たった一粒の豆も無駄にならなかった!考えもしなかったことが可能に!
穀物の保管時における害虫による被害は、アフリカの小規模農家にとって大きな課題です。トウモロコシや豆類など、アフリカの主要穀物について調べたところ、収穫高の少なくとも20%が被害に遭うという試算が出ています。そのため、穀物の保管手段がない農家は、収穫後すぐに販売する、もしくは必ずしも効果を発揮するとは限らない殺虫剤を穀物に使用しなくてはいけませんが、殺虫剤の場合、適切に使用しなければ人体に影響があるかもしれないのです。
エチオピアの農家は、他の多くのサブサハラアフリカ諸国と同様、泥や粘土、家畜の糞、植物由来の原料やそれらを混ぜ合わせたものを使用して作られた伝統的な貯蔵庫に、収穫された穀物を保管しています。しかし、それでは虫やネズミ、湿気などによる損失被害を防ぐことはできません。そのため、ササカワ・アフリカ財団では、エチオピア農業省の農業普及員たちと協力し、2015年から1年間でPICS3バッグ(※米国パーデュー大学が開発した、安価で丈夫な密封3重構造の穀物保存袋)を3,155の村に導入・普及させるプロジェクトを開始しました。
2016年6月、南部諸民族州シダマ県アワサズリア郡と、ティグレ州タハタイメイチュー郡メイベラジヨ村での農家フィールドデーにて、PICS3バッグ開封式が行われました。ホスト農家が6ヶ月間、マメ、メイズ、ソルガム、コメを保存していたバッグをそれぞれ開けたところ、害虫の被害は見られず、それらが元来の品質を保っていることが、皆の前で明らかになりました。
アバディ・レダヘング氏はタハタイメイチュー郡出身の農家で、彼や同じグループの農家たちは「第一に、害虫から穀物を守ることで、保管前に薬品を使用する必要がなくなりました。かつては、害虫による被害を受けたマメとひよこ豆を一粒一粒確認する必要がありました。そしてその損失は時には収穫量の半分にも及びました。しかしこの袋のおかげで、私たちは穀物を100%の品質で保管することができるようになるとともに、薬品を使わなくてよいという二重の喜びを感じています。この取組みを始めたばかりの頃は、『外袋を1枚、内袋を2枚使うのは変じゃないか』と思い、この技術の導入をためらいました。しかし、2ヶ月後に袋を開けた時、一粒も害虫の被害を受けていなかったのを確認し、またさらに2か月後に開けた時も同様でした。私たちはササカワの支援に感謝しています。私たちは、この袋を使うことで、これまで考えもしなかったことが可能となったのですから。今ではこの地域の農家ネットワークに所属する全農家が、この袋を手に入れることができます。」と言っています。
アメリカ・インディアナ州にあるパードゥー大学では、ビル&メリンダゲイツ財団から約10億円の助成を受け、作物保管袋をより多くのサハラアフリカ諸国の農家に届け、食料安全保障と収入の改善を図るプログラムを展開しています。その袋はPICSバッグ(Prude Improved Crop Storage、パードゥー改良作物保管袋)と呼ばれています。PICSバッグはシンプルな作りですが、アフリカの100万人の農家の保管時における収穫後被害を劇的に減少させたことが実証されている技術です。密閉3重構造の袋は、薬品を使わない保管方法であり、主要作物の収穫後1年以上の保管を可能にしました。この技術は、食料確保と小規模農家の収入の改善に役立っています。PICSバッグを使うことで、農家たちはもはや害虫から穀物を守るために薬品を使う必要がなくなるのです。
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