ボランティアからリーダーへ:ビジネス型コミュニティ普及員として、地域農業に貢献するマイケルさんの物語

ウガンダ
2024年12月4日

「魚を一匹与えれば一日分の糧となり、魚の捕り方を教えれば一生の糧となる」というウガンダの諺があります。この教えをまさに体現しているのが、キタゲンドワ地区に住むアサバ・マイケル(27歳)さんです。彼は農学の学士号を持ち、公的農業研究機関であるNARO-MbaZARDIでボランティアとして働いていました。2022年にはササカワ・アフリカ財団(SAA)を通じてキエンダガラ地域協同組合の「ワンストップセンター(One Stop Center Association: OSCA)」に農業普及員として参加しました。

キタゲンドワでは長年にわたり、手頃な価格で質の高い農業資材や新しい農業技術へのアクセスに課題がありました。このような状況を憂慮していたマイケルさんは、自身の生活を向上させると同時に周囲の人々を助けたいと考え、農業資材店を開業しました。

その後彼は、需要に応じた質の高い有料サービスを提供する「ビジネス型コミュニティ普及員(CCBF)」に選ばれ、SAAの研修を受講しました。この研修では、ジャブプランター(播種機)などの小型の農業機械の使用方法やメンテナンス、除草剤や農薬、肥料などの適切な使用法、作物の栽培方法など、幅広い分野の知識を学びました。また、マイケルさんは、実演圃場を設けて改良技術の紹介や農家向けの研修を行い、地域のニーズに応じた支援を提供するスキルも習得しました。さらに、SAAの研修では事業運営にも重点が置かれており、マイケルさんは自身の農業資材店を持続可能な形で運営しながら、小規模農家が市場志向の解決策を採用できるよう支援しています。

SAAのサポートを受けて、マイケルさんはジャブプランターなどの機械を導入しました。ジャブプランターは、土を掘る、播種、覆土といった工程を一度に行えるため、植え付け作業が簡略化され、時間と労力が軽減されます。また、種子を均一に最適な状態で植えることにより、発芽率が向上し、土地利用効率も高まります。2024年8月から10月にかけて、彼は13軒の農家に対して27エーカー分の植え付けサービスを提供し、農家の時間の節約と生産性向上に貢献しました。「ジャブプランターを使ったとき、その簡単さと速さに驚きました。6エーカー分のメイズ(トウモロコシ)をあっという間に植え付けられたんです。マイケルさんのおかげで、農業がすっかり変わりました」と、彼の顧客の一人であるバンギラナ・ジョンさんは話します。

資材店で販売するアサバ・マイケルさん(右)

マイケルさんの店舗では、これまでに1,358米ドル相当の農業資材を販売しており、除草剤、殺菌剤、農薬、肥料といった高品質な製品を地域の農家に安定的に供給しています。また、資材の販売に加えて実演圃場を運営し、地域の農業技術の普及に大きく貢献しています。「新しい技術の導入に抵抗を感じる農家も少なくありません。そのため、実際に目で見て成果を確認してもらうことが大切です。そうすれば、変化の可能性を信じてもらえるようになります」とマイケルさんは語ります。この実践的なアプローチは、農家が収量を向上させ、コストを削減し、持続可能な農業技術を採用する後押しとなっています。

2024年、キエンダガラ地域協同組合の農業普及員としてマイケルさんは、253人の農家を対象に技術指導や植え付け、散布サービスを提供しました。「農家の収穫が向上したと聞くたびに、それが私たち全員の成果である実感します」とマイケルさんは語ります。わずか2か月間で、彼は農業サービスから348ドル、農業資材の販売から1,017ドルの収益を上げました。

CCBFイニシアティブは、ウガンダにおける市場志向型で持続可能な農業を推進するというSAAの使命の中核を担っています。現在、国内で150人のCCBFが研修を受けており、それぞれが少なくとも100人の農家を支援しています。この取り組みは、小規模農家の所得向上や地方での雇用創出を目指す政府の「パリッシュ・デベロップメント・モデル(PDM)」を後押しする役割も果たしています。

今後、マイケルさんには大きな夢があります。事業を拡大し、若者をもっと農業ビジネスに引き込み、キタゲンドワでさらなる変化を起こしたいと考えています。「農業は単なる重労働ではなく、賢い選択肢であることを若者に示したい」と彼は力強く語ります。

SAAの支援とマイケルさんの情熱が重なり、彼は自身の人生を大きく転換しただけでなく、地域の農家にもポジティブな影響をもたらしています。また、SAAにとってもマイケルさんの存在は、強靭な地方コミュニティを創造するという取り組みを成功に導いた象徴的存在です。キタゲンドワの農家にとって、マイケルさんの成功事例は希望そのものであります。「農家が成功するのを見ると、人生で何か意味のある事をしたと感じます」とマイケルさんは自身の原動力を熱く語ります。

SAAの支援とマイケルさんの情熱が融合し、彼は自身の人生を大きく変えただけでなく、地域の農家にも多大な影響を与えています。キタゲンドワの農家にとって、マイケルさんの成功は希望そのものです。また、SAAにとってマイケルさんの存在は、強靭な地方コミュニティを築くという取り組みを成功に導いた象徴的な存在となっています。「農家が成功する姿を見るたび、自分が人生で本当に意味のあることをしていると感じます」と、マイケルさんはその原動力を熱く語りました。

E-newsletter12月号掲載記事

SAA 出版物のご紹介

E-ニュースレター
"Walking with the Farmer"

SAAの活動動向をレポートしたE-ニュースレターを隔月で発行しています。

E-ニュースレターの日本語翻訳版(PDF)はE-ライブラリーでご覧いただけます。

SAAメールニュース

E-ニュースレター”Walking with the Farmer”(英語版)とイベント情報をメールで配信しています。是非ご登録ください。

登録はこちら

ヒストリーブック

“農家と共に歩んで ―ササカワ・アフリカ財団の農業支援の軌跡―”(日本語翻訳版)

SAAの創設から現在までの歩みを記したヒストリーブック(翻訳版)です。

アニュアルレポート
Annual Report FY2023(英)

2023年度年次報告書(英文)がダウンロードいただけます。