコシ(QPM)の導入、肥料割合推奨値の改訂や小麦の列植などの技術の特定に向けた研究制度の支援などがあります。SG2000エチオピアでは、政府による現場改良普及指導員やスーパーバイザー、専門技術者および農民向けの研修の取り組みに対する支援に加えて、笹川アフリカ協会の姉妹組織である、笹川アフリカ農業普及教育基金(SAFE)とも連携して、国外及びアレマヤ大学(現ハラマヤ大学)での高等教育(学士、修士、博士)のための学費、寮費、その他の費用の一部について、資金援助を行っています。

こうした活動すべての結果として、農業用投入資材の利用が大きく増加し、食用作物の生産量、面積あたりの生産性が劇的に増加しました(表を参照)。

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*出所:CSA、2009年5月; **出所:MoARD、2009年

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