アフリカ開発銀行とSAAによる共同プロポーザル「ベナン共和国脱炭素型コメ生産性向上プロジェクト」が日本政府支援「開発政策・人材育成基金」の案件に採択されました
ベナン小規模稲作農家の生計向上と気候変動緩和の両立を目指して
アフリカ開発銀行と一般財団法人ササカワ・アフリカ財団が、ソフトバンク株式会社と共同で提案した「ベナン共和国脱炭素型コメ生産性向上プロジェクト」が、日本政府が拠出する信託基金「開発政策・人材育成信託基金」の案件として採択されました。
2023年1月20日、アフリカ開発銀行と一般財団法人ササカワ・アフリカ財団は、ソフトバンク株式会社と共同で、「ベナン共和国脱炭素型コメ生産性向上プロジェクト(Improving Rice Productivity by Decarbonizing Cultivation for 12,000 hectares of Irrigated Paddy Fields in Republic of Benin)」(申請額:90万USドル)を日本政府(財務省)に申請し、日本政府とアフリカ開発銀行のパートナーシップの下に設置された「開発政策・人材育成信託基金(Policy and Human Resources Development Grant of Japan: PHRDG )」の案件として採択されました。本プロジェクトは、アフリカ開発銀行及びササカワ・アフリカ財団、ソフトバンク株式会社によって共同で実施されます。
ベナン共和国における農業は、GDPの36%、総雇用の70%を占める最も重要なセクターです。近年都市部を中心にコメの需要が増える一方で、国内生産は伸び悩んでおり、結果として必要なコメのほぼ半分(144万㌧)を輸入しています。今後作付面積の拡大によるコメ生産増には限界があることから,土地生産性の向上が喫緊の課題となっています。また、水田から発生する温室効果ガスの地球規模での影響が明らかになるにつれ、脱炭素を前提とした稲作開発を進めることが求められています。かかる状況のもと、本プロジェクトは、7つの農業開発拠点に位置する灌漑水田12,000ヘクタールを対象に脱炭素型稲作技術の実証・普及を行うことにより、12,000戸の小規模コメ生産農家の生産性(単収)を3年間で40%、農業収入を25%改善するとともに、農地からの温室効果ガス排出減や土壌炭素貯留増による気候変動緩和への貢献を目標としています。
本プロジェクトでは、間断灌漑技術(Alternate Wetting and Drying: AWD)、移植苗リン浸漬処理技術(P-dipping)、尿素大顆粒の深層施肥(Deep Placement of Urea Super granules)やもみ殻等を原料にしたバイオ炭(Biochar)施用を中心に、イノベーティブな脱炭素型稲作技術を、ササカワ・アフリカ財団がノウハウを有する展示圃場をベースにした参加型普及手法(Farmer Learning Platform: FLP)を通じて実証し、その普及を行います。コメの収量・品質の改善や節水・節肥によるコストダウンを通じた農家の生計向上に加え、水田からのメタンや亜酸化窒素といった温室効果ガスの発生抑制、さらには土壌炭素貯留の増加による気候変動緩和への貢献が狙いです。かかる栽培技術に加え、アフリカ開発銀行の展開する「アフリカ農業変革のための科学技術プログラム(Technologies for African Agricultural Transformation:TAAT)」によって開発された、高収量性・耐乾性等の性質を備えたコメ改良品種を導入することにより、小規模コメ生産農家の気候変動に対するレジリエンス(強靭性)の向上を図ります。また、ソフトバンク株式会社が提供する農業AIブレーン「e-kakashi(イーカカシ)」を活用して、対象地域ごとに異なる稲の生育データや環境(気象・土壌)データをもとに上記取り組みの分析・精緻化を行うことにより、一連の脱炭素型稲作技術の農家生計や気候変動に及ぼす効果を科学的根拠(エビデンス)に基づき可視化します。
なお、本プロジェクトは、アフリカ開発銀行とササカワ・アフリカ財団、ソフトバンク株式会社がエチオピアとナイジェリアで取り組むPHRDG案件、「アフリカの気候変動に対応するための科学的根拠(エビデンス)に基づく環境再生型農業(※)プロジェクト(Evidence-based Regenerative Agriculture to Address Climate Change in Africa」(対象作物はメイズ、小麦、陸稲)に続く第二弾という位置づけです。
※環境再生型農業
ササカワ・アフリカ財団は、「環境再生型農業(Regenerative Agriculture)」を「土壌の健全性(物理性・化学性・生物多様性)の回復を通じて農地をより肥沃で生産性の高いものにし、ひいては農家の持続的な生計向上を可能にする農業」と位置付けています。
以上
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