この度、ササカワ・アフリカ財団（SAA）は、アフリカにおける土壌の健全性改善のための環境再生型農業技術集である“A Basket of Regenerative Agriculture Technologies for the Improvement of Soil Health in Africa 50 Technologies for On-farm Demonstrations”を刊行しました。この包括的な技術集は、サブサハラアフリカ（SSA）全域で土壌の健全性を高め、農業生産性を向上させることを目的としており、農場での実践に適した50の確立された技術にフォーカスしています。

本書の目的
土壌の健全性は持続可能な農業と食料安全保障を支えるものですが、サブサハラアフリカ（SSA）の農地の65%は深刻な土壌劣化に直面しており、気候変動の影響によって農家の生活や生態系が脅かされています。本書はこれらの差し迫った問題に取り組み、固有の知識と最先端の土壌科学を統合した実用的かつ汎用性の高いソリューションを提供します。

本書の内容
本書では、以下の点に焦点を当てた環境再生型農業の技術を紹介しています。

• 土壌有機物レベルの向上
• 水の保全と管理の促進
• 総合的な方法による土壌健全性の改善
• アフリカの土壌特有の課題への対応

本書で紹介する技術は、適正農業規範（GAP）と状況に応じた肥料の使用を推奨するように考えられており、農業改良普及員が小規模農家を効果的に支援できるようにデザインされています。

イノベーションで農家を支援
本書は、SAAの「農家のための学習プラットフォーム（Farmer Learning Platform：FLP）」から得られた知見を基に、エチオピア、マリ、ウガンダ、ナイジェリアにおける現場での経験をベースとしています。 それぞれの技術は「バスケット」の一部として紹介されており、農家はそれぞれの土壌の種類、気候、資源に適した農法を選択し、導入することができます。

今こそ行動を
アフリカの土壌を再生することは、持続可能な農業と経済成長にとって不可欠です。劣化した土地を再生することで、初期投資の5倍から30倍の利益を生み出すことができるという研究結果もあります。この技術集に記載された農法により、アフリカにおける強靭なフードシステムの構築、農家の生活改善、そしてアフリカ全土の農村コミュニティの強化を実現することが可能になります。

著者について
ステラ・カビリ博士は、2022年よりSAAで環境再生型農業リード・スペシャリストを務めています。生産生態学と資源保全学を専門としており、オランダのワーゲニンゲン大学で博士号、同じくオランダのトゥエンテ大学で地理情報科学と地球観測の修士号、ウガンダのマケレレ大学で農学の学士号を取得しています。
クライメート・スマート・アグリカルチャー(Climate-Smart Agriculture: CSA)技術の拡大、持続可能な栄養素の促進、植物栄養におけるネガティブエミッションの達成に焦点を当てた研究など、幅広い経験を有しています。 SAAに参加する以前は、ウガンダの国立農業研究機構（NARO）にてシニア研究員、技術普及・アウトリーチプログラムリーダー、研究部長を歴任しました。
SAAでの業務に加え、国連アフリカ経済委員会の支援を受け、アフリカ科学アカデミーの気候研究開発（CR4D）のポストドクターも務めています。また、アフリカ土壌イニシアティブ（SIA）の下、農業改良普及、アドバイザリーサービス、人材開発支援のコーディネーターも務めています。また、TERRA Africa諮問委員会のメンバーとして、アフリカに適した環境再生型農業の構築に貢献しています。

本書（英語）は以下のリンクよりダウンロードいただけます。

＜関連動画＞ササカワ・アフリカ財団（SAA）エチオピアにおける環境再生型農業普及の取り組み（日本語字幕付き）

＜ダウンロード＞A Basket of Regenerative Agriculture Technologies for the Improvement of Soil Health in Africa 50 Technologies for On-farm Demonstrations