【活動報告】マリで持続可能な土壌改良の実証試験を開始:JIRCAS TerraAfrica事業
ササカワ・アフリカ財団マリ事務所は、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)と協力し、日本財団の支援を受けて、トウモロコシとシコクビエ(パールミレット)を対象とした実証試験を開始しました。2025年6月より、ティオラおよびダクマニ地域で、堆肥や焼成リン鉱石を活用した土壌肥沃度の改善と収量向上の効果を検証しています。
サヘル地域では、干ばつの頻発、土壌の劣化、風食による侵食などが進行し、砂漠化が深刻な課題となっています。本プロジェクトは、JIRCASが複数のパートナーと実施する「アフリカにおける地域に応じた環境再生型農業構築に向けた技術開発プロジェクト(TERRA Africa)」の一環として実施されています。ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、このTERRA Africaプロジェクトの活動と緊密に連携し、実証結果を迅速かつ効果的に普及・展開する役割を担っています。今回の活動は、焼成リン鉱石およびリンを強化した堆肥の施用効果を科学的に明らかにすることで、これらの課題に直接取り組むことを目的としています。
科学を現場へ ― 実証試験の概要
ティオラでは、4つの村がトウモロコシ試験に参加し、7種類の施肥組み合わせを比較しています。自国ティレムシ(Tilemsi)産および隣国ブルキナファソ(Burkina Faso)産の天然リン鉱石をはじめ、堆肥や窒素、カリウムなどの必須栄養素を組み合わせたものが含まれます。比較のため、リンを施用しない対照区も設けられました。
ダクマニでは、同様の設計でシコクビエの試験を実施しています。各区画の生育や収量を比較することで、現地の環境条件に最も適した施肥体系を明らかにすることを目指しています。
有望な初期成果
圃場での初期観察では、良好な成果が見られています。リンを強化した堆肥を施用した区画では、作物の生育が力強く、生理的な発達も他区に比べて良好でした。地元農家からも「作物が明らかに元気になった」との声が寄せられています。
持続可能な未来に向けて
今回の試験は、土壌肥沃度を持続的に維持・改善するための重要な知見を提供し、農家の収量向上、食料安全保障の強化、さらには気候変動への適応にも貢献することが期待されています。
天然由来で環境に優しい土壌改良資材の利用を促進することで、SAAマリとJIRCASは、干ばつや土地劣化に強いレジリエントな農業システムの構築を目指しています。
本試験の成果は、今後マリにおけるトウモロコシおよびシコクビエ栽培の推奨指針となるだけでなく、同様の課題を抱える他地域にとっても有益なモデルケースとしても役立つことが期待されます。
SAA 出版物のご紹介

E-ニュースレター
"Walking with the Farmer"
SAAの活動動向をレポートしたE-ニュースレターを隔月で発行しています。
E-ニュースレターの日本語翻訳版(PDF)はE-ライブラリーでご覧いただけます。
アニュアルレポート
Annual Report FY2023(英)
2023年度年次報告書(英文)がダウンロードいただけます。




