アフリカの土壌劣化は、農業の未来を根底から脅かし、生産性の低下、食料安全保障の不安、そして地域社会のレジリエンス低下を引き起こしています。こうした課題に対応するため、アフリカ連合委員会が立ち上げ、アフリカ農業研究フォーラム（FARA）がホストを務める「アフリカ土壌イニシアティブ（SIA）」は、持続可能な土壌管理に向けた大陸規模の統一枠組みを提示しました。さらに、それを現場で実現するための具体的な行動計画として、「アフリカ肥料・土壌健全性行動計画（AFSH-AP 2023〜2033）」が策定されました。

しかし、「戦略」だけでは土壌は変わりません。

実行の最前線を担う「C4SEAS」：現場にインパクトを届ける連合体
こうした政策を現場の実践につなげる上で、農業普及システムが果たす役割は極めて重要です。これを踏まえ、「農業普及・アドバイザリーサービス強化連合（C4SEAS）」が誕生しました。この汎アフリカ連合体は、農業普及サービスのためのアフリカフォーラム（AFAAS）が主導し、ササカワ・アフリカ財団（SAA）が調整役を担っています。科学的知見を小規模農家の行動へとつなぐ“橋渡し役”として、現場に変化をもたらすことを目指しています。

SAAで環境再生型農業（RA）の主任を務め、C4SEASのコーディネーターでもあるステラ・カビリ氏は次のように語ります。

「農業普及に失敗すれば、行動計画全体が失敗します。近道はありません。スケールアップは、科学であり戦略です。」

C4SEASの特長とは？
C4SEASは、単なる調整機関ではなく、SAAをファシリテーターとし、農業政策・研究分野の先進的な機関を結集しています。

パートナーには、AGRA、IFAD、AFAP、CABI、World Soil Health/ISRIC、TAAT/CGIAR、EAFF、RUFORUMなどが名を連ね、現場実装の中核として、技術的助言を実践的な変化へと導く役割を果たしています。

C4SEASが進める4つの戦略的活動は以下のとおりです：

1. 人材育成
   マケレレ大学（ウガンダ）、セグー大学（マリ）、LUANAR大学（マラウイ）などの地域拠点を通じて、土壌に精通した新世代の農業普及員を育成。
2. デジタル・イノベーション
   AIと地域データを活用し、通信環境が整っていない地域でも適切なアドバイスを届ける統合型ツールを提供。
3. 政策整合
   ウガンダ、ナイジェリア、エチオピアなどで、AFSH-APと整合する農業普及サービス（AEAS）への投資計画の策定を支援。
4. 知識共有と可視化
   SAAは現場から得た知見を政策立案に反映させ、農民の声が政策に反映されるよう支援。

ネットワークからムーブメントへ
C4SEASは単なるネットワークにとどまらず、「行動のムーブメント」です。これまでに17か国で250万人以上の農家と関わってきたSAAの実績を背景に、このムーブメントは確かな成果――健全な土壌、豊かな収穫、そして強靭な農村社会――を現実のものにしようとしています。

東アフリカ農業者連盟（EAFF） のエリザベス・ンシマダラ会長は、最近の会合で次のように訴えました。

「私たちは、専門家が専門家とだけ話す“シンクタンク”であってはなりません。これは“アクションのためのムーブメント”です。農家がこの取り組みの成果を、自らの土壌、収穫、そして収入の中に感じられるようにしなければなりません。」

これから：スピード感と目的意識をもって
C4SEASは今後、初期成果の創出、認定トレーナーの育成、国レベルでの対話促進、統合型デジタルツールの整備を一層加速させていきます。そして同時に、長期的な制度改革に向けた基盤づくりにも着手します。

SAAのリーダーシップのもと、C4SEASは、アフリカにおける土壌再生の取り組みを単なる技術支援にとどめず、地域全体を動かす“推進エンジン”としての役割を果たしていきます。

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