地域課題解決実践研究(SEP)が育む希望~接ぎ木と環境再生型農業で成功したハレグさんの物語~

ササカワ・アフリカ財団(SAA)エチオピア事務所は、メケレ大学で学ぶ中堅普及員2名を支援し、ティグライ州ラマ・アディアベアテ郡メイウォイニ村にあるハレグ・ゴベゼイさんの農場で、「地域課題解決実践研究(SEP)」を実施しました。
ハレグさん(46歳)は6人の子どもの母親でもあり、2005年から2006年にかけて、近隣の河川敷から肥沃な土壌を運び、接ぎ木したアップルマンゴーの苗を植えることで、岩だらけの土地を改良し始めました。
その後、SEPに参加するビルハネ・ゲダムさんとアルガネシュ・ゲブレセラマさんが、ハレグさんの農業活動にさらなる改善の可能性を見出しました。彼らは、接ぎ木技術、有機肥料の活用、作物保護、農場管理、適正農業規範(GAP)といった分野で実践的な支援を行いました。ハレグさんはこれを基に、マンゴーの木の周りに穴を掘り、自家製の堆肥とバーミコンポストを施肥。これにより、年間150トンもの果物の収穫を実現しました。

地域紛争やコロナウイルスのパンデミックによる困難にも関わらず、ハレグさんは2019年以降、再生した12.5ヘクタールの農地から、マンゴー500トン、アボカド7.5トン、バナナ25トン、オレンジ25トン、パパイヤ0.5トンを販売し、総額約4000万ブル(約93万ドル)の収益を上げました。
この成功により、ハレグさんは地区内に3軒の家と1軒のゲストハウスを建設したほか、メケレ市内に別荘も所有するまでになりました。さらに彼女の農場は現在、農家、研究者、専門家、講師、投資家にとって、環境に配慮した有機農業や気候変動に強い農業の実践例を学ぶデモンストレーション圃場として活用されています。
加えて、ハレグさんは乳牛14頭、雄牛1頭、羊20頭の飼育や養蜂、さらに100羽の鶏を活用した複合農業も展開。契約栽培の一環として、マンゴーの台木3000本と接ぎ木苗2000本を生産し、地域の需要に応えています。
ハレグさんの取り組みは、彼女自身と家族の収入を大幅に向上させただけでなく、家庭の栄養状態をも改善しました。一時は放棄され生産性が低かった土地が、いまや繁栄の象徴へと変貌を遂げたことは、SAAが支援する環境再生型農業の力強さを物語っています。
E-newsletter12月号掲載記事
SAA 出版物のご紹介
E-ニュースレター
"Walking with the Farmer"
SAAの活動動向をレポートしたE-ニュースレターを隔月で発行しています。
E-ニュースレターの日本語翻訳版(PDF)はE-ライブラリーでご覧いただけます。

アニュアルレポート
Annual Report FY2023(英)
2023年度年次報告書(英文)がダウンロードいただけます。