【活動報告】ワンバッグ・イニシアティブ:農民協同組合の強化による経済的レジリエンス向上

ウガンダ
2025年7月30日
「One Bag Initiative」を通じて、レラコット農業協同組合で集約されたトウモロコシ
「One Bag Initiative」を通じて、レラコット農業協同組合で集約されたトウモロコシ

SAAは、小規模農家協同組合やワンストップセンター(OSCA)の強化に向け、資材・資金・市場機会へのアクセスといった主要課題に対応する戦略を進めています。主な焦点は、地域資産を構築し、それらを融資可能なものにすることです。日本財団の支援を受けて、SAAの市場志向型農業(MOA)プログラムを通じて導入された変革的な取り組みの一つである「One Bag Initiative(OBI)」は、協同組合の強化、サービス提供の向上、市場アクセスの改善において、画期的なものとなっています。

小規模農家を市場志向型農業へ

OBIは、小規模農家の経済的レジリエンス向上、共同販売力の強化、市場との連携促進を目的とした協同組合の形態です。各農家が毎シーズン、農産物を1袋ずつ協同組合に自主的に拠出し、その共同資源を協同組合の運営に再投資します。これにより、信用供与、機械化、保管施設、より有利な市場アクセスといったサービスが可能になります。

この仕組みによって、従来は自給的農業にとどまっていた小規模農家が、商業的かつ持続可能な営農へ移行することをSAAは支援しています。協同組合は、収穫後の損失を減らし、大口販売による価格交渉力を高め、正式なバイヤーとの安定した取引関係を築けるようになります。

多くの小規模農家協同組合は、運転資金が限られていたり、組合員の出資が不規則であったりするため、持続可能性に苦慮しています。OBIは、会員の拠出を制度化することで、財務基盤を安定させ、組織内部からレジリエンスを高める仕組みとして導入されました。

実施と関係者の役割
OBIを導入協同組合は、既存の運営能力やガバナンス体制、OBIへの参加意欲を基準に選定されました。OSCAの役員、ビジネス型コミュニティ普及員(CCBF)、地区商業担当官(District Commercial Officer:DCO)(地域の商業活動を監督・支援する地方行政官)らが中心となり、協同組合員を動員し、農家に対してOBIの利点を啓発する上で重要な役割を果たしました。

2024年12月には、ムベンデ、リラ、イガンガ、ムバララ地域で研修が実施され、82名(うち女性20名)が参加しました。研修では、OBIの運営方法、バリューチェーン統合、ビジネス開発について学び、ケーススタディや討議を通じて具体的な実践方法を検討しました。特に「各農家が1袋を拠出し、共同資源として再投資する」という仕組みの重要性が強調されました。また、農家参加の低調さ、保管施設不足、市場連携の弱さといった課題に対し、集荷技術の改善、生産計画の導入、バイヤーとの契約締結などの解決策が提示されました。

農産物の袋の個数を在庫を確認している。

成功事例:レラコット協同組合の変革
レラコット協同組合は、以前は会員拠出の不足や資金難、サービスの制約に直面していましたが、OBI導入後に大きく改善しました。共同保管と共同販売を通じて30トンのトウモロコシを集荷し、市場での交渉力を高めました。今後は農家収入を30%増加させることを目標としています。

また、農家は品質基準と収穫後管理に関する研修を受けたことで、収穫後ロスは40%削減されました。高品質なトウモロコシの安定供給により、大口バイヤーの獲得と有利な価格の実現を目指しています。さらに今後は、信用による資材提供、機械化サービス、改良型保管施設の整備へと事業を拡大する計画です。

拡大と持続的インパクト
OBIは農民組織の強化を目的とする長期戦略です。SAAはCCBFを通じて、信用供与、生産コスト削減技術、正式バイヤーとの市場連携を提供し、自給的農業から商業農業への移行を後押ししています。SAAは今後、研修の拡充やアグリビジネス関係者との連携を通じ、OBIをウガンダ全土へ広げる計画です。収益源の多様化、ガバナンス強化、金融機関との連携により、協同組合の持続可能性を一層高めます。

研修では契約栽培の重要性も取り上げられ、すでにヒマワリ生産に関する契約3件が締結され、トウモロコシについても4件の契約が審査中です。これは、農家とバイヤーの間に信頼と使用をもたらしています。さらに、OBIは金融機関やアグリビジネス関係者との新たなパートナーシップを促進しており、財務規律を確立した協同組合は投資資金へのアクセスが容易になり、金融機関からの信頼も高まります。

まとめ
ワンバッグ・イニシアティブは、単なる共同販売にとどまらず、協同組合の持続的成長、経済的自立、小規模農家の生計向上を後押しする取り組みです。「共同の力・信頼・組織的な取引関係」を基盤とし、農村経済の中心として協同組合を位置づけています。
SAAは今後もOBIを拡大し、より多くの農家が商業農業へ移行できるよう支援を続け、ウガンダの食料安全保障と経済発展に貢献していきます。継続的な研修、メンタリング、関係者との連携を通じて、OBIはより強靭で持続可能な農業セクターへの道を切り開いています。

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