SAAナイジェリア事務所が年次ステークホルダー会合を開催

ニュース
2024年2月26日
年次ステークホルダー会合(於ナイジェリア ザリア)
年次ステークホルダー会合(於ナイジェリア ザリア)

2024年2月20日、SAAナイジェリア事務所は、ナイジェリアのザリアにある国立農業研究所(NAERLS)にて、農業の脱炭素化をテーマとする年次ステークホルダー会合を開催しました。本会合では、農業における脱炭素化の推進は、作物の生産性の向上、気候変動の緩和、食料安全保障の強化、農家の生計向上など様々な恩恵が伴うという見解が示されました。

SAAの北中真人理事長は、オンラインで参加し、気候変動に対応した農法の推進を通じて、アフリカで「作物栽培システムの脱炭素化(Decarbonization Cropping Systems)」を前進させると述べました。

「作物栽培システムの脱炭素化」とは、農作業に伴う炭素排出量を低減すると同時に、土壌の炭素貯留機能を強化するプロセスです。

北中理事長は、ボカシ肥やバイオ炭の製造・活用といった気候変動に配慮した取り組みが、作物の生産性を向上させ、土壌の健全性を改善するカギとなると説明し、SAAが日本外務省から助成を受けてナサラワ州で推進するプロジェクト*について触れました。

*「ナイジェリア国コメ生産加工協同組合の活性化を通じた脱炭素化型コメ生産・加工推進プロジェクト」

北中理事長は、同プロジェクトの目的は、稲作農家のレジリエンス強化と気候変動の影響の低減であるとし、土壌の健全性、農業生産性の向上と脱炭素化への取り組みは連動していると述べました。また、環境負荷の低減と収量・土壌の健全性の向上は、環境再生型農業を普及するSAAの戦略の根幹であるとし、土壌の健全性と作物収量に焦点を当てることで、持続可能な脱炭素化の基盤を確立し、小規模農家の生計とアフリカ農業全体の持続可能性に貢献するとの意義を述べました。

また、パートナーシップの重要性に触れ、「世界的な課題を前に、持続可能な食料安全保障を達成するには、様々な関係者との連携が不可欠である」と強調しました。

ゴッドウィン・アサーSAAナイジェリア事務所長は、生産性の低さ、貧困、気候変動など、ナイジェリアの農家が直面する課題に触れ、改良種子の普及、適切な肥料の使用、農家とリソースのリンケージ強化といった支援の必要性を述べました。

SAAのゴッドウィン・アサー ナイジェリア事務局長(右)、KNARDAのファルーク・クラワ博士、Ahmadu Bello Universityザリア校農学部長のSB アブドゥ教授

本会合では、気候変動に対応した農業システム「気候スマート農業」が重要なテーマとして議論されました。具体的には、「COP28の目標と目的:農業への影響」、「小規模農家向けの炭素クレジットの可能性」、「環境再生型農業:アフリカにおける土壌健全性の向上」などのトピックが技術プレゼンテーションで発表され、様々な知見や成功事例が共有されました。SAAのリード・スペシャリスト(環境再生型農業)であるステラ・カビリ博士もスピーカーとして登壇しました。

また、参加した関係者も交えて、キャパシティ・ビルディング、農業普及サービス、改良技術の導入、市場アクセス、気候スマート農業などをテーマに意見交換を行いました。ソーラー灌漑システムへのアクセスや施設/設備などのインフラ改善において、関係者間の連携を促進し、共同でプロジェクトを推進する重要性が確認されました。

同会合の成果は、以下の通り、ナイジェリア農家のエンパワメントと持続可能な農業を推進するSAAのコミットメントを反映した内容となりました。

- 環境再生型農業、栄養に配慮した農業、市場志向型農業を戦略柱とした2024年のSAAの活動計画を満場一致で承認。
- 気候変動の影響を緩和するため、作物栽培システムの脱炭素化の重要性を認識。
- 気候変動に対応した品種、化学肥料の使用削減、農家の資材/市場リンケージの強化。
- カノ州農牧畜開発プロジェクト(KSADP)等の成功事例の共有と他地域への展開。
- 持続可能な種子供給システムに、種苗会社が参画。
- 様々なチャネルを通じて知識と経験の共有を促進。
- 食料安全保障と国家安全保障の関連性を認識し、農業セクターが果たす役割を認識。
- 持続可能性を確保するため、農家の所得創出の機会を促進。
- 手ごろな価格帯の農機具や農業施設へのアクセス提供のためのパートナーシップを模索。
- SAAが実施するプロジェクトにおいて、機械使用者の安全性を確保。
- パートナーと連携し、気候変動対応型の技術や緩和策を推進するプロジェクトを実施。
- 気象機関と連携し、農家へ気候/気象情報を普及。
- 農家の利益とプロジェクト資金をサポートするカーボン・クレジットの可能性を調査。
- 政府と連携した戦略的なアドボカシーにより、カーボン・クレジットへの民間セクターの支援を導入。
- 大学と連携し、農家の短期能力開発研修を主流化。

SAAナイジェリア事務所は、今後も小規模農家と共に、気候変動の課題に取り組み、同国の持続可能な農業開発に貢献していきます。

Online news media: Premium Times(現地メディア掲載)
The Sun Nigeria(現地メディア掲載)

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