アフリカ肥料・土壌健全性サミット(Africa Fertilizer and Soil Health Summit)に参加しました

イベント
2024年5月29日
サミットのロゴの前で集合写真を撮るSAAチーム
サミットのロゴの前で集合写真を撮るSAAチーム

土壌の健全性と肥料使用に関する統一のビジョン

2024年5月7日から9日にかけてナイロビで開催されたアフリカ肥料・土壌健全性サミット(AFSHS)では、アフリカの農業生産性と持続可能性に影響を及ぼす重要な問題に取り組むため、政府高官、地域経済共同体、開発機関、NGO、民間団体など、幅広いステークホルダーが一堂に会しました。ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、土壌の健全性を改善し、持続可能な農業を促進する革新的なアプローチにスポットを当て、サイドイベントを開催する等、重要な貢献を果たしました。
サミットは、2006年のアブジャ宣言以降のアフリカの進捗状況に対する厳しい評価から始まりました。アフリカにおける肥料の平均使用量は8kg/haから25kg/ha以下に増加したものの、依然としてアブジャ宣言で掲げられた50kg/haの目標に遅れをとっています。アフリカ連合委員会(AUC)のジョセファ・サッコ・コミッショナーは、アフリカの土壌の厳しい現状に警鐘を鳴らし、緊急かつ協力的なアクションを呼びかけました。ケニアのムサリア・ムダバディ内閣府長官は、農業開発に対するアフリカ大陸のコミットメントを強化し、各国が予算の10%を農業・農村開発に充てるよう強く求めました。

強靭な農業・食料システムに関するSAAのサイドイベント

SAAは、農業普及サービスのためのアフリカフォーラム(AFAAS)とのパートナーシップの下、"Achieving Resilient Agri-Food Systems through Regenerative Agriculture in the Wake of Global Fertilizer Crises and Climate Change(世界的な肥料高騰・気候変動に対し、環境再生型農業による強靭なアグリフードシステムの実現を目指して:土壌の健全性と持続可能な農業集約化のための革新とアプローチ)"と題したサイドイベントを開催しました。このイベントは、世界的な肥料不足と深刻化する気候変動の影響に対処しながら、アフリカの小規模農家の強靭性と持続可能性を向上させる解決策として環境再生型農業を促進するものです。
サイドイベントは、SAAのルース・オニアンゴ名誉顧問の開会挨拶で幕を開け、現在の世界的な課題に鑑み、アフリカで強靭な農業・食料システムを構築する必要性が差し迫っていることを強調しました。これをきっかけに、洞察力に富んだプレゼンテーションやディスカッションが展開されました。
元世銀シニアエコノミストの北米農業普及ネットワーク(NAAAN)上級顧問のデビッド・ニールソン博士は、基調講演で、アフリカ大陸全体の農業生産性の低下を回復する上で、土壌の健全性が果たす重要な役割に焦点を当てました。また、SAAのアミット・ロイ会長は、特別講演の中で、有機物と組み合わせた肥料の適切な散布量の増加を通じて、食料安全保障を確保するためにはアフリカの土壌を再生する必要があることを強調しました。これに続いて、SAAの環境再生型農業担当リード・スペシャリストであるステラ・カビリが、アフリカ全土で環境再生型農業(RA)を推進してきたSAAの経験を紹介し、これらの実践がいかに生活を向上させ、土壌の健全性を改善させているかを示しました。
2020年度アフリカ食糧賞受賞者でSAPEPの責任者であるアンドレ・バティオノ博士は、サヘル地域における輸入肥料への依存を減らすため、地元で生産されるリン酸塩代替物の利用について発表し、肥料危機に対する実践的な解決策を提示しました。アフリカ開発銀行の農業・農産局長であるマーティン・フレジーン博士は、持続可能な農業成長を推進する上で、農業技術、肥料、健全な土壌が不可欠な役割を果たすことを強調しました。また、種苗制度や規制の枠組みを通じて、必要な技術を確実に利用できるよう、公共セクターの積極的な関与を呼びかけました。
AFAASのエグゼクティブ・ディレクターであるシリム・ナディ博士は、アフリカの農業普及フレームワークについて発表し、農家が持続可能な慣行を採用するための効果的な普及サービスの重要性を強調しました。また、SAAのメル・オロウチ戦略パートナーシップ事務所長がモデレーターを務めたパネルディスカッションも行われ、環境再生型農業のビジョンとして、アフリカの小規模農家が直面する肥料コストの問題に対処するため、実践的なイノベーションの必要性に焦点が当てられました。パネルディスカッションには、エクセレンス・イン・アグロノミー・イニシアチブのチーフ・グロース・オフィサーであるマンドラ・ンコモ氏、バイエル クロップサイエンス社のスモールホルダー・ビジネス・アフリカ戦略リーダーであるエブリン・ムジョカ氏、SAAエチオピアのフェンタフン・メンギスツ事務所長が参加しました。
閉会の挨拶では、SAAの北中理事長が、アフリカの小規模農家における環境再生型農業の推進に向けたSAAの積極的な取り組みを紹介し、さらに持続可能な農業への大きな転換を示唆する、農家からの前向きな反応に言及しました。また、北中理事長は、SAAのパートナーシップ、特に国際農林水産業研究センター(JIRCAS)や日本財団とのパートナーシップが、エビデンスに基づく手法を推進する上で重要な役割を果たしていることを強調しました。

基調講演を行うデビッド・二―ルソン博士
 パネルディスカッションを行うマンドラ・ンコモ氏、エブリン・ムジョカ氏、フェンタフン・メンギスツSAAエチオピア事務所長、そしてメル・オロウチSAA戦略パートナーシップ事務所長

パートナーシップ会議

サミットに参加したSAAのメンバーは、期間中、アフリカの農業開発を推進するための重要なパートナーシップとの会議を開催し、持続可能な実践のための協力、専門知識の共有、互いのリソースの有効な活用法などについて意見交換を行いました。IITA(国際熱帯農業研究所)のバーナード・ヴァンラウエ副事務局長およびバージニア工科大学のチームとの会議では、土壌の健全性と生産性を高めるための研究能力の活用に重点が置かれました。また、フランソワーズ・コムラン氏(ベナン農業省事務次官)およびシリム・ナディ博士(AFAAS)とのディスカッションでは、土壌肥沃度の向上、生産性の向上、地域全体の食料安全保障の確保を目指し、農業の課題に対処するための協力的な取り組みが強調されました。

SAA展示ブース: イノベーションと協同の機会をアピール

サミット期間中、SAAの展示ブースではスタッフがSAAの事業や展示された収穫後処理技術について訪問者に詳しく説明し、持続可能な農業へのSAAの貢献をアピールしました。関係者との意見交換の重要な拠点として、参加者同士の貴重なアイデアや経験の交流が行われました。

ブースに立ち寄った来場者に活動を説明するSAA職員

持続可能な農業への結集した取り組み

サミットは、アフリカの首脳による「肥料と土壌健全性に関するナイロビ宣言」の承認で幕を閉じました。同宣言は、2034年までに国内の肥料生産量を3倍に増やし、小規模農家の少なくとも70%が対象となる農業指導を受け、質の高い改良普及サービスを利用できるようにすることを約束するものです。
アフリカ肥料&土壌健全性サミット(AFSHS)は、アフリカ大陸の土壌の健全性と農業生産性の向上に取り組むアフリカ諸国と農業関係者の団結を際立たせました。SAAの積極的な貢献と戦略的イニシアチブは、革新的で持続可能な農業を推進し、アフリカ全域の食糧安全保障を確保するための取り組みの重要性を強調しています。サミットが閉幕した今、そのメッセージは明確です。アフリカは、より環境にやさしく、より食料安全保障の高い未来に向けて大胆な一歩を踏み出す準備ができており、SAAはその一翼を担っています。

農業普及サービスのためのアフリカフォーラム(AFAAS)
アフリカ肥料&土壌の健康サミット(AFSH Summit)公式サイドイベント「世界的な肥料高騰・気候危機に対し、環境再生型農業による強靭なアグリフードシステムの実現を目指して:土壌の健全性と持続可能な農業集約化のための革新とアプローチ」

SAA 出版物のご紹介

E-ニュースレター
"Walking with the Farmer"

SAAの活動動向をレポートしたE-ニュースレターを隔月で発行しています。

E-ニュースレターの日本語翻訳版(PDF)はE-ライブラリーでご覧いただけます。

SAAメールニュース

E-ニュースレター”Walking with the Farmer”(英語版)とイベント情報をメールで配信しています。是非ご登録ください。

登録はこちら

ヒストリーブック

“農家と共に歩んで ―ササカワ・アフリカ財団の農業支援の軌跡―”(日本語翻訳版)

SAAの創設から現在までの歩みを記したヒストリーブック(翻訳版)です。

サクセスストーリー
Voices from the Field Special Edition 2022

「現地からの声」の記事を特別編集版としてまとめました。