病害虫防除にバーミウォッシュ散布の効果が表れる

エチオピア
2024年4月30日

エチオピア・メケット郡の2村(コキット/タグバ・メスケル)では、農家がバーミウォッシュ(ミミズと有機層を含む土壌に水を通して滲出された液体)を散布し、作物の病害虫防除と小麦の生産量向上に成果が表れています。

バーミウォッシュは、ミミズの粘液分泌物と、バーミコンポスト(ミミズコンポスト)の堆肥化プロセスで滲出される液肥が混合された液体です。バーミウォッシュの成分は、コンポストに投入する有機物によって違いはありますが、一般的には、バクテリア、粘液、ビタミン、ミネラル、ホルモン、酵素、抗菌ペプチドが豊富に含まれています。ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、これらの成分により、さまざまな病害虫を抑制し、作物の成長と生産性向上に貢献するバーミウォッシュを普及してきました。メケット地区では、生育初期の小麦に、ヨトウムシやさび病による被害が発生していましたが、バーミウォッシュの散布で抑制効果が表れています。種子を保護するコーティング剤は、アクセスやコスト面の課題から利用は限られており、農家は病害虫の被害を緩和するため、より多くの種を蒔くことで収量を確保してきました。

2023年のシーズン前研修では、SAAのトレーニングを受けた農業普及員と2村の専門員が、農家にバーミウォッシュの製造/使用方法を指導し、それぞれの農家研修センターにバーミウォッシュ・ユニットを設置しました。プラスチック製の樽(350L)の底に砂利と砂のフィルター層(砂利20cm、砂20cm)を敷き、その上に有機物とミミズの層を入れます。毎日5Lの水を樽上部の開口部から散布し、17日目以降に滲出された茶色い液体を採取して使用しました。作物生産の1シーズンで、150.25Lのバーミウォッシュ(タグバ・メスケル村では74.25 L、コキット村では76L)を生産することができました。

バーミウォッシュは、ヨトウムシ対策として小麦の種子処理に、さび病抑制を目的に葉面散布されました。2村のホスト農家と地域の種子生産組合員には、1人1Lのバーミウォッシュが配布され、植え付け前の小麦種子15kgを処理しました。農家、普及員共に、種子処理を施した小麦は、未処理のものに比べて、定着率の改善が見られたと報告しています。

さらに、コキット村の農家研修センターでは、2か所の小麦圃場100㎡を対象に、バーミウォッシュ40L/haを散布した場合と、殺菌剤0.5L/ha(Tilt 250 EC)を用いた場合において、さび病の防除効果を確認しました。両圃場ともさび病発生後の開花期に散布し、両処理とも防除・抑制効果が認められました。一方、無処理の圃場はさび病の影響を強く受けました。

この観察結果から、バーミウォッシュは、費用対効果と利用性に優れ、環境再生型農業に適した生物農薬であることが確認されました。今後、バーミウォッシュの利用をさらに拡大するには、コンポストに投入する有機物の配合や有効性に関する更なる研究が不可欠です。

SAA E-Newsletter 2024年4月号「特集:エチオピアの活動」より転載

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