【中編】RICCI EVERYDAY代表 仲本 千津氏 × ササカワ・アフリカ財団

2022年7月3日
ウガンダで活動する仲本氏(SAAの職員時代)
ウガンダで活動する仲本氏(SAAの職員時代)

SAAの駐在員としてウガンダへ

SAA仲本さんは、大手銀行を退職し、2011年から2016年までSAAで仕事をされました。当時の様子を教えてください。

仲本:SAAの東京事務所は今でこそ10名強のスタッフがいるとのとこですが、私が入職した当時は、私を含め日本のスタッフは3人でしたので、管理業務を全方位的にやっていた感じです。毎月のようにアフリカ出張に行っていましたが、2014年からはウガンダ事務所に駐在することとなりました。現地では、プロジェクトコーディネーターとして、プロジェクト予算や活動の管理、報告書作成などを行いました。

SAA当時のSAAウガンダ事務所はどんな雰囲気でしたか。

仲本: 全体的にオープンで意見交換が活発でした。多くのウガンダの大企業では、マネジメント層はインド系ウガンダ人が多く、下の人はイエスマンで何も言えない。でもSAA現地事務所は、ウガンダ人だけで構成されていたので、互いに言いたいことが言い合える環境でした。

 SAAの東京事務所だけではなく、ウガンダ事務所で働く機会があってすごく良かったですね。現地スタッフが30人程いましたが、ウガンダ人の気質やコミュニケーション手段を学んだり、「あ、こうやって友達になれるんだ」っていう感覚が持てたり。

SAAウガンダ事務所で印象に残っていることはありますか。

仲本:SAAウガンダのスタッフは、すごくアクティブ!土日も構わず地方出張に行って、「今日も農家にトレーニング(研修)だ!」みたいな。SAAのロゴの入ったポロシャツを着て、帽子を被って、張り切ってトレーニングをしているところを見ると、みんなSAAが大好きなんだな、ここで働くことが誇りなんだなと感じましたね。

 農家の人たちは、一生懸命研修から学ぼうとする人がいる一方で、そうではない人もいて、完全に分かれていました。一生懸命やっている人たちは、SAAの技術を実践したおかげで、収入が上がった、家を建てられたなど自信満々に話してくれました。一方で、トレーニング中に寝てしまったり、昼食だけ食べに来る人もいて、農家さんに研修の意義を理解してもらうのは一筋縄ではいかないと思いました。

現場を見て感じたジレンマ~Give & Takeの関係へ~

SAASAAを退職し、ソーシャルビジネスの道に進まれたきっかけは何だったのでしょうか。

仲本:現地で国際機関など大きな資金力を持つ援助団体がお金のばらまきとも取れるやり方を行っているのを見て違和感を覚えました。現地の人は、援助団体が開催するトレーニングを受けに来るのですが、目的が、トレーニングの内容ではなく、日当になってしまっているんです。当時、SAAは参加者に昼食や交通費は支給していましたが、日当は出していませんでした。すると、「日当出ないの?」と聞いたりする人もいて、本末転倒だなあと。

 トレーニングで技術を身に着け、自身で収入を得るという方がずっと有益だと思うのですが、開発援助プロジェクトは、2・3年のサイクルでドナーが新しく入れ替わるので、彼らとしたら、トレーニングに参加しさえすれば、ずっと日当で暮らせるという構造になってしまうのです。ドナーが「与える」援助依存という構造です。

 私は、そういう形ではなく、現地の人たちとできるだけ対等に仕事をしたいと思いました。「私はお金をあげるだけじゃない、あなた達からも、もらわないといけない」、つまり、Give & Takeを成り立たせる必要があると思いました。

ウガンダで活動する仲本氏(SAAの職員時代)

アフリカ女性のポテンシャル

SAA仲本さんが、ウガンダの女性と仕事をしようと思ったきっかけは何でしょうか。

仲本:当時、SAAがエチオピアで実施していた女性の農産加工組合をサポートするプロジェクトなどを視察し、「女性の力ってすごいなあ」と感じました。アフリカの農村を見ると、男性はギャンブルしていたり、家の前でただ座っていたりして、余り働いてない。一方、女性は、表には出てきませんが、裏では、畑仕事に育児に家事と勤勉です。彼女たちがいるからこそ、コミュニティーが成り立っているんだなと感じました。だからこそ私も女性達と一緒にやりたいと思いましたね。

SAA女性グループとの関わりで何か印象に残っていることはありますか。

仲本:彼女たちは、貧しい自分たちが作っているものに価値があるという発想をあまり持っていません。でも、それがお金に変わると分かった瞬間、マインドセットが変わるんですよね。所得を得ることで、彼女たちの生活が変わり、それとともに自信が生まれ、マインドセットが変わっていくところに立ち会えるのは、なかなか味わえない経験です。

工房の女性たちのやり方を尊重、対等に付き合う

SAASAAのスタッフは、大学卒のスタッフが中心で現地でいえば「エリート」ともいえますが、RICCI EVERYDAYのスタッフは、経済的に困窮していたシングルマザーの方も多くいたりします。違うバックグラウンドの人と一緒にやっていく上で工夫していることはありますか?

仲本:「自分は何も知らない人間なんだ」っていうことを、意識しながらコミュニケーションしています。相手がどんな生活を送っているかは、想像がつかないですから。自分が日本人的な価値観で話したりすると、彼らにとっては高圧的に感じたり、何も分かってないなっていう気持ちを抱かせてしまったりすると思うので、「自分は何者でもなく、ただあなたと一緒に働いている人だ」という姿勢であることを意識しています。そうしないと、やっぱり言葉尻や態度に「上から目線」が出てしまう気がするんですよね。

 あと、自分はある意味で別世界の人間だからこそ、彼女たちの生活ぶりを敢えて聞くようにしています。知ったかぶりはしない。彼女達は、外国人経営の大きな縫製工場の一工員として働いた経験などを持っています。そうすると、人間的な扱いを受けていなかったりするそうです。なので、私が何気なく「Thank you! Thank you! いいね!」というと、「自分のやった事に対してお礼なんて言われたことない!」とびっくりする、という感じです。やはり人間的な付き合いを意識したいですね。

SAA現地のスタッフ同士は、和気あいあいとやっている感じですか?

仲本:今20人弱のスタッフがいますので、色々ありますね(笑) ただ、私は、そういういざこざには、基本的には関わりません。本当にどうしようもないというタイミングで、一人ずつ話を聞いたりしますが、基本的には、彼女達のやり方で解決してもらう。外国人が下手に入っていくとおかしくなっちゃう気がするんですよね。

SAA人事評価はどうしていますか?個人の能力に差が出てくると思いますが。

仲本:色々と考えたのですが、結果的に何もしてないですね(笑) 業務がかなり細分化されているのですが、例えば、作業ごとに点数をつけたりすると、点数の低い作業は誰もやりたくないとか、スピードを重視してクオリティーが落ちたり、人間関係に問題が出てきたり。何度も考えた結果、何もやっていません(笑)

 チームワークなので、業績が良ければ一律に給与を上げています。役職毎に差はつけていますが、スタートは一緒でそこから上げていきますよという感じです。

後編へ続く・・・

【後編】RICCI EVERYDAY代表 仲本 千津氏 × ササカワ・アフリカ財団

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