【前編】RICCI EVERYDAY代表 仲本 千津氏 × ササカワ・アフリカ財団
カラフルなアフリカンプリントのバッグや小物を扱うRICCI EVERYDAYの代表を務める仲本千津さん。ウガンダの工房で女性たちが縫製した商品を日本のマーケットで販売、ウガンダ女性の自立を支援するというソーシャルビジネスは、大きな注目を集めている。そんな仲本さんがウガンダでビジネスを始めることとなったのは、SAAの職員として現地赴任をしたことがきっかけという。仲本さんのSAAでの経験やビジネスマインド、今後の展望を伺った。
【仲本 千津氏】
静岡県静岡市出身。一橋大学大学院法学研究科修士課程修了、平和構築や、アフリカの紛争問題を研究。三菱UFJ銀行の法人営業を務めた後、2011年、ササカワ・アフリカ財団に入職。2014年からウガンダ事務所に駐在し農業支援を行う。2015年ウガンダでバッグ工房を立ち上げ、出身地の静岡市葵区にRICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)を設立。2016年ウガンダで現地法人レベッカアケロリミテッドを設立し、マネージングディレクターに就任。2016年第1回日本AFRICA起業支援イニシアチブ最優秀賞、2017年日経BP主催日本イノベーター大賞2017にて特別賞、第6回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション女性起業事業奨励賞、第5回グローバル大賞国際アントレプレナー賞最優秀賞を受賞。
日本とウガンダを行き来する日々
SAA:日本とウガンダの往来で忙しくされていると思いますが、近況をお聞かせください。どれくらいの頻度でウガンダに渡航されていますか。
仲本(敬称略):1年に3回ほどウガンダに渡航していて、1回あたり1、2か月滞在します。日本にいるときは、営業や企画を行ったり、取材を受けたり、店舗やポップアップなどで接客をしたりすることもあります。ウガンダでは、主に新商品開発や、現地スタッフと経営課題を話し合ったりしていますね。
SAA:現地に頼れるマネージャーみたいな方はいらっしゃいますか。
仲本:2人います。1人は生産を見ていて、もう1人は私のアシスタントとして管理系をやってもらっています。2人ともウガンダ人です。
SAA:RICCI EVERYDAYはどんどん新しい商品を開発していますが、全部、仲本さんが考えているのでしょうか。
仲本:そうですね、大部分は私が考えています。現地にいる間に、30種類ほどの試作品の製作を繰り返し、必ず私自身の目で最終デザインを確認します。その時に商品化が決まったものは、2、3か月後に日本で販売、出来上がらなかった分は、また次回渡航したタイミングで最終確認を行います。
SAA:コロナの影響はどのような感じですか?
仲本:2020年にパンデミックが拡大した初期は本当にパニック状態でした。例えばウガンダの大統領が突如声明を出して、数時間後にロックダウン!公共交通機関はストップして、工場も稼働できなくなりました。RICCIの工房も閉めるしかなかったのですが、その時はいったいいつまで続くのだろうという感じでした。
5月半ばにようやく工房は稼働できるようになりましたが、公共交通機関は依然として使えなかったので、徒歩で通えるスタッフでまずは生産を再開しました。6月半ば以降に公共交通機関が動き出して、遠方のスタッフも通えるようになり、何とか乗り切ることができました。正常化には程遠かったですが、ちょっとずつ少しずつ動き出したという感じです。
SAA:工房を再開した後も、国際郵便は止まっていませんでしたか?
仲本:EMSは止まっていました。RICCIはカーゴ便を使っていて、そのフライトは飛んでいたので、少しずつですが、商品は出せたという感じです。半年間くらいはウガンダへの渡航が難しかったので、その間はどうにか現地スタッフに頑張ってもらい、10月1日に国境がオープンしてすぐの10月2日に現地入りしました。
コロナ禍も守り続けた雇用~やっぱり人が一番大事~
SAA:雇用を継続するのは、大変だったのではないでしょうか。
仲本:そうですね。ただ、こういう感染症は、必ずいつかは終わるものだと思っていたので、全員雇用し続けました。4月は会社負担で給与を払い、5月以降は有給を消化してもらったり、休業補償を利用したりで何とかつないで、7月からは通常通り給与を支払えるようになりました。
去年、デルタ株が流行ったときに、2回目のロックダウンがあり、ちょうどウガンダにいたのですが、せっかく来たのに何もできないという時期もありました。それ以降はだんだん落ち着いて、今ではコロナの影響は何もないものになっていますね。マスクもほとんどつけてないですし。一部のモールはマスクをしていないと入れないとか、銀行はワクチン証明書を見せないと入れてくれないとかはありますが。
SAA:日本のコロナの影響はどうでしたか?
仲本:2020年4月はお店も開くことができず、デパートでのイベントも全部キャンセルになりました。当時オンラインストアには、バッグしか載せていませんでしたが、コロナをきっかけに全商品を載せるようになりました。
SAA:結果的には、コロナがきっかけで販売のオンライン化が進んだということですね。現地のオペレーションについてはいかがでしょうか。仲本さんが行けなかったことで変化したことなどはありますか。
仲本:彼女たちが自分で考えながら、動けるようになってきたと思いますね。こちらから指示は出しますが、彼女たち自身で納期を意識した仕事のスケジューリングと管理を行っていますし、必要があれば自主的に残業して対応してくれたりもするようになりました。
SAA:現地スタッフのモチベーションを維持するコツは何でしょうか。
仲本:金銭的なインセンティブもそうですが、コロナ禍で多くの人々が職を失っていた中でも、解雇されなかったことで、現地スタッフの信頼を得たと思います。「あなたたちがちゃんと仕事さえしてくれれば、雇い続ける」というのは、日頃から敢えて伝えています。やはり人が一番大事だと感じているので。
【中編】RICCI EVERYDAY代表 仲本 千津氏 × ササカワ・アフリカ財団
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