【JICA海外協力隊員 任期終了時活動報告】「同じ鍬を振り、同じ飯を食う」―ウガンダの畑で育った絆
~ SAAウガンダ事務所では、JICA海外協力隊(コミュニティ開発)を受け入れています。今回、ブギリ県ナンコマで2023年10月から活動していた長谷川大起さんが2年間の任期を終え、その歩みを振り返る活動報告を寄せてくださいました。~
2年間の任期を終え日本に帰国
私は2年間のウガンダで協力隊活動を経て、昨年10月に日本に帰国しました。日本に帰国してから3ヶ月が経ち、新生活も始まりました。久しぶりの日本社会ということもあり慌ただしい毎日ですが、そんな中でもふと思い出すのはウガンダで共に過ごした農家の皆さんや村の愛くるしい子どもたちです。実はたまに帰りたいなって思ったりもします(笑)。そんな私も派遣前は初のアフリカということもあり、緊張していたのを覚えています。不安を抱えながらスタートした協力隊生活でしたが、ウガンダ人の優しさ、楽しさ、面白さのおかげで無事に環境に馴染むことができ、抱えていた不安も忘れるくらい充実した時間を過ごすことができたと感じています。そんな私の2年間を振り返ります。
長谷川さんの活動拠点となった農協(ワンストップセンター)のマネージャーと。最初は戸惑った任地での生活
私の任地は、首都カンパラから150kmほど東に位置する、ブギリ県ナンコマ村(sub-county)でした。首都のカンパラから東部に向かう道路は渋滞することが多く、移動には5~6時間かかる場所でした。協力隊員は、公共交通のマタツ(ハイエースの乗合バス)で移動するのですが、狭い車内での長時間の移動には慣れるまでは苦労しました。また、赴任当初は、現地の人にとって初めての日本人ということもあり、警戒されたり、揶揄われたり、怪しい人が土地を漁りに来たのか?などと勘違いされることも(笑)。他にも、事前に分かっていたとはいえ、頻発する停電や断水にも悩まされ、日本との生活環境の違いに精神的に辛く感じる時もありました。それでも、なるべく現地語(ルソガ語)を話すことを心がけ、拙いながらも現地語で挨拶しました。現地の方々も言葉を熱心に教えてくれたり、ご飯をご馳走してくれたりなど、その優しく温かい人柄に触れる中で、徐々に生活に馴染み、日々を楽しめるようになりました。今振り返れば、現地語を介した触れ合いが現地の方々との心の距離を一気に縮めてくれたのだと感じています。
活動の始まり
私は、BAIDA(Bugiri Agribusiness Institution Development Association)というナンコマ村の農協を拠点に活動していました。ここはSAAが支援してきた農協でもあります。事前に農協から提出してもらった要望調査票を基に、農協のマネージャーであるモゼス・マッカッカさんと打ち合わせしながら、自身の活動内容を決めました。私は農学系の学部を専攻していましたが、現場経験はほとんどなく手探りの中でスタートしました。まず農協に紹介してもらった農家と一緒に、稲作のデモ圃場を作ることにしました。とはいっても、外国人がいきなり行って言うことを聞き入れてくれるはずもなく、活動も進みませんでした。やはり、現場を知ることや関係を築くことが大事だと思い、実地調査やインタービュー、また農家の方と一緒に農作業しながら現地の情報を集めていきました。鍬一本で田んぼや畑を耕すのは想像以上に疲れる作業で、黙々と作業するウガンダ人にはいつも頭が下がりました。一緒に作業する、休憩の時は同じご飯を食べる、こんな作業の積み重ねによって少しずつ農家との信頼関係を築くことができたように感じます。半年後には三つの村で農家さんと一緒にデモ圃場の作り、運営をスタートしました。

印象に残っている農家からの言葉
デモ圃場の管理、運営は自分も一緒に田んぼを耕したり、田植えをしたり、草を抜いたりするなど農家さんと同じ目線に立って行うことを意識していました。生育は順調でしたが、大雨によって畦が壊れて稲が倒れてしまったり、ネズミの被害が発生したりと、予想外のことが多々起きて最終的に満足のいく結果を得ることができませんでした。自分自身も意気消沈し、一緒に活動した農家さんにも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。そんな中、ある農家さんから「天気にはだれも逆らえないから仕方ない。それよりも外国人のあなたが自分たちと一緒に鍬を振って農作業に取り組んでくれたことが嬉しかった。今回は上手くいかなかったけど、勉強になったこともあるし、また次一緒に頑張ろう。」と声をかけてくれました。この言葉は自分の協力隊生活の中でも強く印象に残っていて、文化や言葉の壁を超えて一人の仲間としてお互いを理解し合うことができたように感じました。
デモ圃場の運営を通じて2年間で3回お米を収穫することができ、シーズンを追うごとに収量も向上し、収穫されたお米見て嬉しそうに話す農家さんと見た時は「頑張って良かったな」と、嬉しい気持ちになりました。

活動の広がり
コメ栽培の普及活動をきっかけに、村の農業の実態についてよりよく知り、また農家に知り合いの農家を紹介してもらうことも増えたため、稲作の活動と並行して新たな活動を模索するようになりました。そこで、農協のマネージャーと話し合って、農協前のスペースで野菜を育てること、動画トレーニングを農家向けに行うことにしました。農協前のスペースを選んだのは、農家がトウモロコシの製粉やワークショップ参加などで定期的に農協に訪れるので、実際の様子を自分の目で見て学んでもらうのに、ぴったりの場所だと思ったからです。そこでは、バイオ炭を利用した野菜の栽培に取り組みました。バイオ炭が炭にならずに燃えて灰になってしまったり、ヤギに野菜を食べられてしまったりと、うまくいかなかったこともありましたが、なんとか播種から収穫まで行うことができ、この野菜圃場は、デモ圃場としての役割を示すことができました。中でも人参は、ウガンダで人気な野菜ですが、任地周辺では栽培が行われていなかったため、農家の関心を引き、最終的に5人の農家が自身の圃場で人参栽培を始めました。また、自発的に他の農家へ栽培を教えてくれる農家も現れたため、農家同士の知識の普及を見ることができました。このような普及の流れは農家の自発性に基づく理想的なものであり、知識の普及だけでなく、農家同士の結びつき、繋がりも生むことができることを学びました。動画トレーニングは、知り合った他のNGOの方から農業に関わる動画にアクセスできる情報を教えていただき、それを活用しました。英語だけでなく、現地語に翻訳されたものにもアクセスできるので、現地語での会話がメインの任地の農家にはぴったりな教材でした。自分は動画を通じて知識を共有する立場でしたが、情報と農家を繋いで彼らの理解、自発的な行動を促すことができたように感じています。

働き者の村の女性たちのために
私の任地では、教育は女性よりも男性が優先されるなど、ジェンダー格差を目にする機会が多くありました。そのような状況でも、いつも笑顔で、子どものお世話、家事、農作業に一生懸命に取り組む女性たちのために、何かできることはないかと考え、農業以外の活動として彼女らとともに石鹸製作や屋台でのスナック販売などを始めました。原材料や作り方の知識はもちろんですが、利益の計算や帳簿の付け方など日々の生活にも直結する基本的なビジネススキルを身につけてもらうことも活動の目的の一つにしました。村の女性たちは、最初は作り方ばかりに意識が向きがちでしたが、少しずつ、計算や帳簿の付け方の理解も深まっていくのを活動が進むにつれて感じることができ、口頭のみの説明よりも、実践的なトレーニングの方が、理解が深まることを強く実感しました。彼女たちは私が顔を出すといつも温かく、テンション高く迎えてくれて、元気をたくさん与えてくれました。家の庭先に座って家族のことから村のことまでたくさん話したこともいい思い出です。

アフリカが身近になった2年間
ウガンダでは、JICA、SAAの職員、任地のカウンターパート、農家の皆さんなど多くの人に恵まれ、充実した2年間を過ごすことができました。SAAウガンダ事務所の方には、日々の活動についてのアドバイスやヒントをいただき、SAA日本事務所の方は活動のフォローや資金的な援助もしていただきました。おかげで自身の活動がより充実したものになり、大変感謝しております。
ウガンダに来る前は、アフリカは遠い遠い地域でしたが、協力隊活動を通じて身近に感じられるようになり、自身の価値観にも大きく変化しました。ウガンダでは、日本では考えられないようなことが日々起きましたが、そんな環境も今では魅力の一つだと感じています。
帰国後は民間会社で働き始めましたが、アフリカに関わる仕事をしており、今後もウガンダやアフリカに関わり続けて行きたいと思っています。そして近いうちにウガンダでお世話になった方たちにも会いに行きたいです。
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