エチオピア、ナイジェリア、ベナンにおける開発政策・人材育成基金(PHRDG)プロジェクトのローンチ・ワークショップを開催(於:アディスアベバ)

ニュース
2024年2月6日

2023年12月19日~22日、エチオピアのアディスアベバにて、日本政府がアフリカ開発銀行を通じて設置・支援する「開発政策・人材育成基金(Japan Policy and Human Resources Development Grant: PHRDG)」プロジェクトのローンチ・ワークショップを開催しました。ササカワ・アフリカ財団(SAA)は、エチオピアとナイジェリア(PHRDG-1*)、およびベナン(PHRDG-2**)においてプロジェクトを実施することになっており、本イベントには、アフリカ開発銀行、アフリカ農業変革のための科学技術プログラム(Technologies for African Agricultural Transformation: TAAT)、エチオピア農業省、ソフトバンク株式会社などの関係者が出席しました。(SAAからは、エチオピア事務所、ナイジェリア事務所、戦略的パートナーシップ事務所が出席した他、東京本部の職員がオンラインで出席)

*PHRDG-1「エチオピアとナイジェリにおける気候変動に対応するための科学的根拠(エビデンス)に基づく環境再生型農業プロジェクト(Evidence-based Regenerative Agriculture to Address Climate Change in Ethiopia and Nigeria
**PHRDG-2「ベナン共和国脱炭素型コメ生産性向上プロジェクト(Improving Rice Productivity by Decarbonizing Cultivation for 12,000 hectares of Irrigated Paddy Fields in Republic of Benin)」

イベントの冒頭、SAAの戦略的パートナーシップ事務所のディレクターであるメル・オルオチ博士は、同プロジェクトにおいて、環境再生型農業による炭素貯留の可能性を科学的根拠(エビデンス)に基づき実証する重要性について述べました。また、カーボン・クレジット市場を利用し農家へのインセンティブの重要性に触れ、(土壌の健全化が必ずしも即座に収量増に直結しなくとも)金銭的補償を伴うことで土壌の炭素貯留を促す環境再生型農法の採用を容易にし、より多くの地域で拡大することができると述べました。

エチオピア(ジンマ県セカ・チェコルサ郡のブヨケチェマ村とシャシェメネ村)とナイジェリア(ナサラワ州の10のコミュニティ)においては、PHRDG-1のプロジェクト(予算:975,000USドル)が、ベナン(10のコミュニティ)では、PHRDG-2プロジェクト(予算:900,000USドル)が2023年~2025年にかけて実施されます。SAAは、ソフトバンク株式会社、アフリカ開発銀行のイニシアティブであるTAATプログラムの実施機関である国際熱帯農業研究所(IITA)と連携し、環境再生型農業の技術の実証・普及を行うことにより、農家の生産性を40~60%向上、農家収入を30%改善するとともに、土壌の健全性、農業生物多様性、農業生態系の保全、土壌炭素排出量の削減に貢献し、アフリカの農業に変革をもたらすことを目指します。

SAA戦略的パートナーシップ事務所メル・オルオチ博士 アフリカ開発銀行のイノセント・ムサビマナ博士

アフリカ開発銀行のチーフ農業技術オフィサーであるイノセント・ムサビマナ博士は、同プロジェクトはアフリカ開発銀行のフラッグシップであると評価し、科学的根拠に基づく環境再生型農業推進プロジェクトに全面的に協力する姿勢を示しました。また、IITAやEiA(Excellence in Agronomy)、ソフトバンク株式会社の高い専門性を評価し、プロジェクトを成功に導く重要なパートナーであると述べました。さらに、同プロジェクトは、環境再生型農業を通じた強靭性と生産性への貢献を実証し、その成果は広域普及の引き金になるだろうと期待を込めました。

TAATの事業パートナーシップ・コーディネーターであるチャールズ・ムレケジ博士は、今回のパートナーシップの目的は、アフリカにおいてポテンシャルの高い先進的な農業技術へのアクセスを拡大することであるとし、何百万もの農家が実証技術にアクセスすることで、アフリカ全体の農業生産性の大幅な向上を目指していきたいと述べました。

本イベントの目的は、エチオピア、ナイジェリア、ベナンにおけるプロジェクトの進捗状況の共有と、現状の課題についてパートナーと確認することです。また、ワークプラン、組織間の規則/手続き、予算に関する進捗を共有し、各国間の調整を行うことで、本プロジェクトにおけるアプローチ等について関係者間の認識を共有することを目指しました。

SAAエチオピア事務所長のフェンタフン・メンギスツ博士 SAAナイジェリア事務所長のゴッドウィン・アサー博士

SAAエチオピア事務所長のフェンタフン・メンギスツ博士は、アフリカにおける農業生産性の向上、栄養改善、気候変動への適応と回復力の強化のためには、環境再生型農業を通じて土壌劣化や生物多様性の損失に対処し、農業生態系を強化することが重要であると述べました。PHRDG-1は、ナイジェリアではコメ、エチオピアではメイズと小麦の生産性を向上させ、同時に強靭なフードシステムの構築を目指していると述べました。

SAAナイジェリア事務所長のゴッドウィン・アサー博士は、アフリカにおける農家の生産性、土壌肥沃度、生態系、気候変動などの課題解決に当たっては、「強靭性(レジリエンス)」がカギとなるし、農家の生産性を向上させ、フードシステムのレジリエンスを構築したいと述べました。

エチオピア農業省土壌資源開発主幹のリレ・アビユ氏は、本プロジェクトがエチオピアで実施されることに感謝の意を表し、プロジェクトの成功に向けて同省が全面的に支援することを約束しました。

その後の現地視察では、シダマ州アレタ・ウォンド県ブレッサ村の農家研修センターを訪れ、ソフトバンク株式会社が開発した農業AIブレーン「e-kakashi」やソーラーポンプの稼働状況や、ソーラー灌漑システムを整備し有機農産物を栽培する農家の圃場を見学しました。現地視察では、デジタル等を活用した技術と持続可能な農業の親和性をパートナーと共に確認することができました。12月22日、一行はSAAエチオピア事務所(アディスアベバ)に戻り、現地視察の総括を行い、2日間の立ち上げワークショップを完了しました。

本イベントは、環境再生型農業の実践に知識と技術を統合することで、農家の生産性と生計を大幅に向上させるアフリカの農業変革を前進させるものです。

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