エチオピア・ティグライ州におけるプロジェクト「地域課題解決実践研究(SEP)」の視察
ササカワ・アフリカ財団(SAA)の姉妹組織である笹川アフリカ農業普及教育基金(SAFE)は、1996年にエチオピアのハラマヤ大学で農業普及員を対象とした教育プログラムを開始しました(SAFEの活動は2018年にSAAの「キャパシティビルディング事業」に統合)。農家に技術や知識を普及する農業普及員の能力強化を目的としたSAFEカリキュラムは、ハラマヤ大学で始まった後、ハワサ大学、バハルダール大学、ウォロ大学、メケレ大学、ジンマ大学、アルバミンチ大学、サマラ大学、ジジガ大学など多数の教育機関で導入されました。現在まで、2,702名(そのうち女性は23%)の普及員が、SAFEプログラムの核となる「地域課題解決実践研究(Supervised Enterprise Projects: SEP)」に参加しています。
2012年にメケレ大学で開始したSAFEプログラムは、これまでに374人の卒業生を輩出しています。現在、33人の学生(7%が女性)がSEPに参加しており、ティグライ州4郡にまたがる12地区・17村(ケベレ)でプロジェクトを実施しています。しかし、2020-2022年に起きたエチオピア・ティグライ紛争により、2年間の中断を余儀なくされました。停戦合意を受け、今回、SAAエチオピア事務所は、支援が必要な分野を特定するため、2024年8月31日から9月3日にかけて現地を視察し、同大学で進行中のSEPの状況を確認しました。
SAAエチオピア事務所、メケレ大学、および農業局の専門家チームが訪問し、17名の学生(14名は女性)が実施する17のSEPを確認しました。各プロジェクトには少なくとも10名の農家が参加しており、全体で170名の農家が関与し、小麦、大麦、テフ、メイズ(トウモロコシ)、ソルガムの生産に必要な実践的なスキルと知識を習得していました。
本視察により、SEPに参加する学生の大半が、少なくとも0.25haの土地を所有する農家であることが分かりました。特に注目すべきは、赤ちゃんを背負いながら活動する女性学生6名の姿です。社会的、経済的な困難にもかかわらず、母親として、学生として、また普及員としての役割を真摯に果たす彼女たちの献身的姿勢は、高く評価されるべきものです。現在、ケベレの農業普及員の数は必要数の半分以下であり、SEPの学生たちはその不足を補い、より多くの農家に支援を届けています。
視察チームは、定植機、収穫機、トラクターなどの機械の導入と普及を提案し、機械化の取り組みを推進する必要性を指摘しました。また、収穫前にフィールドデーを開催し、伝統農法だけの圃場と改良技術を採用した圃場を比較することを提案しました。
SAA 出版物のご紹介
E-ニュースレター
"Walking with the Farmer"
SAAの活動動向をレポートしたE-ニュースレターを隔月で発行しています。
E-ニュースレターの日本語翻訳版(PDF)はE-ライブラリーでご覧いただけます。
アニュアルレポート
Annual Report FY2023(英)
2023年度年次報告書(英文)がダウンロードいただけます。