睦好 新事務局長にインタビュー

2024年2月8日

2024年1月に着任した睦好新事務局長にインタビュー。
プライベートでは、2人の男の子の母であり、休日には、友人と野外ライブや音楽フェスに行ったり、最近は健康のためにランニングも始めたというアクティブな睦好事務局長。
今回のインタビューでは、睦好事務局長が国際協力を志した動機、JICAでの経験、そしてSAAにジョインした理由などを語っていただきました。

国際協力への情熱の原点

森林から国際協力の道へ
「なぜこの道に進んだか」と問われると、高校生だった1985年、国際森林年(International Year of Forests)を特集した当時の新聞で、伐採や焼き畑などを要因とした熱帯雨林消失の記事を目にしたことがきっかけです。途上国の森林保全や環境問題に携わりたいという気持ちから大学では林学を専攻。研究室の指導教授の勧めでJICAの森林部門(海外林業協力)のことを知り、卒業後はJICAに進みました。協力隊への応募も考えていましたが、当時、森林分野は男性の募集しかありませんでした。

フィリピンで貧困を知る
最初の赴任地は、フィリピンのマニラでした。それまで出張ベースで訪れていた途上国ですが、初めて暮らして感じたのは、農村地域の絶対的貧困。その日暮らしの人々に「森林を保全しましょう」とは言えない現実を目の当たりにし、貧困を削減するための多面的なコミュニティ開発と住民のエンパワーメントの必要性を痛感しました。

人々の暮らしをより深く知りたいという思いから、休日には、フィリピン人の友人と水も電気もない山中の農村へ行ったり、スモーキーマウンテンのスラムで生活する人々と寝泊りを共にしたりもしました。「どうやって暮らしているのだろう」というシンプルな好奇心から、現地の人々と寝食を共にした経験は、フィリピンの人たちの優しさと明るさを知るとともに、開発とは何かを考えさせられ、私の原点になっていると思います。

JICAの仕事を通じて・・・

プロジェクト終了後も、地域に残る仕組み作り
JICAでは、長年技術協力のマネジメントに携わってきました。JICAの農林業分野の技術協力プロジェクトは、カウンターパートである相手国政府とともに技術開発や組織・制度づくり、人材育成を行います。開発された技術や手法が普及され、農家に採用されて、農業生産が増加したり生活の改善につながるまでには、多くのステップと時間と関係者の協力が必要です。プロジェクトの終了後にも成果が持続的に発揮されるような事業となるよう社会的配慮や関係者の合意形成にはとくに努力してきたつもりです。SAAも推進するSHEPは、現場の普及員と農家のエンパワメントを通じて農業収入の増加を実現できる非常に素晴らしいアプローチだと思います。

また、私はIFNA(Initiative for Food and Nutrition Security in Africa)の推進にも関わり、国際機関及びドナー関係者の合意をとりつけるために奔走した経験があります。JICAの対アフリカ農業協力で力をいれているCARD(アフリカ稲作振興)、SHEP、IFNAのような国際イニシアチブは、共通の目標とアプローチに賛同する国々が一緒に取り組む仕組みであり、開発された技術やアプローチの成功例を横展開する上で非常に有効です。ある地域だけの成功に終わらず、投入の成果をスケールアップさせるという視点は、開発の効果発現という意味で非常に大事です。

インパクトを発信する
今のSAAにも深く関係するテーマだと思いますが、JICAの業績をどう表現するかという業績評価の部署にいたこともあります。JICAの仕事の価値や成果を外務省が設置する外部評価委員に伝えるため、指標を立てた定量的分析とともに定性的な表現や写真を用いたビジュアルで表す重要性も学びました。

JICA筑波センター所長時代の取り組み「農業共創ハブ」
2022年から所長を務めたJICA筑波センターは、農業研修用の水田、畑、ハウス、実験施設を持つJICA唯一のセンターで、毎年約600名の途上国政府職員等を対象に農業、防災、気候変動等の研修を実施しています。とくにアフリカやアジアの行政官や普及員を対象に稲作や畑作の栽培技術を1年かけて学ぶ研修が特徴です。筑波センターでは「農業共創ハブ」として、アフリカ進出を考える日本企業や、地元コミュニティ、国際協力に関心のある学生が、JICA研修員と情報交換したり研修に参加して農業協力をともに考えるプラットフォーム活動を推進しました。途上国からの研修員はもちろん、職員を含め、農業協力に関わる全ての人が新たな価値を見出し、その価値を発信する存在になっていくことを大事にしてきました。

経験を生かしてSAAへ

事業を成果に
SAAにジョインしたのは、国際協力の現場に近いところで働きたいという思いが第一にありました。SAAは、アフリカで長年、農家に農業技術を普及し生活を向上させる取り組みを行ってきました。各国に技術指導ができるスタッフがいるという強みを生かし、現場のニーズを反映した事業内容になっていると感じています。各国の経済社会条件や自然条件が変化している中、SAAの事業が一層高い成果を出せるように自分が何をすべきか考えていきたいと思います。

SAAは、歴史があり、素晴らしい人材もいる組織です。SAAの伝統である「農家と共に歩む」という姿勢を軸に、SAAにしかできない事業を考えていきたい。そして、アフリカの農業開発においてSAAの果たしている役割を国内外で知ってもらえるよう発信をしていきたいです。

仕事と子育て~周りの協力+完璧を求めない~
睦好事務局長は、お仕事をしながら中学生と高校生の二人のお子さんの育児を経験されています。まさに働く女性のパイオニア!仕事と育児、どのように両立されてきたのでしょうか。

もともと、仕事は続けるものだという前提で結婚や出産を経験しましたので、仕事を辞めるという選択肢はありませんでした。しかし、子育てと仕事の両立は、私にとって大きな挑戦で、「必死」という言葉に尽きます。両親と夫のサポートを得て、子どもが1才になりたての頃からアフリカ出張なども行くことができましたが、周りの協力なしでは、できないことですね。

今、子育てをしながら働くお母さんは、とにかく完璧を求めないことです。最終的には何とかなる!と楽観的な気持ちで、でも子供がピンチの時は、子供に集中してあげる。自分に対しても子供に対しても完璧を求めず寛容であることが両立の秘訣です。

お互い敬意と感謝をもって働ける組織に
最後に、SAAは、東京本部は15名程度ですが、アフリカにある現地事務所では計170名のスタッフが在籍しています。表面的なコミュニケーションより一歩踏み込んで、お互いの仕事をより深く理解し、敬意と感謝をもって仕事ができるより良い組織づくりにも貢献できればと思います。

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