農業はナイジェリア経済の基盤を支える重要な産業として同国GDPの約20%を占めています。2億人を超える国民に食料を供給するとともに雇用を創出し、外貨獲得や人々の収入源として重要な役割を担っています。一方で、ナイジェリアの農業は、生産性の低迷、土壌の劣化、脆弱な農業普及サービス、非効率的な市場運営、インフラの未整備といった課題に直面しています。さらに、新型コロナウイルス感染症の影響や治安の悪化、気候変動、ロシアによるウクライナ侵攻などの外的要因が進展を妨げ、肥料をはじめとする農業資材の価格高騰を招いています。
1992年3月、笹川アフリカ協会(SAA:現ササカワ・アフリカ財団)は、日本財団の支援を受け、笹川グローバル2000(通称SG2000)という名称のプログラムをナイジェリアで始動させました。そして、当時のナイジェリア連邦農業天然資源省(現在の農業食料安全保障省)との合意のもと、農業普及員や小規模農家を対象に、州レベルの農業開発プロジェクト等と連携しながら作物の生産性向上と流通改善を目指してきました。
2010年、SAAは新たにバリューチェーン・アプローチを戦略の中心に置きました。これまで取り組んできた農作物の生産性向上も引き続き重要視しつつ、収穫後処理や農産物加工、市場アクセスなどにも焦点を当て、より包括的なアプローチへと転換したのです。また、農村で不可欠な役割を担う女性や若者にスポットライトを当てたよりインクルーシブな農業普及システムの構築を掲げ、更には農家組織の強化、市場参入の拡大、官民連携の強化にも重点を置きました。
2021年、長きに渡って親しまれてきた「SG2000ナイジェリア」というプログラム名は、5カ年戦略(2021~2025)の策定に合わせて、正式にSAAナイジェリアに改められ、革新的かつ包摂的な農業発展事業へと変革がなされました。これまでの実績を基盤に、新たな課題に対応し、同国の持続可能で強靭な食料システムの構築を目指しています。
これまでの主な成果
- 主要作物の生産性向上
- トウモロコシ: 1.36トン/ha → 5.21トン/ha
- 小麦: 1.73トン/ha → 4.5トン/ha
- ミレット: 1.2トン/ha → 3.5トン/ha
- キャッサバ: 9トン/ha → 30トン/ha
- 改良品種の普及
F1品種(雑種第一代)、極早生品種、高タンパク質品種のトウモロコシなど、新しい品種の広範な導入を支援。
- 農家のエンパワメント
500万人以上の小規模農家の生活向上と生計の安定化に貢献。
- 農業普及員の能力強化
6,000人以上の公的農業普及員に再教育の機会を提供し、知識や技術の向上を支援。
- 教育機関との連携強化
国内9つの大学と協力し、農業普及員向けの教育・再教育プログラムを実施。
- ¥ステークホルダー間の連携促進
研究機関、農業普及機関、農家、民間セクターをつなぎ、持続可能で効率的な農業技術を普及。