EzyAgricで農作業に変化を

ウガンダ
2024年6月20日
モバイルアプリEzyAgricで農業資材を発注するアイシャさん
モバイルアプリEzyAgricで農業資材を発注するアイシャさん

EzyAgricで農作業に変化を
ウガンダでは人口の80%が農業に頼って生活しています。ムベンデ県マドゥドゥ郡ルテテ村に住む44歳のアイシャ・ナキブレさんは10人の子どもの母親であり、やせた土壌や生産性の低さといったウガンダの小規模農家の多くが直面している問題に悩まされてきました。ササカワ・アフリカ財団(SAA)ウガンダ事務所は、日本財団の資金援助の下、農村における高品質の農業資材(種子や肥料等)へのアクセスを改善することを目的に開発されたデジタル・プラットフォーム「EzyAgric」を推進しています。SAAは、アイシャさんをはじめとするコミュニティ普及員(Community-Based Facilitator:CBF)たちに、EzyAgricが事前インストールされた携帯電話と病害虫を診断するスキルを提供し、彼らがアプリを活用できるようにトレーニングを行いました。この取り組みで、アイシャさんは地域のリーダーへと成長し、カンサンビア教区の300人以上の農家にアプリの使い方を指導するまでになりました。

SAAの介入以前、ムベンデ県の多くの農家は、良質の種子や肥料を手に入れるために遠方のサプライヤーまで出向かざるをえず、高価な偽造品被害に遭うこともしばしばありました。そこでアイシャさんは、カンサンビア区の300以上の農家に、EzyAgricを通じた農業資材の購入を勧めました。2024年の最初のシーズンだけで、彼女はウィードマスターや、ウィードアップ、バイオ・グロウといった農業製品を含む2,600万UGX(6,922米ドル)相当の農業資材の購入を手配しました。この大量注文と7日以内の迅速な配達は、この地域の農業に革命をもたらしました。
「地域の人々のニーズをとりまとめて発注するというこのシステムは画期的です。私たちはコストを節約しながら、高品質の農業資材をタイムリーに手に入れることができています」とアイシャさんは述べています。

アイシャさんから農業資材を購入する農家の様子

Ezyagricを利用した農家のサクセスストーリー
このデジタル支援の効果は絶大でした。7人の子供の母親である41歳のナムリ・ドロシーさんの農園では、作物の収穫量が著しく向上しました。ドロシーさんの豆の収穫量は1エーカー当たり1袋から7袋に、トウモロコシの収穫量は1エーカー当たり4袋から11袋に増加しました。「以前は1エーカーから1袋の豆を収穫するだけでも苦労していましたが、今では適切な農業資材と指導のおかげで7袋を収穫できるようになりました。Ezyagricのおかげで、子供たちの教育のサポートもできています。」とドロシーさんは述べます。

7人の子供の父親である37歳のムニェバンザ・テオさんも大きな恩恵を受けました。SAAを通じて環境再生型農業(RA)の実践と適切な肥料の散布を学んだ彼は、農業資材を購入するために2万UGX(6米ドル)を費やしてムベンデの町まで移動する必要がなくなりました。1エーカー当たりのトウモロコシの収穫量は18袋、インゲンマメの収穫量は15袋、ジャガイモの収穫量は22袋に増加しました。「収穫量が向上したことで、私は地域のロールモデルとなりました。近所の人たちは、どの肥料や農薬を使うべきか、よく私にアドバイスを求めてきます」とテオさんは語ります。
ルテテに住む75歳の農家のアボムギシャ・イノセントさんも同様の効果を目の当たりにしました。アイシャさんを通じて農業資材をタイムリーに入手できるようになったことで、彼のトウモロコシの収穫量は1エーカーあたり10~15袋に増加し、豆の収穫量は1エーカーあたり7袋以上になりました。「農業資材をタイムリーに入手できるようになったことは、大きな違いをもたらしました。今では1エーカーあたり15袋のトウモロコシを収穫できるようになりました。」とイノセントさんは述べます。

周囲の農家を力づけるアイシャさんの役割
アイシャさんのコミュニティ普及員(Community-Based Facilitator:CBF)としての役割は、彼女のマネジメント能力を強化し、農業資材や生産物を調達する能力を向上させ、変革をもたらしました。その結果、農業の生産性が向上し、周囲の何百もの農家に影響を与えました。さらに、彼女はEzyagricの売上から20万UGX(54米ドル)の報酬を得ており、コミュニティにおいてより広範な社会経済的利益を強化しています。「Ezyagricからの副収入は、子どもたちの学費や家計費の足しになります」とアイシャさんは語ります。

アイシャさんは大きな成功を収めましたが、一方で、季節性による農業資材の販売量の少なさや、農家に影響を与える天候不順、そして離職率の高さといった課題も残っています。アイシャさんは、ウガンダにおいて質の高い農業資材へのアクセスを改善する上で、農業資材の仕入れ担当者が果たす役割の重要性を強調し、手頃な価格の小さなパッケージを開発することで、農村部の農家の需要に効果的に応えることができると提案しています。

農家にポジティブな変化をもたらすSAAの取り組み
Ezyagricを通じて農村における農業資材へのアクセスを改善するSAAの取り組みは、デジタルツールとコミュニティベースの研修や支援を組み合わせることがいかに効果的か示しています。。この地域の農家は収穫を増やし、生活を向上させています。このモデルは、ウガンダだけでなくアフリカ各地の農業コミュニティを変革する可能性を秘めており、より広範囲での応用が期待されています。SAAは今後も、より多くの農家にポジティブな変化をもたらすため、さらなる改善と拡大に取り組んでいきます。
 

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