ウガンダでは農業が人々の生活と経済の中心になっており、国民の大半が自給的農業と商業的農業の両方に従事しています。年間の平均気温が20〜30℃という安定した気候、肥沃な土壌、年2回の雨季といった好条件により多様な農作物が栽培されており、メイズ(トウモロコシ)、キャッサバ、プランテン(料理用バナナ)、サツマイモといった主食作物だけでなく、コーヒーや紅茶といった換金作物などの栽培も盛んです。その一方で、道路や灌漑設備などのインフラ、良質な種子や肥料といった農業投入材や新たな農業技術へのアクセス、気候変動リスクに対する脆弱性などの難しい課題も存在します。
このような課題に対し、ウガンダ政府はパートナー団体と協力して持続可能な農業技術の推進、農家に対する少額融資スキームの促進、農家を対象とした研修や資源の提供などを目的としたイニシアチブを始動しました。近年は、農産物の国内・外の市場における競争力を高めるため、付加価値の創出とアグリビジネスが重視され、農業は依然として農村開発と貧困削減の重要な原動力となっています。
笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)のウガンダ事業は、ウガンダ農業畜産水産省との覚書に基づき1996年に設立されました。Sasakawa Global 2000(通称SG2000)として知られるこのプログラムは、設立当初から日本財団の支援を受け、小規模農家の食料安全保障と所得の向上を目的として、改良農業技術の普及を推進してきました。SG2000ウガンダは、地域で意識の高い農家をコミュニティ・ファシリテーター(Community Based Facilitator)として育成し、小規模農家に対する普及・アドバイザリーサービスの末端の担い手として活用することで、政府の農業普及システムを強化したのです。
2010年には組織戦略の刷新に伴い、SG2000ウガンダは農業バリューチェーンに焦点を当てることとなり、大きな変革を遂げました。農作物の生産性向上は引き続き優先課題となりましたが、同戦略では収穫後の管理や農産加工、市場連携の確立といった側面にも重点を置き、より総合的なアプローチが採用されました。農村部の若者の重要な役割が注目されたほか、特に女性に対するより包括的な助言サービス、農家組織の強化、市場アクセスの拡大、官民パートナーシップの支援も強調されることとなりました。
2021年、SG2000ウガンダはその名称を「SAAウガンダ」と改め、新たな5カ年戦略(2021~2025)を始動しました。この戦略はウガンダにおいて、より強靭で持続可能な食糧システムを支援することを目的とし、過去の実績を踏まえつつ新たな成果を追求しています。
こうした活動により、SAAウガンダは、2040年までに中所得者層の地位を向上するという政府の目標達成努力に貢献したとしてきたことが評価され、これまでにビジョナリー賞を複数回受賞するなど、農業政策に合致した活動の功績が評価されています。
これまでの主な成果
- 農業近代化計画(Plan for Modernization of Agriculture)と、それに続く全国農業指導サービス(National Agricultural Advisory Services)の形成において中心的な役割を担う。
- 農業普及サービスのためのアフリカフォーラム(AFAAS)、およびそのウガンダ支部であるウガンダ農業指導サービスフォーラム(Uganda Forum for Agricultural Advisory Services)の設立を主導。
- 農村部における農業資材備蓄ネットワーク(後のウガンダ全国農業資材販売業者協会(Uganda National Agro-Dealers Association))の設立。
- 西アフリカ稲作開発協会 (WARDA)、国際協力機構(JICA)、農研機構(NARO)、Nalweyo Seed Company(NASECO)と連携し、ウガンダにおける陸稲種のネリカ革命を先導し、輸入米の2,000万米ドル削減と45万人以上の農家の所得向上を実現。
- 国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT)、NASECO、NARO、マケレレ大学との連携により、高たんぱくメイズ(QPM)の導入を促進し、ウガンダの人々と家畜の栄養改善に貢献。
- コミュニティ種子増殖システムの設立を主導。
- ワンストップ・センター(OSCA)と呼ばれるバリューチェーン・センターを13軒設立・運営し、1万人以上の会員(うち57%は女性)に恩恵をもたらす。
- マケレレ大学と共同で、改良普及員のための実践的カリキュラムを開発。
- JICA海外協力隊との協力スキームや、国内外の学生を対象としたインターンシップ・プログラムを実施。
- ドイツのK+S GmbH社とのパートナーシップにより、移動型農業研修センター&土壌テスト・ラボを開設。
- 民間セクターと提携し、E-エクステンションの先駆者となった。