【活動報告】ウガンダにおけるコメ収入の向上:日本政府支援のワンストップ・センターがオトゥケ県のバリューチェーンを変革
ウガンダ北部のオトゥケ県では、コメなどの穀物栽培が農村の生計を支えています。しかし、地域には加工施設や組織化された市場基盤が整備されておらず、農家は収穫後の処理や販売において大きな制約に直面してきました。
農家主体の協同組合であるオトゥケ町農民貯蓄信用組合(会員1,000人、うち女性490人)にとって、課題は生産ではなく収穫後にありました。
高コスト・高リスク・低収益の構造
長年にわたり、この同組合は精米機や収穫後処理施設を保有しておらず、農家は精米や販売のためにリラ市まで穀物を運ばざるを得ませんでした。その過程では、精米のために長時間の順番待ちや高額な運搬費に加え、配送中や市場での盗難、買い手との交渉力の弱さによる安値での売却といったリスクにも直面していました。
リラでの精米費用は1kgあたり0.08米ドルですが、これに運搬費0.06米ドルが上乗せされ、実質的なコストは1kgあたり0.14米ドルに達していました。それでも多くの農家は、確実に買い手が見つかるリラでの販売を選ばざるを得ませんでした。
同組合のマクドナルド・オジョク代表は、「リラへ穀物を運ぶのはリスクが高く、盗難などによる被害も経験してきました」と振り返ります。また、記録担当のミルドレッド・アキディさんは「長時間の精米待ちにより収入機会を失い、コメの付加価値を高めることも難しかった」と話します。
こうした状況のもと、一部の農家はコメ栽培の継続を断念しかけていました。
農業システム全体へのアプローチ
この状況は、2025年に日本政府(外務省)の支援を受け、ササカワ・アフリカ財団(SAA)ウガンダ事務所が実施した取り組みによって大きく改善されました。個別の課題に対処するのではなく、加工、保管、集荷、助言サービスを一体的に提供する「ワン・ストップ・センター(OSCA)」がオトゥケ県に設立されたのです。
2025年6月に稼働を開始したOSCAには、1時間あたり2,000kgを処理できる最新の精米機が導入されました。1日平均7時間の稼働により、最大で日量14トンの処理が可能となっています。これにより、都市部への配送に伴うコストとリスクは大幅に軽減されました。
精米費用は1kgあたり0.08米ドルで、配送が不要になったことで、農家は1kgあたり0.06ドルのコスト削減を実現しています。特に取扱量の多い小規模農家にとっては、その効果は大きいものとなっています。
OSCAで行われる精米作業。地域での加工により付加価値を高め、収穫後損失を削減するとともに、農家の所得向上につなげている。市場アクセスへの課題
一方で、精米の拠点をリラからオトゥケへ移したことで、新たに市場アクセスの課題が浮上しました。リラには既存の買い手ネットワークがありましたが、オトゥケでは当初、加工米を十分に吸収できる市場が形成されていませんでした。
これに対しSAAは、システム全体の視点から対応しました。まず、市場分析を通じて大規模トレーダーや卸売業者を特定し、OSCAを地域の供給拠点として位置づける取り組みを進めました。
さらに、農家のリスク軽減と競争力強化に向けて、無料の保管サービスを導入し、価格動向を見極めながら販売時期を選択できる環境を整えました。また、収穫後処理・加工の指導により、乾燥・選別・取扱いの改善が進み、品質と歩留まりの向上にもつながっています。
品質と信頼性で競争力を強化
コスト削減、品質向上、市場連携の相乗効果により、オトゥケのOSCAはコメ生産の拠点として機能するようになりました。品質の安定と向上により、農家はより高い価格で販売できるようになり、信頼性の向上とともに買い手もオトゥケへと移行し始めています。
変革の成果
その成果は顕著です。これまで十分な収益を得られなかった農家が、地域での付加価値化を通じて安定した収入を確保できるようになりました。
隣接するアレブトン県の農家アイザック・オクウィルさんは、「2024年は5袋を収穫しても利益は29米ドルにとどまり、栽培をやめようと思ったほどでした。しかし、OSCAの設立後に再び栽培に取り組み、8袋を収穫。精米したコメを1kgあたり0.84米ドルで販売し、最終的に416米ドルの利益を得ることができました」と話します。
また、オトゥケ町の農家モリー・アウマさんは、「8袋を収穫し、そのうち2.5袋を販売して181米ドルの収入を得ました。収益は家の修繕に充てる予定です。保管が可能になったことで、年間を通じて食料を確保できるようになりました」と収入の向上に加え、食料安全保障の改善も実感しています。
OSCAで精米後の農産物を袋詰めする若者たち。雇用機会を創出するとともに、効率的な収穫後処理と市場出荷への対応を支えている。地域のコメ生産拠点へ
現在、OSCAは1日最大14トンの穀物を処理し、地域におけるコメの集荷・加工・流通の中核拠点として機能しています。また、加工や保管、サービス分野において、女性や若者の新たな雇用機会も生み出しています。
同組合のオジョク代表は、「OSCAは私たちの生活を大きく変えました。私たちはもはや単なる小規模農家ではなく、成長する農業コミュニティの一員です。この仕組みの中に、資金も市場もあります」と語ります。
高リスク生産から市場対応型拠点へ
オトゥケの事例は、日本政府による戦略的なインフラ投資に加え、市場システムに基づくアプローチ、協同組合の強化、そして品質重視の付加価値化を組み合わせることで、農家の潜在力を持続的な成果へと転換できることを示しています。
コスト削減、品質向上、市場連携の強化を通じて、外務省の支援のもとSAAが実施した本事業は、オトゥケを高リスクな生産地域から、競争力のある市場志向型のコメ生産拠点へと変革しました。
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