【活動報告】小規模農家に力を ― 手の届く機械化がもたらす変革

マリ
2025年10月27日

マリでは、農業機械の購入と利用を支える新たな仕組みが、小規模農家の機械化を後押ししています。

2025年、SAAが支援する20の収穫後処理・取引センター(PHTC)で組織されるゲセブグ協同組合連合は、現地NGO、G-Forceから耕うん機5台の供与を受けました。その後、ゲセブグ協同組合連合は、耕うん機2台を傘下組合(PHTC)に、残りの3台を組合員である個々の農家に販売しました。現在、耕うん機を受け取った団体や農家は、地域の農業機械化推進する中心的な担い手としてこれらを活用しています。

この耕うん機は、耕起、砕土、運搬が可能な8馬力の多機能タイプで、市場価格はCFA 1,500,000(約2,500米ドル)に上り、この地域の小規模農家には容易に手が出せない高価なモデルです。それにもかかわらず組合員が導入できた背景には、連合が設けた独自の支援スキームがあります。

その仕組みとは、総額CFA 1,500,000(約2,500米ドル)のうち、頭金としてCFA 250,000(約420米ドル)を支払い、残額を3年間の分割で返済するという分割払い制度です。この仕組みを導入した結果、ゲセブグ協同組合連合は耕うん機を販売・管理する立場として、購入者から分割で支払いを受け取ることになります。これにより、耕うん5台の販売総額から、連合としてCFA 7,500,000(約12,500米ドル)の収入が見込まれ、これは年間CFA 2,500,000(約4,200米ドル)の安定した収入源となります。この収入は、連合の財務基盤を強化し、将来の投資活動を支える力となっています。

ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、組合連合に対し、能力強化を目的とした経営や財務管理に関する研修に加え、耕うん機の操作、使用方法、基本的な保守整備に関する実践的な技術研修を実施し、適切な機械管理を支援しています。

コススマレ協同組合のN’Tji トラオレ会長は、「以前は圃場の準備に1週間以上かかっていましたが、今ではたった2日で全ての区画を耕せるようになりました。」と、変化を語ります。

導入効果は明らかで、生産コストの削減、収量の増加、営農計画の効率化、そして家庭の食料安全保障の向上といった具体的な成果が実現しています。さらに、耕うん機は他の農家にも貸し出され、その収益が整備費や協同組合の活動資金として再投資される仕組みも機能しています。

ゲセブグ協同組合連合のヤクバ・ジャラさんも、この変化を実感しています。「もう牛を借りて耕す必要がなくなりました。畑を広げ、収量を増やし、子どもの学費も前もって払えるようになったのです。」

この仕組みは、集団投資と協同管理、そして技術支援を組み合わせることで、生産性を飛躍的に高め、農村コミュニティの経済的自立を後押しできることを示しています。手の届く機械化、組合の持続的な収入、農家の生活改善という好循環なダイナミクスを実証しています。

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