協同の力を通じた苦難から成功への旅:アルム・スコヴィアさんの物語
SAAの支援するワンストップセンター(OSCA)バラ女性・青年協同組合との出会い
コレ県バラ地区東部ティーアボロ村に住む42歳のアルム・スコヴィアさんは、2019年に夫を亡くしてから、2人の子供を育てるシングルマザーです。 家族を養うという厳しい現実に直面する中、彼女はバラ女性・青年協同組合に安らぎとチャンスを見出しました。この協同組合は、SAAが日本の外務省(MOFA)と連携して支援する農村バリューチェーンセンターである、ワンストップセンター(OSCA)の一つです。
活動に参加する前に直面していた課題を、アルムさんは鮮明に覚えています。「わずかな土地と、泥とワラでできた2部屋しかない家だけが残され、家族の将来に不安を感じていました。未亡人となった私の肩には、家族を養うという重荷がのしかかっていました。私は日当3,000~4,000UGX(0.8~1.1米ドル)の敷地の掃除や水汲みといった雑用仕事を探して村を回りました。当時は希望が持てず、1日1食の食事がやっとで、子どもたちの教育を保障するのは到底不可能なことのように思えました。」とアルムさんは振り返ります。
しかし仕事を求め、建設中のOSCAの敷地を通りかかったとき、アルムさんはアイーダ・アビア議長と運命的な出会いをしました。家族のために懸命に働くアルムさんの状況に心を動かされたアイーダ議長は、彼女にバラ女性・青年協同組合への参加を勧めたのです。「バラ女性・青年協同組合になじめるかどうか、そもそもこの組織が何なのか理解できるかどうかもわかりませんでしたが、私はとにかく人生を切り開くために必死だったので、グループに参加することにしました。」とアルムさんは語ります。
3袋の落花生からアグリビジネスをスタート
バラ女性・青年協同組合では、アラムさんはアグリビジネスのスキルと洞察力を高めることを目的とした様々な研修プログラムに参加しました。これらの研修の中には、ビジネスとしての農業に関するセッションも含まれており、これにより彼女は、農業を単なる自給自足の手段としてではなく、実行可能なビジネスとしてアプローチするための知識とツールを身につけました。アルムさんは次のように語ります。「作物管理や収穫後処理、そして付加価値について学ぶことで、収穫物すべてに可能性を見出すことができるようになりました。この研修のおかげで、私はビジネスプランを思い描き、さまざまな村の農家から落花生を購入することに焦点を置きました。」
2023年、彼女はバラ女性・青年協同組合の貯蓄グループから60万UGX(154.41米ドル)を借りて起業を果たしました。そして融資の一部の25万UGX(64.34米ドル)で手動の落花生殻むき機を購入しました。残りの資金は、地元の農家から直接落花生を調達するために活用し、協同組合のネットワークを活かすことでコミュニティにおいて互恵的な関係を育みました。
アルムさんはまず、落花生を3袋購入しました。殻をむいた後、合計110キログラムの落花生を手に入れ、1キログラム当たり5,000UGX(1.29米ドル)で販売し、合計で55万UGX(141.54米ドル)の収入を得ました。彼女は利益を再投資し、自身のビジネスの成長を促しました。驚くべきことに、調達からさまざまな取引センターでの販売まで、この全プロセスは1週間という短期間で行われました。地道な努力のもと、彼女は落花生の殻を剥き、市場に出荷し続けました。彼女の生産物の品質は、公正な価格設定と相まって、彼女の村やリラ市の地元消費者の注目と需要を集めました。彼女のビジネスが成功するにつれ、それはアルムさんの安定的な収入源となっただけでなく、雇用の基盤へと発展しました。
家族のニーズと食事の心配からの解放を実現
アルムさんの努力は単なる経済的利益を超え、家族の重要なニーズを満たすだけでなく、外の世界に目を向ける意欲を高めました。安定した収入のおかげで、子供たちの中学校の学費や衣料品などを賄うことができるようになりました。食事の心配から解放されたアルムさんは、1日に1回以上の食事を楽しむことができるようになったと喜んでいます。以前は1日1食しか食事をとれませんでしたが、今では残った落花生を朝食に活用する他、食事の回数を増やし、より多くの種類を食べることができるようになりました。
「私は家族に必要なものを与え、子供たちに教育を受けさせ、1日1食以上の贅沢を楽しむことができるようになりました。」とアルムさんは語ります。さらに、融資を受けた年である2023年末までに、アルムさんは利息を含めて借入金を返済することができました。
アルムさんのビジネス拡大への今後の展望
バラ女性・青年協同組合(OSCA)内でも、実証圃場の手入れや植え付け、収穫作業、OSCA内の清掃など、さまざまな活動に積極的に参加しているアルムさん。貢献の対価として、彼女はささやかな給料を受け取り、時にはOSCAで生産された野菜の恩恵を受けることもあり、それらが彼女の財源をさらに補っています。
アルムさんは将来、落花生を3袋から6袋購入できるようビジネスを拡大することを計画しています。また、お金を貯めてオートバイを購入し、他の農家からの農産物の集荷を容易にすることで、業務の効率化を図りたいと考えています。さらにアルムさんは、落花生の保存と市場価値を高めるため、落花生を保管する倉庫の建設を予定しています。将来的には、野菜生産用の土地を借りて、農業の多様化を目指しています。
地域社会にインスピレーションを与える場としてのワンストップセンター(OSCA)
アルムさんの旅は、日本外務省の資金援助プロジェクトによってもたらされた、農家組合と農家個人のキャパシティビルディングを通じた農業への革新的アプローチの力を実証するものです。バラ女性・青年協同組合はすでにコレ県に進歩と繁栄の種をまいており、人々が変化を受け入れ、生活を向上できるよう働きかけています。
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"Walking with the Farmer"
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Voices from the Field Special Edition 2022
「現地からの声」の記事を特別編集版としてまとめました。