【活動報告】学校給食を通じた地域経済の好循環 ― 生産者組合とWFPの協働事例
「以前は本当に苦労の連続だった」とゲセブグ共同穀物生産者組合の会長のマドゥ・ファネさん(62歳)は振り返ります。彼の率いる組合には1,760名(うち女性570名)が所属しており、長年、収穫物の販売に苦戦してきました。「仲買人に損を承知で売るしかなく、いつ・いくらで売れるのかも分からないことが多かったのです」とマドゥさんは話します。こうした不安定な状況は、家庭の収入を圧迫し、子どもたちの教育にも影響を及ぼしていました。
ササカワ・アフリカ財団(SAA)マリ事務所は、日本財団の支援を受け、同グループに組合運営、品質管理、ポストハーベスト、営農計画、財務管理などの技術支援を行いました。SAAの支援を受けたゲセブグ共同穀物生産者組合のメンバーは、必要なスキルを身に着け、穀物集出荷の一元化による品質向上など、組合運営を強化することができました。
そして2024年、努力の成果が形になります。地元NGO「G-Force」の仲介を通じて、世界食糧計画(WFP)との新たなパートナーシップが誕生し、地域の学校給食向けに、地元産のコメ、ササゲ、食用油などを安定的に供給する仕組みが構築されました。
この取り組みにより、2024年から2025年にかけて3回の取引を実施し、合計11,760米ドル(CFA 7,409,250)の利益を上げました。
得られた利益は、組合員の生活と地域の未来を支える形で再投資されています。
- 3,175米ドル(CFA 2,000,000):地域マイクロファイナンス機関(RMCR)の定期預金として積立
- 5,472米ドル(CFA 3,450,000):次期農業シーズンに向けた融資として組合員に貸付(7名に各556米ドル、20名に各79米ドル、返済期間10か月・利率5%)
- 残額:今後の活動資金として積立
- 加えて、870kgのササゲを組合員に前渡しし、収穫後に返済する形を導入
この成果により、マドゥさんをはじめとする生産者たちの暮らしは大きく変わりました。
「今では子どもの学費を計画的に準備できるようになり、家庭の食事も安定しました。組合員たちは生活が向上し、収量を増やすための農業投資もできるようになっています」とマドゥさんは語ります。

こうした変化は、単なる所得向上にとどまりません。学校給食を通じて地域の子どもたちが安心して学び、生産者が安定した収入を得るという、地域に根ざした相互支援の循環が生まれています。さらに、この取り組みをきっかけに教育機関や金融機関との信頼関係が強化され、組合には新たな経済的機会が広がりました。
本事例は、農村協同組合における市場アクセスと資金循環の重要性を示すとともに、技術支援と金融支援を組み合わせた支援が、学校給食の質の向上、生産者の安定収入、そして地域経済の発展を同時に促すことを実証しています。SAAは、こうした持続可能な地域づくりの連携モデルを、今後もアフリカ各地で広げていきます。
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