【活動報告】カラモジャに希望をもたらす機械化:SAAの取り組みが若者雇用と地域主導の農業変革を後押し

ウガンダ
2025年7月30日
写真左から:ハーベスト・スライブのチーム、SAAウガンダ事務所ロバート所長、SAA本部澤田JPO、トラクターの運転手、SAAウガンダ事務所コリンズ氏
写真左から:ハーベスト・スライブのチーム、SAAウガンダ事務所ロバート所長、SAA本部澤田JPO、トラクターの運転手、SAAウガンダ事務所コリンズ氏

カラモジャ地域は長年、伝統的な自給農業が営まれ、近年の気候変動への対応に苦慮してきましたが、近年、住民主体の取り組みにより地域の農業に変化が生まれています。アビム県では、SAAが日本NGO連携無償資金協力(日本外務省)事業を通じて農業機械化の実証モデルを導入し、小規模農家の生産性向上、若者の雇用創出、協同組合の基盤強化を推進しています。

2025年には、SAAとアビム・ウエスト農業協同組合が連携し、有償のトラクター(85馬力・4種のアタッチメント付き)貸出サービスを開始しました。従来は手作業や不安定な降雨に依存していた300戸以上の農家にとって、大きな転機となっています。85馬力のトラクター1台に複数のアタッチメントを備え、初年度だけで延べ532エーカー(約215ha)以上を耕作。作業効率が大幅に向上し、農業労働の負担軽減につながりました。

The 85-horsepower tractor in action during field operations in Abim District.

アコル・ルースさんのような5人の子を持つ農家にとって、このサービスは、何年かぶりに早期の種まきが可能になったことを意味しました。
「以前は、畑を整えるのに何週間もかかっていましたが、今ではトラクターを使えば1日で終わるようになりました。」

しかし、この取り組みの価値は単にスピードだけにとどまりません。作付け面積を増やし、作業の適時性を高めることで、この支援は農家の生産性を向上させ、重労働を軽減し、食料安全保障を強化するのに役立っています。そして、その成果はすでに現れています。わずか1シーズンで5,000米ドル以上を創出。その収益の一部は、2台目のトラクター購入に充てられ、地域主体での持続的な運営を支えています。この再投資は、モデルの収益性を示すだけでなく、持続可能性とコミュニティによる事業へのオーナーシップを示す強力な証でもあります。

協同組合は今後、耕作面積を倍増させて1,000エーカー(約404.7ha)を目指し、より多くの農家にサービスを提供することを目標に掲げています。


このモデルを特に革新的にしているのは、デジタル技術の活用です。協同組合は「Hello Tractor」アプリを使用しています。このアプリは、トラクターの動きを追跡し、リアルタイムでの耕作状況を監視し、サービス提供された面積のデータを取得します。これにより、運営の透明性が確保され、効率的なサービス提供と、勘ではなくデータに基づいたリアルタイムでの意思決定が可能になっています。

また、この取り組みは若者の力も引き出しています。アビム・ウエスト農業協同組合では、地域の若者5人がトラクターの運転や整備の研修を受け、新たな雇用と技術習得の機会を得ています。若者の失業率が高いこの地域において、こうした役割は彼らの手持ち無沙汰な時間を減らすだけでなく、若者を農業開発の重要な担い手として位置づけています。この取り組みを通じて、若者はもはや農業の傍観者ではなく、イノベーター、サービス提供者、そして変革の担い手となっているのです。

農家もまた、コミュニティを基盤とした組織を通じてサービスを公平に利用できるようになり、手頃な費用で、前もって計画を立てて支払うことができます。このコミュニティ主導のアプローチは、社会的結束を強化し、誰も置き去りにしないことを保証しています。

アビム・ウエスト農業協同組合でのトラクター貸出制度は、単なる機械化の取り組みではなく、収益性と主体性を備えた「地域主導型モデル」として展開されています。ドナー依存からの自立を目指し、農家の生活改善と地域の結束を後押しする仕組みとなっています。

カラモジャで始まったこの取り組みは、今後、ウガンダ国内や他地域への展開も期待されています。

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