「まさか自分が国境を越えて農業をするなんて想像もしなかった」と語るのは、3人の子どもの父であり、ITを学んだ後に農業起業家へと転身したアガバ・ジョセフさん。彼は今や、ウガンダ農村部を代表する若手農業リーダーのひとりです。

イシンギロ県カビンゴ郡カガラマ村に生まれ育ったジョセフの人生は、困難の連続でした。11歳で父を亡くし、叔父に育てられました。2011年にマケレレ大学で情報技術の学位を取得した後、カンパラに移り住みましたが、多くの大学卒業生と同様に就職難に直面しました。やがて故郷に戻り、カビンゴ公立中等学校で教鞭を執り、月20万ウガンダシリング（約56米ドル）の収入を得るようになりました。生活を補うため、両親と同じ伝統的な農法に頼って農業を再開しましたが、鍬による手掘り、種のばら播き、雨頼みのやり方では収量は低く、成長も遅々としていました。

CCBFとしての収入増により購入したヤギとともに写真に写るジョセフ

転機は2018年。地域集会の際に郡農業担当官からSAAの研修（ユース・ビジネス・クリニック）に招かれました。研修では、不耕起栽培、輪作、有機堆肥、市場志向型農業などの持続可能な農業手法を学びました。SAAの指導のもと実践に移したところ、その効果はすぐに現れました。2021年にはユース・ビジネス・クリニック賞を受賞し、賞金で乳牛を購入。現在では5頭の牛を所有し、その堆肥で土壌を改良、農業生産性を大幅に高めています。

2024年、彼は日本財団の支援を受けたSAAのプログラムを通じてビジネス型コミュニティ普及員（CCBF）に選ばれました。研修では播種機2台と噴霧器2台を含むスターターキットが提供され、SAAからの技術支援とともに、他の農家に対し播種、薬剤散布、営農指導などの機械化サービスの提供を始めました。

最初は地域内で約5haを播種し、播種サービスだけで200米ドル以上を得ました。この成功を機にSNS（WhatsAppやFacebook）でサービスを宣伝し、隣国のタンザニアで約14haの播種契約を獲得。依頼主が交通費・食費・宿泊費を負担し、彼は769米ドルを手にするとともに、現地の若者2人を雇用しながら技術を伝えました。「その時、私は“国境を越える農業サービス起業家”なんだと気づいたのです」と、ジョセフは振り返ります。

現在ジョセフは、携帯電話を使った決済システム（モバイルマネー）であるMobiPayを通じて1エーカーあたり1.37米ドルを貯蓄しながら、動力式播種機や高度な噴霧器へのアップグレードを計画中です。収入の増加により家庭生活も一変し、2人の子どもを寄宿学校に通わせられるようになり、家畜や作物の生産も拡大。野菜、コーヒー、ジャガイモ、果樹、バナナなども改良された土壌肥沃度と計画的営農によって順調に育っています。

ジョセフがもたらした影響は、彼自身の家庭だけにとどまりません。彼は500人以上の農家をネットワークも支援しており、畑づくりや高品質な種子・肥料へのアクセス、実践的な助言などで彼を助けています。需要の増加のおかげで、農業資材を扱う業者が村に直接、資材を供給するようになりました。

間作を実施する畑に立つジョセフ

サービスの対価に対する未払いや遅延、人手不足といった課題は残るものの、ジョセフは楽観的です。最大の課題は、若者の農業に対するイメージを変えることだと彼は言います。「多くの若者は、農業をいまだに“汚い”“時代遅れ”と考えている。しかし私は、“農業は変わっている。だから私たちも変わらなければならない”と伝えています。」

彼の夢は明確です。東アフリカ全域で、手頃で高品質な播種および農業資材サービスを提供する地域農業アグリビジネスを築くこと。SAAとパートナーからの継続的な支援を受け、夢はすでに動き出していると彼は確信しています。

「機械化は私の人生を変えました。私にできたのだから、何千人もの若者農家にもできるはずです。」