ウガンダにおける環境再生型農業・バイオ炭開発イニシアティブ事業のキック・オフ
2025年12月3日、ササカワ・アフリカ財団(SAA)はウガンダ事務所にて、「ウガンダにおけるバイオ炭活用を組み合わせた環境再生型農業開発プロジェクト」のキックオフ会合を開催しました。この事業は、日本政府がアフリカ開発銀行を通じて支援する「開発政策・人材育成基金(PHRDG)」により実施される3年間の取り組みで、総事業費は100万米ドルです。環境再生型農業と機能性バイオ炭技術の活用を通じて、小規模農家の生産性向上、土壌健全性の改善、食料安全保障の強化、ならびに雇用創出を持続的に実現することを目的としています。
今回の会合には、事業実施パートナーであるウガンダのマケレレ大学、マウンテンズ・オブ・ザ・ムーン大学、日本の鳥取大学、COTS COTS社に加え、アフリカ開発銀行の代表が出席しました。会合では、プロジェクトの全体目的を共有した上で、各機関の役割分担、年次作業計画、認証プロセス、2026~2027年の事業期間における研究の重点分野について意見交換が行われました。
冒頭挨拶で、SAAウガンダ事務所のロバート・アニャン所長は、ウガンダにおいて劣化が進む土壌の回復が喫緊の課題であることを強調するとともに、バイオ炭を研究段階にとどめることなく、農家の実践へと迅速に移行させる必要性を述べました。また、このプロジェクトが、バイオ炭の商業化、農業普及システムの強化、さらにはカーボンクレジットを通じた新たな機会の創出につながる可能性を有している点を強調しました。
SAA本部からは、事業課の澤田怜奈職員がプロジェクトの全体像を説明し、土壌健全性の改善、作物収量の向上、炭素隔離におけるバイオ炭の戦略的役割を紹介しました。また、研究、生産、普及の各段階における大学およびSAAのワンストップセンター(OSCA)の役割についても説明しました。
アフリカ開発銀行のアサフ・ヌワギラ氏は、各パートナーによるこれまでの技術的準備に言及するとともに、円滑な事業実施に向けた同行の継続的な関与について述べました。その上で、情報共有体制の強化、年次作業計画サイクルの着実な運用、認証プロセスの円滑化、ならびに事業初期段階からの政府関与の重要性を指摘しました。また、科学的知見が農家を中心とした実践的な成果へとつながり、ウガンダにおける気候スマート農業の推進に寄与することへの期待を示しました。
マケレレ大学のピーター・エバニャット教授は、技術発表を通じて、地域特性に即した土壌および作物研究の重要性に触れるとともに、バイオ炭の機能高度化や土壌微生物相互作用に関する理解を深める必要性を指摘しました。さらに、炭素隔離に関する研究や養分特性の分析に加え、ジェンダーや若者の視点を取り入れた社会経済評価が、農家による効果的かつ持続的な導入を促す上で重要であるとの認識を示しました。
マウンテンズ・オブ・ザ・ムーン大学からは、ワカル・コスマス博士が、低コスト炭化装置、ピット方式、ならびに籾殻やトウモロコシ残渣を用いた学生主導のバイオ炭実験など、進行中の技術革新を紹介しました。併せて、現在開発中のモバイル型農業普及ツールや、有機リン酸肥料、養分強化型バイオ炭、液体バイオ炭製などのバイオ炭関連技術を紹介しました。
鳥取大学の西原英治教授は、機能性バイオ炭の開発に関する手法をはじめ、室内および圃場試験の実施、熱分解条件の最適化、ならびにカーボンクレジット認証に向けた体制構築について説明しました。併せて、大学間の研究連携の強化や土壌健全性マッピングの高度化、土壌タイプや作物特性に応じたバイオ炭配合の必要性について言及しました。
小規模から商業規模までのバイオ炭生産技術については、エマニュエル・ンガビラノ氏が、Eco pyro TLDU Reactor、Funnel System、Multi-Bio-Kiln などの熱分解技術を紹介しました。各技術について、効率性や安全性、生産能力、副産物の商業化の可能性といった特徴が説明されるとともに、これらのシステムが所得創出や若者雇用の促進、環境再生型農業の普及拡大に寄与し得る点が示されました。
COTS COTS社の宮下文子氏は、Carbon Standards International(CSI)の要件に対応した炭化装置の開発における同社の取り組みについて説明しました。こうした装置は、農家や協同組合、加工業者が国際的なカーボンクレジット市場に参加するための基盤となることが期待されています。併せて、地域条件に即した装置設計の重要性や、バイオマス資源の競合への配慮、民間主導の認証を通じた持続可能な運営の必要性についても言及しました。
一連の議論を通じて、参加者は、中部・東部・西部地域における小規模から大規模までの農家協同組合を対象に、地域特性に即したバイオ炭システムを構築するとともに、認証されたバイオ炭実践を通じて、ウガンダにおける国際基準に基づくカーボンクレジットの創出体制を強化するという長期的な方向性が確認されました。
閉会にあたり、SAA本部の菊池翔太朗事業課長は、これまでの準備状況に触れつつ、本プロジェクトが農村コミュニティにおいて実践的な成果につながることへの期待を述べました。続いて、アニャン事務所長は、将来的に農産物が「カーボンスマート」認証を通じて付加価値を高め、収量向上やカーボンクレジット収入、さらには市場機会の拡大につながることを目指すSAAの考え方を共有しました。多様な機関との連携のもと、本プロジェクトは、ウガンダにおける気候スマート農業の推進と農家の生計向上に寄与することが期待されています。
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