第2回フィード・アフリカ・サミット「Dakar2- 食糧主権とレジリエンス」@セネガルに参加しました

ニュース
2023年2月15日

2023年1月25日~27日、セネガル共和国の首都ダカールにおいて、第2回フィード・アフリカ・サミット「ダカール2」が、“アフリカの食糧増産:食糧主権とレジリエンス(Feed Africa: Food Sovereignty and Resilience”をテーマに開催されました。同サミットは、セネガル共和国の元首でありアフリカ連合議長を務めるのマッキー・サル大統領とアフリカ開発銀行の共催で、34カ国の首脳、70の政府閣僚、また、民間セクター、農業関係者、開発パートナー等の1000人を超える代表や幹部が集まりました。

<サミットの目的>

  • アフリカの食糧増産に向け、農作物の生産、市場、取引におけるハイレベルな政治的コミットメント、開発パートナーの支援、民間投資を動員する。
  • 各国の食と農業にかかる成功事例(気候変動に強い作物品種、家畜や水産養殖の技術、農業普及サービス、新たなプラットフォームの導入による生産性向上など)を共有する。
  • アフリカの食糧安全保障を達成するため、各国政府、開発パートナー、および民間部門のコミットメントを、「食糧・農業供給計画(Food and Agriculture Delivery Compacts)」に結集させる。
  • 競争力のある食と農業バリューチェーンを構築するため、戦略的作物を扱う農産物加工特区を設け、物流インフラを整備する。
全体会議に参加するDr. Mel OluochとMr. Robert Owiti

SAAからは、戦略パートナーシップ・ディレクターのDr. Mel Oluochと、リソース・モビライゼーション・マネージャーのMr. Robert Owitiが全体会議とナイジェリア、ルワンダ、モザンビーク、ウガンダ、エチオピアの国別ハイレベル会合に参加しました。国別会合では、アフリカ各国が確実に行動を起こし、食糧安全保障を達成できるよう「国別食糧・農業供給計画(Country Food and Agriculture Delivery Compacts)」が策定され、以下のプロセスが明らかになりました。

  • 農業生産性を高めるためにアフリカの農業を変容させるための政策について合意を得る。これには、主要な優先農作物の選定、投資計画、生産目標と重要な支援分野を含む。
  • 農業分野への民間投資を喚起する政策立案。
  • 同計画推進のための財源とコミットメント(政府/開発パートナー融資、民間投資を含む)の策定。
  • 同計画を確実に実施するため、ハイレベル諮問委員会を設置する。
  • タイムフレームを設定し、成果の測定方法を特定する。
国別ハイレベル会合(エチオピア)の様子

同サミットには、アフリカ開発銀行、国際農業開発基金(IFAD)、イスラム開発銀行(IsDB)、国連食糧農業機関(FAO)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、アフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)、ドイツ外務省、USAID、アフリカ連合、二国間パートナー、研究機関、多国籍/民間企業、NGO、政府機関、その他多くの関係者が参加しました。

アフリカ開発銀行のアキンウミ・アデシナ総裁は、「アフリカは輸入食糧への依存から脱却しなければならない。食糧を乞うことに誇りはない」と語り、セネガルのマッキー・サル大統領は、「農業をアップグレードするためには、資源を投入するとともに意識を変革し、女性やあなた方に土地を与える手段を見つける必要がある。農業の付加価値を高め、最新技術を導入し、アフリカが自らを養う時が来た」と強調しました。

アイルランドのマイケル・ヒギンズ大統領は、アフリカの指導者と開発パートナーに向け、「21世紀をアフリカの世紀とする。アフリカ大陸を飢餓から解放し地球の共有財産とし、各国の制度、伝統、経験、知恵を尊重するとともに、女性を食糧増産(Feeding Africa)の政策設計に参画させましょう」と呼びかけました。

アフリカ各国の首脳陣(全体会議1日目の様子)

アントニオ・グテーレス国連事務総長は、代理を通じて、「ロシアのウクライナ侵攻による肥料価格高騰と食糧供給網の混乱により、アフリカは現在、気候変動と食糧不安の課題に直面している。農産物加工特区は、農業の構造的発展のためのゲーム・チェンジャーであり、特区周辺の総合的なインフラ整備、農産物の高付加価値化、アフリカの富の創出に貢献するだろう」と述べました。

アフリカ開発銀行のアデシナ総裁は、同行がロシアのウクライナ戦争に伴う食糧危機を回避するため、2022年に15億ドルの緊急食糧生産施設の設立等の支援を開始したことに触れつつ、「未だ2億8300万人以上のアフリカ人が空腹のまま眠りにつくという受け入れがたい状況にあり、迅速に行動し、アフリカの餓えを回避する必要がある」と強調しました。

ナイジェリアのムハマド・ブハリ大統領は、「各国政府は予算を農業に充当し、若者や女性が意欲的に農業に従事できるよう妥協のない支援を行う必要がある」と述べました。イスラム開発銀行のムハンマド・アル・ジャッサー総裁は、農業開発分野における女性と若者のエンパワーメントの必要性を強調し、アフリカの食糧主権とレジリエンス向上のため、多額の資金提供を約束しました。

"Pan- African Mission 1 for 200"のレターに署名したアルバロ・ラリオ国際農業開発基金(IFAD)総裁とアフリカ開発銀行アデシナ総裁

<ダカール・サミット2の成果>

    • アフリカ開発銀行は、アフリカが飢餓をなくし、自らと世界の主な食糧供給源となることができるよう、今後5年間で100億ドルを投資する。
    • 各国は、「国別食糧・農業供給計画」を確実に実施するため、ハイレベル諮問委員会を設置する。
    • アフリカ開発銀行とカナダ政府は共同で、中小規模の農業事業者向け融資制度(Agri-SME Catalytic Financing Mechanism)を開始する。同制度は、中小規模の農業ビジネスへの投資促進とリスクを軽減し、アフリカの食糧システム安定化を図ることを目的としている。特に次の3つの目標達成を目指す。①金融サービスへのアクセスが脆弱な中小規模事業者を対象に包括的な金融市場の構築、②食と農業のバリューチェーンに沿った女性のエンパワーメント、③食と農業のバリューチェーンに沿った気候変動に対するレジリエンス向上。
    • 政府支出の少なくとも10%を農業に割り当て、「繁栄の共有及び生計向上のためのアフリカの農業変革・成長の加速化に係るマラボ宣言」に沿った「国別食糧・農業供給計画」を着実に実施する。
    • アフリカ連合(AU)委員会とアフリカ開発銀行は、様々な開発パートナーと協力し、本サミットで表明された300億ドルの資金調達が確実にできるよう投資資金全体のフォローアップを行う。また、ダカール2サミットの宣言が2023年2月のアフリカ連合首脳会議において検討されることを求める。
サミットに出席した各国首脳陣

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