ティグライ州での小麦生産性向上:アムリシャさんの「地域課題解決実践研究(SEP)」による挑戦

アムリシャ・ゲブレジャバーさん(29歳)は、ティグライ州メケレから北へ46キロに位置するウクロの町近郊にある小さな農村で生まれ育ちました。ウクロ農業技術教育大学で作物生産とマーケティングを学んだ後、地域社会に貢献する農業普及員として活動してきました。
2020年には2児の母として家庭を支える傍ら、社会人学生としてメケレ大学に入学し、農業普及学の学士号取得を目指しています。現在、アムリシャさんは「地域課題解決実践研究(SEP)」プログラムに参加し、ツェラ・ウォンベルタ郡メサヌ村で高収量かつ耐病性のある小麦品種「ピカフロー(Picaflor)」を導入し、効率的なすじ蒔き栽培法を普及しています。このSEPは、SAAが大学と連携して実施する農業普及員のリスキル(再スキル習得)プログラムの一環で、現場での課題解決を重視したフィールドワークです。
多くの農家が従来のばらまき式播種を採用しており、この方法では収穫量が平均1haあたり1.6トンにとどまっています。しかし、アムリシャさんの指導による改良品種の導入とすじ蒔きの採用により、収穫量を1haあたり2.8トン(従来比27%増)に引き上げることを目指しています。彼女の取り組みを支援するSAAの協力のもと、2024年10月30日に開催されたフィールド・デーには、多くの農家や大学関係者、農業普及員が参加し、SEP圃場を視察しました
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農家の一人ハドゥ・デスタさんは当初、新しい栽培方法に懐疑的でしたが、アムリシャさんの丁寧な指導の結果、すじ蒔きを導入しました。その結果、昨シーズン比で収穫量が50%増加し、1haあたり3.2トンに達する見込みです。この成功に触発され、他の農家たちもすじ蒔き栽培法に関心を寄せています。
メケレ大学のネガシュ・アレガイ学長は、農家に対し改良品種や肥料、効率的な栽培技術の導入を強く推奨しました。また、アムリシャさんのような普及員学生を支援するSAAと大学の取り組みを高く評価しました。SAAのキャパシティ・ビルディング技術コーディネーターであるテスファエ・ウォルク博士も、SAAの成果やエチオピアにおける農業改革の意義を強調しました。
2025年2月の卒業を控えたアムリシャさんは、灌漑システムと効率的な栽培技術を組み合わせることで、地域全体の小麦生産性をさらに向上させることを目指しています。
※2023年10月にエチオピア政府とTPLF(ティグライ人民解放戦線)が締結した和平合意を受け、SAAは日本財団の助成金を活用してメケレ大学でのSEPプログラムを再開しました。これにより、ティグライ州における農業システムの再建と発展に向けた取り組みが新たな一歩を踏み出しています。
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