ウガンダにおける栄養とジェンダー意識の向上を通じた地域社会のエンパワメント

ウガンダ
2024年10月9日

ウガンダの農村地域では、依然として栄養および食料の安全保障が重要な課題であり、2021年の「世界栄養報告(Global Nutrition Report)」によれば、ウガンダの5歳未満児の28.9%が発育阻害、3.5%が消耗症、生殖年齢の女性の32.8%が貧血であると報告されています。このような状況を受け、SAAは農業と栄養教育を統合する取り組みを推進し、2024年9月30日~10月11日、イシンギロ、ラカイ、ムベンデ、オトゥケ、コレ(オクウェロドット郡およびアリト郡)の各地域で、ワンストップ栄養モデルホーム(One-stop Nutrition Model Homes: OS-NMH)を拠点とした栄養研修を開催しました。

この研修では、栄養不良を減らすために健康的な食生活を推進するとともに、家庭内での栄養改善におけるジェンダーの役割にも焦点を当てました。OS-NMHプログラムは、SAAの戦略「栄養に配慮した農業」に基づき、家庭の食事の多様性を向上させることで、5歳未満児の発育阻害を減少させることを目指しています。この施設では、栄養価の高い作物の栽培やその調理法の指導、子どもの給食や介護、衛生管理、雨水貯蔵、家畜の飼育、食料の保存と加工など、多岐にわたるトレーニングを提供しています。また、保健分野では、予防医療や関連機関への紹介を行い、地域住民の意識向上を図っています。これらの取り組みは、国の児童福祉や女性福祉、保健、教育部門と連携しながら進められています。

栄養研修では、地元の資材を活用した栄養価の高い作物の栽培とその調理法が紹介されました。参加者の一人、イシンギロから参加したハジャラ・ナムドゥさんは、「研修を通じて、野菜や豆類を日常的に取り入れる重要性を学びました。今では家庭菜園で育てた野菜を使い、子どもたちにバランスの取れた食事を提供しています」と話しました。

さらに、参加者たちは栄養不良を克服するための簡単で栄養価の高い料理方法も学びました。SAAは、地域で生産・販売可能なビジネスモデルとして、栄養価の高い複合粉(ミックス粉)の製造を提案しています。この複合粉の製造には、約110米ドルの初期投資が必要と見積もられており、1kgあたり1.2米ドルという手頃な価格で販売される予定で、地域住民の栄養改善に寄与するだけでなく、地元の経済活性化にもつながることが期待されます。

研修では、ジェンダー意識の向上も重要なテーマとして取り上げられました。参加者は、伝統的な性別の役割が食事や栄養もたらす影響について話し合い、農業や調理、家族の栄養管理、収入における責任を男女で共有する重要性が強調されました。ラカイから参加したジョン・ンティンバさんは、「研修のおかげで、妻をサポートする方法や家事を公平に分担する意義を理解できました」と話しています。

SAAウガンダ事務所ジョセフ副所長がラカイ栄養モデルホームで研修を行う様子

本研修を通じて、参加者はジェンダーによる不平等が家族の幸福に及ぼす影響を認識し、男女がより平等に関わることで栄養状態の改善につながることを理解しました。「私たちが変えているのは、食生活ではなく考え方そのものです」とSAAウガンダ事務所のジョゼフ・ベンバ副所長は述べています。NSAコーディネーターのジャクリン・ナムサリシも、「ワンストップ栄養モデルホームは、地域全体の発展を促進する拠点として、家族に知識とリソースを提供しています」と補足しました。

SAAのOS-NMHイニシアティブは、実践的な栄養教育と持続可能な農業を統合し、ウガンダの農村地域における栄養状態と食料安全保障の改善に貢献しています。また、ジェンダー意識の向上や責任の共有を促進し、地域全体に持続的なポジティブな変化をもたらしています。

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