アフリカの土壌再生を目指して:ウガンダで環境再生型農業技術集の出版イベントを開催
2025年1月10日、ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、アフリカにおける土壌劣化対策の最新イニシアティブとして、書籍"A Basket of Regenerative Agriculture Technologies for the Improvement of Soil Health in Africa 50 Technologies for On-farm Demonstrations"を発表しました。SAAで環境再生型農業リード・スペシャリストを務めるステラ・カビリ博士が執筆した本書は、アフリカ全土の土壌の健全性を改善するための50の実践的で手頃な技術を紹介しています。カンパラにあるSAAウガンダ事務所で開催された本イベントには、全国のSAA支援地域から有識者、パートナー、農家など80名を超える参加者が集まりました。
開会の挨拶:アクションの呼びかけ
ロバート・アニャンSAAウガンダ事務所長は開会の挨拶の中で、まず、昨年末に逝去したSAAの共同創設者であるジミー・カーター元米国大統領に心からの哀悼の意を表しました。そして、アフリカの農業の歩みを振り返り、次のように述べました。「環境再生型農業に力を入れれば、アフリカは自給自足が可能になります。アフリカの土壌はもはや以前と同じではありません。最近ではミミズを1匹も見かけなくなり、これは土壌が枯渇しているサインです。」
SAAの北中理事長は、持続可能性と農業技術普及のデジタル化の関連性を強調しました。「アフリカの農業は、気候変動により厳しい状況に直面しています。しかし、デジタルイノベーションに支えられた持続可能な取り組みが、解決への道筋を切り開きます」と述べました。また、アフリカの小規模農家を30年以上にわたって支援してきたSAAの実績と、2021年以降の環境再生型農業の積極的な推進を強調しました。また、農業に革新をもたらし、若者の雇用を促進する上で、人工知能(AI)がいかに重要であるかを力説しました。
変化の担い手としての若者
SAAの元会長であり、現在名誉顧問を務めるルース・オニアンゴ教授は、アフリカの農業における若者の変革的役割を強調しました。「若者は私たちの未来であるだけでなく、現在でもある」と述べ、若者が農業を収益性の高いビジネスとして、また発展への手段として捉え、積極的に取り組むよう促しました。また、農家のエンパワメント、強靭なフードシステムの構築、農業技術の向上に対するSAAの継続的な取り組みを改めてアピールしました。
サラ・ムビ・エナウ・アニャン・アグボール・アフリカ連合委員会(AUC)人的資源・科学・技術委員は、アフリカ連合の「アジェンダ2063」と若者による農業への積極的な参加を関連付けた力強いスピーチを行い、資金へのアクセス、キャパシティビルディング、政策改革、技術革新など、特に重点的に取り組むべき分野を挙げました。「アフリカの若年層人口は、農業の潜在能力を解き放つカギを握っています」と彼女は述べました。
知識とツールで農家をエンパワメントする
Operation Wealth Creationの主任アドバイザーであるフィリップ・イドロ大使は、急速に劣化するウガンダの土壌に対する懸念を表しました。 環境再生型農業イニシアティブの成功を確実にするためには、農業改良普及員のトレーニングが重要であると強調しました。 「アフリカの土壌を再生し、その未来を確かなものにするためには、農家が知識、ツール、支援を得ることが必要です」と訴えました。
エドワード・カテンデ博士は、地域開発モデルを通じて改良普及システムのギャップを埋める上で、商業志向型コミュニティ普及員(CCBF)が重要な役割を果たしていると強調しました。これらの普及員は、ウェンディ(モバイルマネーサービス)のようなツールに関する研修、投入資材、改良普及サービス、ビジネス開発、市場を農家に提供し、農家と不可欠なサービスとを直接的に結びつけることで、生産性と持続可能性を高めています。
協調的な取り組みとイノベーション
SAAのメル・オロウチ戦略パートナーシップ事務所長は、環境再生型農業技術におけるパートナーシップと実証プロセスの重要性を強調しました。「これは、劣化した土壌を回復させながら、農家を貧困から救い出す取り組みです」と述べ、アフリカ連合、研究機関、そして農家との協力関係を挙げながら説明しました。
SAAのステラ・カビリ環境再生型農業リード・スペシャリストは、アフリカの土壌劣化の危機を食い止めるための農家中心のガイドとして、自身の著書を紹介します。「マルチングから作物の多様化まで、この本に書かれた11の原則は、土壌の肥沃度を高め、浸食を減らし、気候変動の影響を緩和することを目的としています」と説明しました。SAAウガンダ事務所の成功を強調し、環境再生型農業により、農家の化学肥料への依存を減少させながら、コーヒーとバナナの収穫量を50%以上増加することに成功したと報告しました。「私たちの土壌は回復力がありますが、手入れをしなければその力は発揮されません。この本は、アフリカの農地が何世代にもわたって生産性を維持するためのツールを提供します」と述べました。
著書を紹介するステラ・カビリ博士
現場からの声
イベントでは、農家とCCBFがそれぞれの経験を共有しました。ムベンデ地区の農家、トレーナー、起業家であるジャスティン・ナヤガ・カトゥシャベさんは、土壌の肥沃度を向上させ、生産コストを削減するシンプルな機械化のポテンシャルを強調しました。 また、CCBFは、これらの技術の効果的な利用について農家をトレーニングする上で、重要な役割を果たしていると説明しました。 「多くの農家は、当初これらの技術革新の価値に気づいていませんでしたが、今ではシンプルな機械化が農作業をどのように変え、コストを削減できるかを実感しています」と指摘しました。
CCBFのメンバーであり、ZIKA(Zirobwe Kalagala Youth Multipurpose Cooperative)のリーダーであるアブドゥ・セリアジさんは、1,000人以上の農家に対して機械化、散布サービス、ガーデンマッピングなどのデジタルツールを提供してきた経験を共有しました。 「機械化は農業を変えつつあります。私たちは、若者を核とすれば、国家開発計画、アジェンダ2063、持続可能な開発目標(SDGs)を達成することができます」と述べました。
SAAチームによって寄贈されたRA機材を持つCCBF
実用的な機材デモンストレーションと寄贈
本イベントのもう一つのハイライトは、参加者が実際に体験できるデモンストレーションで、ソーラー灌漑システム、電動耕運機、ジャブプランターなどの革新的な機材が紹介され、参加者はこれらの持続可能な技術について実践的に学びました。
また、SAAウガンダ事務所は、手動播種器電動噴霧器、手動噴霧器、電動除草機などの重要な環境再生型農業の機材をCCBFsに寄贈し、彼らの活動を支援しました。
本イベントは、土壌劣化への取り組みと持続可能なソリューションによる農家のエンパワメントにおいて画期的なマイルストーンとなりました。そして、アフリカの農業を次世代のために活性化するというSAAの取り組みを再確認するものでした。
正しい手動播種器の使用方法に関するデモンストレーション
本書(英語)は以下のリンクよりダウンロードいただけます。
SAA 出版物のご紹介
E-ニュースレター
"Walking with the Farmer"
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E-ニュースレターの日本語翻訳版(PDF)はE-ライブラリーでご覧いただけます。
アニュアルレポート
Annual Report FY2023(英)
2023年度年次報告書(英文)がダウンロードいただけます。