ケレ大学 (エチオピア)の学生普及員、テフ栽培技術の改善で農家を支援
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ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、キャパシティ・ビルディング・プログラムを通じ、1996年よりエチオピアの9つの大学で現場の課題解決を重視したフィールドワーク「地域課題解決実践研究(SEP)」に取り組む学生を支援してきました(当時のSAFEプログラム)。このプログラムは2011年にメケレ大学(エチオピア ティグライ州)にも導入され、これまでに407人の学生を支援し、現在も33人がSEPに参加しています。
農村開発・農業普及学科の3年生であるハドゥシュ・ウェライさん(37歳)とシラス・G・エグザイバーさん(28歳)は、ティグライ州アフエロム郡タタイ・メガリアツェムリ村にある小規模農家ヨハネス・アイエサスさん(41歳)の農場でSEPに取り組んでいます。ヨハネスさんは0.25haの農地を所有し、家族と共に管理しています。
プロジェクトの概要
このプロジェクトは、現地環境に適した高収量のテフ品種を特定し、その普及を目的としています。ハドゥシュさんとシラスさんは、2m×2mの実証区を78区画設置し、13種類の在来品種と改良品種を活用し、評価を行いました。研究の信頼性を確保するため、無作為完全区画法(RCBD)を3反復で適用し、耐湿性・耐乾性・耐熱性に優れた品種を評価しました。
学生たちは、ティグライ州農業研究所(TARI)アクスムセンターから改良種子を調達し、推奨された施肥方法に従い、NPSおよび尿素肥料を施用しました。これまで、この地域では農家は主に在来品種をばら撒き播種し、肥料を使用しない伝統的な農法を行っており、その結果、収穫量は800kg/haにとどまっていました。
研究結果と影響
調査の結果、「ボシエト (Bosiet)」品種が最も高い収穫量を示し、2.2トン/haの生産性を記録しました。この品種は穂の長さや分げつ能力にも優れ、地域農家にとって有望な選択肢となる可能性が示されました。
本プロジェクトを通じ、農家はすじ蒔き、改良種子の導入、適切な施肥、その他の適正農業規範(GAP)などの改良策を学びました。農家は農業普及の専門家の指導を受けることで、貴重な知見を得ること共に、従来の慣行農法から、科学的に推奨される技術へ移行し始めています。
今後の展開
学生普及員たちは、SAAの継続的な支援を受けながら、地域コミュニティへ最良の農法を普及させる計画を進めています。彼らは自身の出身地である村(ケベレ)において実証した成果を、地区行政と連携し、他地域への展開も推進しています。
今回の学生による実証プロジェクトは、研究・教育・実践を統合したアプローチが、農業生産性向上と農家の生活改善に寄与することを実証しました。SEPの取り組みは、地域の持続可能な農業発展において、地に足の着いた重要な改善アプローチです。
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