ウガンダ北部コレ県で、SAAの環境再生型農業チームが現地の農業活動を視察・支援しました。SAAは現在、「官民・地域パートナーシップ（Public–Private–Community Partnership: PPCP）」アプローチを推進しています。これは公的機関・民間企業・地域社会の強みを結集することで、小規模農家が直面する低生産性、市場の分断、若者の失業、気候変動への脆弱性といった課題に対応する仕組みです。
この取り組みにより、自給的な農家がアグリビジネスの担い手へと成長し、農村が新たな経済活動の拠点として発展しつつあります。

協働の仕組み
PPCPアプローチは、公的機関・民間企業・地域社会がそれぞれの強みを生かして協働する仕組みです。まず、地方自治体は協同組合の登録支援や農業普及員の配置、集荷センターや灌漑設備の整備を担っています。一方民間企業は、機械化ツール、認証種子、デジタルプラットフォーム、市場アクセスを提供しています。

そして、この協働を現場で支えているのが、SAAが支援するワンストップ・センター（OSCA）を中心としたコミュニティ組織です。これらの草の根組織は、地元の生産や集荷を活性化させるだけでなく、それぞれのコミュニティの状況に合わせた、気候変動に対応し、栄養に配慮した農業手法の導入も推進しています。

変革を支える原動力
SAAは、この三者を結びつける触媒として機能しています。能力強化、メンタリング、技術支援を通じて、すべてのパートナーが農業変革の旅路において意義ある役割を果たせるよう支えています。キブク、カムリ、カラモジャ地域では、SAAが育成した若手リーダーたちが、種まき機や電動除草機といった農機具を用いたサービスを提供しています。彼らは農業機械サービスの提供者として信頼を集め、資材販売、機械化、デジタル普及を組み合わせ、さらにビジョンファンドのような金融サービスにも農家をつなげています。

「以前は、生活のすべてを両親に頼っていました」と語るのは、カムリ県の機械化サービス提供者、エリネスト・ムバレさん（30歳）です。「でも、SAAの研修とPPCPモデルのおかげで、今は耕起や播まきのサービスを提供して生計を立てています。貯金で自分のバイクを購入し、農業のために土地を借りることもできました。」

また、女性主導の協同組合も成長を遂げています。西ナイルやルウェンゾリ地域では、これまで商業市場から排除されていたグループが、今では質の高いカカオ、コーヒー、ゴマを海外のバイヤー向けに生産しており、有機認証やカーボンクレジット取引といった新たな取り組みに挑戦しています。

ジャブプランターの実践研修の様子（バラ女性・青少年協同組合）

明らかな成果、確かな変化
PPCPアプローチの成果はすでに現れています。カカオの収量は200％増加し、コーヒーは45％増。また、SAAが推進する「栄養に配慮した農業」により、2万世帯以上で食生活の多様性が改善しました。難民居住地域であるユンベでは、難民主導の農業協同組合がPPCPの仕組みを通じて強化され、現在は世界食糧計画（WFP）向けに食料を供給するまでに成長しました。これにより、依存から自立へと移行し、地域に安定と新たな経済機会が生まれています。

さらに、SAAのパートナーシップを通じて導入されたデジタルツールは、農村バリューチェーンに透明性とトレーサビリティをもたらしました。農家は販売状況を追跡し、データに基づいた助言を受けられるようになり、遠隔地の農家もウガンダの農業経済の中で確かな存在感を持つようになっています。

アフリカ農業の未来への青写真
PPCPアプローチは、農業の未来が孤立した取り組みではなく、包括的で調和の取れた仕組みにあることを示しています。SAAウガンダ事務所のロバート・アニャン所長は、「このパートナーシップモデルは、農家を市場につなぎ、若者に機会を与え、地域を持続可能性へと導く架け橋です。責任を分かち合い、共通の成果を生み出すことが大切なのです。」と、話します。
このアプローチは、ウガンダにとどまらず、大陸全体への展開が期待されています。数百万の小規模農家が貧困から繁栄への道を模索する中で、投資と協働が続けば、PPCPはその道を照らす確かな指針となるでしょう。

アペイトリム農民組合にて実施された農業技術に関する研修の様子。