生物学的栄養強化作物を通じたコミュニティの栄養改善:ウガンダ・ムベンデ地区の農家グループの活動
2021年の世界栄養報告によると、ウガンダでは5歳未満の子どもの28.9%が発育不良、3.5%が年齢不相応の低体重とされ、*再生産年齢(15~49歳)の女性の32.8%が貧血に悩まされています。米英の大学調査チームによると、5歳未満の子どもの8.9%はビタミンA欠乏症であるというデータもあります。ウガンダの低出生体重児の出生率の目標達成に向けた進捗に関するデータは不十分で、十分な患者数のデータもありません。
ササカワ・アフリカ財団は、栄養改善のための取り組みとして「栄養に配慮した農業」を柱に、ウガンダの小規模農家が短期的・長期的に*栄養不良を防ぐことができるように支援を行っています。中でも、HarvestPlusと共同で推進しているのが、鉄分強化豆 (High Iron Rich Beans)やビタミンAを多く含むオレンジスイートポテト(Orange Fleshed Sweet Potatoes)といった、栄養豊富な*生物学的栄養強化産物の栽培と消費です。ムベンデ地区のンコバザンボゴ農家グループはこの活動を支持しているグループの一つで、実際に鉄分強化豆とオレンジスイートポテトが栄養不良や低体重の子ども、そして再生産年齢の女性たちに食べられるようになりました。農家グループのリーダー、中でも特に女性リーダーたちは、栄養管理の計画や、食事の準備、調理方法、保存の仕方など、育児や介護に役立つ好例を学んでいます。
ンコバザンボゴ農家グループの女性リーダー、アイシャ・ナキブレさんは、研修のおかげで地域の人々が皆、子どもに与えるための栄養ある食事について学ぶことができたと感謝の意を述べました。「研修を通じて、様々な食品を組み合わせてバランスの取れた食事を作る方法を身に着けることができました。私自身も5児の母なので、教えていただいた技術や道具に感謝して実践していきたいと思います。」
鉄分強化豆とオレンジスイートポテトは、多くの子どもたちの栄養不良を防ぎ、授乳期の母親の鉄分不足を解消するのにも役立っています。「私たちの村では、今でこそ低体重や栄養不良の子どもを見かけることはめったにありませんが、4年前は違いました」とアイシャさんは語ります。
アイシャさんによるとこの鉄分強化豆は味も良く、短時間で調理ができるので、炭や薪の費用を節約できるそうです。昨シーズン、彼女の農家グループでは11袋の豆が収穫されました。「11袋のうち9袋を売り、その売上416ドルを貯蓄に回しました。残りの2袋は自家消費用にして、そのうち50kgは次の植え付け用に残してあります。」
ササカワ・アフリカ財団では今後も技術協力を通じて、脆弱な状況に置かれているコミュニティ支援に取り組んでいきます。「隠れた飢餓」とも呼ばれているビタミンやミネラルなどの微量栄養素不足の問題に対し、COVID-19パンデミックのピーク時には支援地域の農家に栄養価の高い作物を支給しました。
*再生産年齢 (reproductive ages) とは、個人が親になりうる年齢を意味し、特に女性が妊娠・出産できる年齢期間を指す。
*生物学的栄養強化(biofortification)とは、微量栄養素欠乏症に対してサプリメントの摂取や食品への栄養素添加ではなく、その土地で食されている作物を微量栄養素含有量の高い作物に置き換えることで、微量栄養素の摂取を促す取り組み。栄養的に優れているだけでなく、美味しく調理上の要件を満たし、害虫、病気、干ばつへの耐性など農家が求める農業上の特徴も併せ持っている。
(参考 JIRCAS「生物学的栄養強化(biofortification):63か国4200万人以上に裨益」https://www.jircas.go.jp/ja/program/program_d/blog/20200909)
*栄養不良には、低栄養(消耗、発育不全、低体重)、ビタミンまたはミネラルの過不足、過体重、肥満、そしてこれらの結果生じる食生活に起因する非伝染性疾患が含まれる。
(参考 公益社団法人日本WHO協会「栄養不良」https://japan-who.or.jp/factsheets/factsheets_type/malnutrition/)
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