ナイジェリアで小規模農家向けのAIデジタル指導プラットフォームを始動
2026年5月25日、ナイジェリア北東部に位置するゴンベ州にあるゴンベ州農業開発プログラム(GSADP)の会議ホールにて「ナイジェリア官民連携AI活用型デジタル指導計画(NPPP-AI-DAP)」プロジェクトのもとでの連携を示す覚書(MoU)が締結されました。このプロジェクトは、人工知能(AI)とデジタル技術を活用して、小規模農家にパーソナライズされた地域固有の指導サービスを提供し、ナイジェリアで深刻化する農業普及員の不足(普及ギャップ)の解消を目指すものです。
カドゥナ州とオヨ州での広範な事前調査を経て、ゴンベ州は正式にこの取り組みに参画する2番目の州となりました。ゲイツ財団が資金を提供し、農業普及サービスのためのアフリカフォーラム(AFAAS)が招集したこのプロジェクトは、公的機関と民間部門の専門知識を結集し、ナイジェリアにおける農業指導サービスの提供体制を革新するものです。
本プロジェクトは複数のパートナーからなる共同体(コンソーシアム)によって実施されており、ササカワ・アフリカ財団(SAA)ナイジェリア事務所はゴンベ州、オヨ州、カドゥナ州における州レベルの関与を主導しています。この役割において、SAAは「アフリカ・プラクティス(Africa Practice)」および「サヘル・コンサルティング(Sahel Consulting)」と協力して州レベルの覚書締結を推進しています。また、「エクステンション・アフリカ(Extension Africa)」が仲介パートナーおよびプロダクト・オーナーを務めています。
ナイジェリアの普及ギャップへの対処
ナイジェリアの小規模農家は、農業指導サービスの不足に直面し続けています。国内の多くの地域では、公的な農業普及員1人が最大25,000人の農家を担当しており、これは国連食糧農業機関(FAO)が推奨する「普及員1人あたり農家1,000人」という比率を大幅に上回っています。
人員の不足に加え、指導内容が一般的すぎて、ナイジェリア全土の農家が直面している多様な農地生態学的条件に対応できていないことが多々あります。その結果、数百万人もの生産者が、生産性や気候変動への適応力を向上させるために必要な、タイムリーで地域に即した、実践的な情報にアクセスできずにいます。
NPPP-AI-DAPプロジェクトは、低コストかつ大規模に、カスタマイズされた指導サービスを農家に直接届けることができる、拡張性の高いデジタルプラットフォームを通じて、これらの課題を解決することを目指しています。
AIを活用した指導プラットフォームの構築
この取り組みでは、人工知能、空間分析、ユーザーセグメンテーションを活用し、さまざまなカテゴリーの農家に合わせた指導・ソリューションを創出します。
農家のペルソナ(典型的なユーザー像)の作成や、地域に合わせたユーザーインターフェースの開発を通じて、識字率、年齢、性別、デジタルスキルの度合いに関わらず、誰もが利用しやすいプラットフォームを設計します。また、このシステムは、より強固なデータ共有メカニズムと統合された技術アーキテクチャを確立し、エビデンスに基づいた意思決定を支援します。
AIによる推奨機能と既存の普及システムを組み合わせることで、このプラットフォームは農業指導サービスの到達範囲と効果を高め、より的確な経営判断をサポートすることが期待されています。
先頭を走るゴンベ州
今回のパートナーシップ締結により、ゴンベ州はナイジェリアにおけるデジタル農業イノベーションの最前線に立つこととなりました。この合意に基づき、州内では専用の「三者調整委員会」が設置され、プラットフォームの運用管理や規制の整備を進めながら、中長期的なプロジェクトの実施を支えていく体制が整えられます。
また、政府の農業当局も、専門の支援ダッシュボード、データガバナンスプロトコル、そして運用コストやリスク分担モデルをまとめた投資ロードマップの恩恵を受けることができます。これらのツールは、資源配分の最適化、AIが生成したコンテンツの検証、そして州内の農村コミュニティに対する農業指導サービスの長期的な持続可能性の確保に役立てます。

ゴンベ州における覚書調印式において、演説するSAAナイジェリア副所長のアブドゥルハミド・ガンボ博士。
農家へより良いサービスを
調印式において、ゴドウィン・アトサーSAAナイジェリア事務所所長(副所長のアブドゥルハミド・ガンボが代読)は、このプロジェクトが持つ変革の可能性を強調しました。アブドゥルハミドは、この取り組みが、日本財団からの資金援助を受け、過去35年間にわたり19の州で州農業省と連携・支援してきたSAAの農業普及・指導サービスにおける長年の実績に基づいているとして、「このプロジェクトは、農家が不可欠な普及・指導サービスにアクセスする手段を根本的に改善し、農業部門を変革するための極めて重要な鍵となります」と述べました。また、「このAI活用型プラットフォームは、既存の人間によるインフラに代わるものではなく、それを強力に補完するものです。プラットフォームが拡大するにつれ、普及員が業務をデジタル化し、活動範囲を広げることができるようになるため、実質的な普及員対農家の比率は大幅に改善されます。AIと従来の普及アプローチを融合させることで、このギャップを埋め、これまで十分な支援を受けられなかった数百万人の小規模農家が、それぞれの営農ニーズに合わせた、タイムリーで低コストな、地域固有の指導を受けられるようにします」と話しました。
同イベントで連邦農業・食料安全保障省 (FMAFS)の常任書記官であるアフメド・サイード・グリ氏は、このプラットフォームが州内の農業生産性にもたらす潜在的な影響について、「この覚書への署名は、ゴンベ州の農業にとって大きな節目となります。私たちはデジタルイノベーションを受け入れ、農家を力づけ、食料生産を増大させていきます」と語り、「当州の普及システムが限界に達している中、このAI駆動型プラットフォームは、普及員と農家のギャップを効率的に埋め、生産性を向上させ、生計を強化し、ゴンベ州を近代的でデータ駆動型の農業開発のリーダーとして位置づけるのに役立つでしょう」と期待を示しました。
さらにアフメド氏は、州の普及システムを強化し、食料・栄養・収入の安全保障の達成に貢献してきた、ゴンベ州政府とSAAとの長年の協力関係を称賛しました。
パートナーシップによるイノベーションの拡大
調印式後、エクステンション・アフリカの最高経営責任者(CEO)であるヤハヤ・タジュディーン氏は、ナイジェリアにおけるデジタル普及サービスの開発を可能にする環境作りに協力・支援したSAAとその他のコンソーシアムパートナーに対し、感謝の意を表しました。
プロジェクトの実施状況について、NPPP-AI-DAPのプロジェクトリードであるSAAのビデミ・アジボラ博士は、カドゥナ州とゴンベ州において、運用のロードマップ、多言語プロトタイプ、データ共有合意がすでに整っていることを説明し、このプロジェクトが、国家の食料安全保障と農村の繁栄を推進するために、官民連携がどのように最先端技術を成功裏に導入できるかを示す実例になっていると指摘しました。
NPPP-AI-DAPプロジェクトは、官民連携が最先端技術をどのように役立て、農業指導システムを強化し、農家の情報へのアクセスを改善し、国家の食料安全保障、農業生産性、そして農村の繁栄に貢献できるかの実証を目指します。
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