【活動報告】付加価値と市場変革で進化するキエンダガラ協同組合のインクルーシブモデル
ウガンダ西部・キタグウェンダ県のなだらかな丘陵地に位置するキエンダガラ地域協同組合(Kyendagara Area Cooperative Enterprise: KACE)は、地域主導による農業変革の可能性を示す力強い事例です。2006年に日本財団の支援を受けて設立されたKACEは、当初は種籾の生産や地元消費向けのトウモロコシ粉の製粉を行う小さな農家グループでした。その活動は20年近く小規模に運営されてきましたが、2024年に大きな転機を迎えます。
日本NGO連携無償資金協力(日本外務省)の支援を受け、SAAが実施するプロジェクトを通じて、KACEは自給的協同組合から商業的に持続可能な企業へと進化しました。SAAは、能力強化、金融アクセス、農業資材供給、収穫後の加工、そして市場連携といったサービスを「ワンストップセンター(OSCA)」モデルの下で統合し、農家が成長できる環境を整えました。
SAAが提供した研修は「農業をビジネスとして考える」「農薬の安全な使用」「健全な経営実践」「収穫後の取扱い」「貯蓄と投資」といった分野をカバーし、農家の意識と実践に大きな変化をもたらしました。その結果、付加価値を重視したビジネス志向の農業が始まったのです。
特に画期的だったのが農産加工と認証取得でした。これまでKACEは家庭や地元販売用に穀物を製粉する程度でしたが、SAAの技術支援に加え、ウガンダ国家規格局(UNBS)や地方行政のサポートを得て、Qマーク認証(ウガンダ国家規格局が発行する品質保証マーク)を取得。これによりブランド化された認証付きトウモロコシ粉を生産し、学校、スーパーマーケット、卸売業者など公の市場へ参入することが可能になりました。さらに、コンゴ民主共和国やブルンジ共和国との越境取引といった地域貿易の新たな機会も開かれました。
2024年だけで、KACEは384トン以上のトウモロコシを加工し、1kgあたり0.44米ドルで高品質粉を販売、16万8,563米ドルの収益を上げました。さらに、Persher Agro Ltd社と1万6,461米ドルの供給契約を結び、2025年にはその倍増が期待されています。これらの成果は協同組合の収入を高めただけでなく、組合員農家に安定した販売先を確保しました。

キエンダガラ協同組合でのトウモロコシ製粉作業。小規模農家の収益向上に貢献また、共同出荷による規模拡大は商業的持続性をさらに強化しました。2023年の87トン(収益3万2,373米ドル)から、2024年には225トンへとほぼ3倍に増加し、収益は9万5,749米ドルに達しました。これは集合出荷と組織的なマーケティングの経済力を如実に示しています。
金融アクセスの拡大も大きな成果です。SAAはUGAFODEマイクロファイナンスとの連携を通じて30億ウガンダシリング(約78万米ドル)超の融資を実現。これにより農家は生産拡大へ投資でき、多くの農家が協同組合に参加しました。組合員は2023年の1,200人から、2024年には2,750人へと急増し、信頼と繁栄の輪が広がりました。
雇用とインクルーシブもKACE成長の中心に据えられています。同組合は現在25名の若者を加工業務に雇用し、さらに女性を歩合制で村落担当者として配置し、小規模農家からトウモロコシを集荷して組合へ供給する仕組みを導入。このモデルは女性の経済的エンパワメントを実現しながら、サプライチェーンを強化しています。
しかし、課題も残っています。不安定な電力供給は製粉作業を妨げ、時折、納品の遅延を招きます。また高い輸送費も製品の流通に影響を与えています。これに対応するため、KACEは太陽光や発電機など代替エネルギーの導入を模索しています。
将来を見据え、KACEは、より多くの農家に参加を呼びかけ、資材供給、収穫後施設、販路確保といった統合サービスの恩恵を共有していく考えです。SAAやパートナーの継続的支援の下で、同組合は、レジリエンス、イノベーション、地域の力を基盤とした「包摂的(インクルーシブ)・市場主導型農業開発」の全国的なモデルとなることが期待されています。
関連記事:SAAウガンダとキエンダガラ協同組合の連携が掲載されたGAP Report(世界農業生産性報告書)
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