SAAの歴史

1970年代後半から1980年代前半にかけて、アフリカでは、長引く干ばつによって深刻化する飢饉への対応に苦慮する国が増えていました。これに対して、笹川良一氏(現在の日本財団の創設者、元会長)は、被害が最も甚大な諸国に食糧支援を行いました。しかし笹川氏は、食糧の提供は一時的で部分的な救済に過ぎないことを理解していました。そこで、ノーベル賞受賞者のノーマン・ボーローグ博士やジミー・カーター元米国大統領に働きかけ、アフリカの食糧問題に対するより持続可能な対策を求めることとしました。笹川氏のビジョンは、ボーローグ博士の高収量小麦品種に関する研究に端を発する、アジアにおける「緑の革命」と同様の「緑の革命」を、アフリカで実現することでした。そして、そのために必要となる長期的な取り組みに対する資金を援助しようと考えていました。

笹川アフリカ協会(SAA)とカーター・センターの「グローバル2000プログラム」は協力関係を結び、サブサハラ・アフリカにおける食糧不足と貧困の緩和、健康状態の改善に向けた共同事業を立ち上げました。当時、多くの専門家の間では、食糧の速やかな増産に必要な研究ベースの技術はすでにできあがっているというのが、共通の見方となっていました。課題は、適切な技術をアフリカの農村の小規模農家に伝え、その使い方を教えることでした。一般に、主な問題は貧弱で非効率的な農業改良普及サービス事業にあるとされていました。そこで、公的な改良普及機関が既存技術や情報を農民に伝える業務を強化できるよう支援することを目指して、「笹川グローバル2000」(SG2000)プログラムが策定されました。これが成功すれば、貧困と飢えの中で生活している大勢の人々に希望が生まれ、資源に乏しい多くの農民が自分たちの潜在能力以上のことを実現できるようになり、プライドと尊厳を持って生活できるようになります。

これまでSG2000パートナーシップでは、アフリカ14カ国において、現場で働く数千人の農業改良普及員や数百万人の農民とともに、トウモロコシ、小麦、コメ、豆類、根菜類、その他重要作物における高収量技術の活用を推進してきました。SAAは、草の根活動を主導することによって零細農家が食糧生産に利用する技術の近代化を図るとともに、零細農家の組織化を進めることにより、融資の取得や投入資材の獲得、収穫物の販売をより有利に行えることができるよう支援しています。グローバル2000の重点は、農業バリューチェーンにおける効率性と参加を促進するとともに、農業部門の経済的収益の拡大につながるような、より効果的な小規模農家指向の政策を立案・実施できるよう、政策決定者に対して行う支援、そして医療関連の介入活動に置かれています。

 

長期的関与

SAAは、1986年に非営利、非課税の非政府組織としてジュネーブ(スイス)で登記されました。管理本部は東京に設置され、活動資金の大部分を日本財団が拠出してきました。長年にわたり、笹川陽平氏(現日本財団会長)の指揮のもと、日本財団は、アフリカの対象国における農業改良普及指導サービス事業の効果向上に向けたSAAの取り組みを、強く支援し続けてきました。このような長期的支援は、開発組織の歴史においてはまれに見るものであり、これによりSAAでは、プログラムを継続するための資金調達に悩まされることなく、各国におけるSG2000プログラムの実施に力を注ぐことができました。一部において、重点対象国で特定の活動を実施するために、他の組織から補助的資金を得ることはあったものの、SAAの資金の大部分は日本財団が拠出してきました。このことは、日本財団の資金提供を受けて、1991年にSAA理事会によって独立組織として設立された「笹川アフリカ農業普及教育基金」(SAFE)についても同様です。

SG2000では、1986年にガーナとスーダンで最初の食用作物改善プログラムを立ち上げ、グローバル2000が管理上の支援を行いました。(グローバル2000では、他の拠出者の資金を活用して、1987年にもザンビアで同様のプロジェクトを立ち上げています。)1991年には、SAAがすべてのSG2000国別プログラムの運営責任を負うようになりました。1986年から2003年末までの間に、SAAは合計14カ国(ガーナ、スーダン、ナイジェリア、ブルキナファソ、ベナン、トーゴ、マリ、ギニア、エチオピア、エリトリア、タンザニア、ウガンダ、マラウイ、モザンビーク)で事業を展開しました。2004年初めに、SAAは組織の人的資源と資金を少数の重点対象国(エチオピア、マリ、ナイジェリア、ウガンダ)に集中することを理事会で決定し、その他の活動国でのSG2000国別プログラムは終えることとなりました。(「カントリープログラム」を参照。)

初期の取り組み

当初、SG2000では、改良された食用作物技術の可能性の紹介と、農業改良普及指導員や農民の実地参加と研修に重点を置いていました。SAAの教室は、当時も現在も零細農家の畑です。長年にわたり、大規模な作物栽培実証圃場(栽培試験圃場(PTP:production test plot)や栽培研修圃場(MTP:management training plot)など、国ごとに異なる名称で呼ばれている)が、農民や現地改良普及員の全面的な参加のもと、農家の畑に設置され、トウモロコシや小麦、ソルガム、コメなどの主食となる作物を栽培するための、生産性の高い技術を学ぶことができるようになりました。

これらの圃場は、推奨技術を十分に実証し、参加農民が自ら提供した土地や労働力から十分な経済的見返りを受けられるよう、大規模なものとなっていました(1,000~5,000平方メートル)。この規模の圃場で1シーズンを通じて耕うん、播種、除草、収穫を行うことで、農民は新技術の導入に伴う労働力や投入コストについて現実的に理解できるようになりました。また農民と農業改良普及員は、畝がまっすぐになるよう耕すことや、改良種子を植え付けること、施肥を正しい量で行うこと、除草や収穫を適切な時期に行うことの重要性も学びました。普及員にとって、このような実地研修は、今後の農民との交流にとっての有益な基盤を築くことになります。

1986年から2000年にかけて、各国の改良普及員と零細農家はSG2000国別プロジェクトのスタッフとの協力のもと、対象国内に大規模作物栽培実証圃場を50万カ所以上、小規模な栽培試験圃場を数100万カ所整備しました。農民自身に加えて、協力国の政府がこの事業の大部分に資金を拠出しました。

SG2000の圃場では、トウモロコシの実証栽培が約60%を占めています。他の作物栽培実証では、ソルガムやコメ、小麦、キビ、キャッサバ、豆類などに重点が置かれています。

こうした実証プログラムに加えて、SG2000国別プログラムでは、農地の生産性を向上し、高水準に維持するうえで有望な技術の革新も支援しています。さまざまな緑肥作物、例えばアジアの驚くべきマメ科植物であるベルベットマメ(ムクナマメ)などの実証栽培を行ってきました。ベルベットマメは、熱帯地方で広大な農地を台無しにしている、強い繁殖力を持つ雑草であるチガヤ(Imperata cilindrica)から農地を取り戻すことができる、数少ない作物の1つです。ベルベットマメは成長過程で窒素を固定するため、零細農家にとっては二重の魅力があります。ベルベットマメを刈り取って土に埋めることで、次に栽培する作物に使う肥料をかなり減らすことができます。緑肥作物に加え、必要に応じて保全耕うん(最小耕うん、または不耕起)も推進してきました。

新たなアプローチと優先課題

近年においては、アフリカ農業の複雑性と課題に対する理解が進むとともに、各国の改良普及機関が活動の範囲を拡大して対応するようになるにつれて、SAAとSAFEは、事業の多様化と規模拡大に向けて協力して取り組む必要があることを認識するようになりました。これにより、新たな優先課題と事業領域が設定されました。現在では両組織とも、協同組合への組織化に向けた農民の取り組みに対する支援や、ポストハーベストや販売の問題への対応、各種サービス事業者や組織(多くの場合、民間部門)との連携などを中心に活動を行っています。

SAAの取り組みを4カ国のみに集約するとした2004年の理事会決議の一環として、インパクトの実現に向けた戦略の見直しが開始されました。この方針転換と再活性化に合わせて、新たな組織形態の選択肢が議題に上りました。2007年から幅広い検討・協議が開始され、2009年末に組織再編が結実しました。

この間、長らくSAAの会長を務めたボーローグ博士が、新戦略策定の基調を定めました。ボーローグ博士は、「SAAは、資源に乏しいアフリカの零細農家が切実に必要としている技術、知識および情報を確実に提供するため、引き続き官民の改良普及サービス事業者/機関との協力に取り組んでいきます。しかしながら、アフリカにおける『緑の革命』という困難な目的を追求していくためには、SAAには達成すべき新たな優先課題と目標があります。」と述べています。

2009年、SAA理事会は新たなマトリクス型組織構成を承認しました。この組織構成は、従来の優れた部分――例えば、新たな機会に速やかに対応し、革新を奨励する能力――を継承しつつ、それと同時に効果を阻害するような要因――例えば、過度に独立したカントリープログラムや、プログラム間の連携を奨励するインセンティブが不明確であること――を低減するように設計されています。(「組織概要」を参照。)

SAAのマトリクス・マネジメント構造は、SAAの優先課題の変化、そして、アフリカの零細農家を対象とした改良普及指導サービスの改善に向けた取り組みを継続するというSAAのコミットメントを、反映したものとなっています。( 「SAAの活動」を参照。)

top of page