ウガンダにおけるアグロエコロジーと農業普及のデジタル化(e-Extension)推進 ~大学連携によるキャパシティ・ビルディング~
2024年9月22日~10月2日、SAAはウガンダ国フォートポータルに位置するマウンテン・オブ・ザ・ムーン大学と連携し、ルウェンゾリ地域の持続可能な農業の促進を目指す取り組み「ルウェンゾリ・アグロエコロジープロジェクト(AEP11)」の一環として研修を実施しました。同プロジェクトはオーストラリア政府の資金提供を受け、学生、教員、普及員や農家を対象に、研究開発、キャパシティ・ビルディング、情報通信技術(ICT)の融合による持続可能な農業を目指しています。
一連の研修には、大学生、教員、コミュニティ普及員、地元農家など多様な関係者が参加し、ICT(e-エクステンション)の活用や環境再生型農業の理論/実践を学びました。
マウンテン・オブ・ザ・ムーン大学で行われた1週間の研修プログラムは、SAAスタッフによる特別講義から始まりました。この講義では、農業修士課程の学生に対して「環境再生型農業」と「e-エクステンション(デジタル技術を活用した農業普及)」が紹介されました。SAAのジョナサン・カテンデとキョムギシャ・クリスティンが担当した講義では、環境再生型農業が伝統的な農業知識と現代の科学的手法を融合させ、土壌健全性の回復、生物多様性の向上、環境の回復に貢献する実践であること、またそれらは農業生産性を維持しながら実施されることが説明されました。また、農家が直面する課題として、農業技術に対する知識不足、導入時の初期コスト、資材や機械へのアクセスが挙げられました。
SAAのRAコーディネーターであるジョナサン・カテンデは、「環境再生型農業への移行は、ウガンダの農業の未来にとって不可欠です。これらの実践の導入は、収量の増加だけでなく、環境保全にも貢献できます。生産性と持続可能性の両方にとって、win-winの関係です」と述べました。
研修では他に、家畜管理、疾病の早期発見、市場へのアクセスを支援するスマートフォン向けアプリ「Jaguza」などのe-エクステンション・プラットフォームが紹介されました。また、「M-Omulimisa」、「EzyAgric Farmer」、「Akaboxi」、「AgriShare」、「i-KnowFarm」、「Accuweather」といったアプリも紹介され、参加者は、農業普及のデジタル化が農作業を改善し、生産性を向上させる可能性について包括的な理解を得ました。
また、実地研修を通じて、カンガルラ郡の若者グループに播種機や耕運機などの小型の農機具を紹介し、参加者は、機械化による労働力と生産コスト削減の可能性を学びました。SAAのスタッフは、これらの機械が作業効率を向上させ、若者の雇用を生み出し、農業の拡大と生活水準の向上に貢献することを紹介しました。
この研修を通じて、マウンテン・オブ・ザ・ムーン大学とウガンダ・マーティルズ大学(Uganda Martyrs University)のカリキュラムに、農業普及のデジタル化を取り入れる議論が進められました。大学側は、アグロエコロジーの研究や農業普及活動を進める上で、デジタルツールが重要であることを強調しています。両大学では、一部のコースにe-エクステンション・プログラムを導入し、学生が独自のデジタルソリューションを開発できるよう、ICTスキルを高める取り組みを進める計画です。
また、持続可能な農業に関する研修動画を制作するため、カムウェンゲ県カバンビロでアグロエコロジーを実践している農家を訪問しました。この動画は、e-エクステンション・プラットフォームで公開される予定で、アグロエコロジーの実践例を紹介することで、他の農家が同様の手法を取り入れるきっかけになることを目指しています。
SAAは、ルウェンゾリ地域全体の農業関係者が、地域の生態系バランスを保ちながら現代農業の課題に対応するためのスキルと知識を身につけられるよう、成功事例の普及に取り組んでいきます。このアプローチは、農家の生産性を高めるだけでなく、土地や暮らしの持続可能性にも長期的な良い影響をもたらすことが期待されます。
SAA 出版物のご紹介
E-ニュースレター
"Walking with the Farmer"
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アニュアルレポート
Annual Report FY2023(英)
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