SAAの新たな取り組み:ウガンダで商業志向型コミュニティ普及員モデルを採用
2024年8月、ササカワ・アフリカ財団(SAA)ウガンダ事務所は、農業普及サービスの持続可能性と収益性の向上を目的に、従来の「コミュニティ普及員(Community-Based Facilitators: CBF)」モデルから、「商業志向型コミュニティ普及員(Commercial Community-Based Facilitators: CCBF)」モデルへの移行を開始しました。まずは、マドゥドゥおよびキエンダンガラの協同組合を対象に、普及員の意識転換を促す研修が実施され、よりビジネス志向のマインドを醸成し、需要に応じた質の高いサービスをコミュニティ内外の農家に提供できるよう取り組んでいます。
従来のCBFモデルでは、CBFの活動はNGOから支給される手当に支えられ運営されていましたが、CCBFモデルでは普及員が農家に有償サービスを提供し、自身で収益を得られるよう設計されています。普及員のビジネスマインドの醸成と持続的な質の高いサービスの実現により、地域の農業における生産性向上と収益拡大が期待されます。
SAAウガンダ事務所の所長と副所長がリードしたセッションでは、農業バリューチェーンにおける収益性の高い14のサービスが紹介されました。その内容には、植え付けや肥料散布、種子や農薬の販売、作物管理に関するアドバイスなどが含まれています。また、改良技術の導入に積極的な農家との連携を通じて、これらのサービスの価値を広めることの重要性が強調されました。特に、大規模な農地を持つ農家にターゲットを絞り、より経済的に持続可能なサービスを提供する方法も述べられました。
さらに、農村地域の若者の雇用創出や、サービス対象エリアの拡大、複数のバリューチェーンにわたるサービスの多様化も重要なテーマとされました。これにより、種子販売や植え付けサービスといった基本的な活動から、農業保険や金融サービスの提供など高度なサービスに至るまで、幅広い農家のニーズに応えられる体制が整います。
同モデルの持続可能性を担保するためには、ワンストップセンター(One Stop Center Association: OSCA)/協同組合の「融資受入能力」や「資金調達力」を強化することが重要です。OSCAが金融機関から調達した資金を基にCCBFに貸し付けを行うことで、CCBFは事業活動に必要な資材や設備を整備し、収益性の高いサービス提供を実現します。この相互補完的な仕組みにより、OSCAsは農家向けサービスの提供を通じて収益を得る一方で、CCBFは資金などのリソースへのアクセスを得ると共に顧客基盤の拡大という恩恵を享受します。その結果、農家の生産コストが削減され、サービス提供の質も向上し、地域の持続可能な農業発展に寄与することが期待されます。
研修後に行われたSAAの振り返り会議では、実践的なデモンストレーションの実施、情報資料の作成、CCBFモデルのOSCA/協同組合への統合など、今後の実施に向けたアクションが特定されました。主な取り組みとして、CCBFの能力開発、新たな市場ニーズの開拓、契約履行能力の向上、そしてOSCAsが融資を受けられる体制の構築支援が挙げられました。
コミュニティ普及員の商業志向型モデルへの移行は、SAAの農業普及アプローチにおける重要な変革です。SAAはこのモデルをさらに洗練させ、CCBFの能力強化と、OSCAsが新しいアプローチを支援できる融資受入体制の構築に注力していきます。これにより、次世代の農業起業家が地域を牽引し、持続可能な発展へと導くことが期待されます。
SAA 出版物のご紹介
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"Walking with the Farmer"
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アニュアルレポート
Annual Report FY2023(英)
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