開催日時
2022年8月5日(金)
19:30 ~ 22:15
Zoomセミナー
申込み締切日 | : (延長)8月5日(木)16:00(日本時間) |
参加費 | : 無料 |
使用言語 | : 英語(日本語同時通訳あり) |
開催概要
つまり、アフリカの小規模農業の文脈においてRAのビジョンを実現するには、土壌の健康の回復と共に、従来のSAIを通じた食糧安全保障を両立させた、アフリカの小規模農家が実践できる「真に“再生可能”な土壌の健康管理」を定義し、実現していく必要があります。本イベントでは、アフリカの小規模農家を取り巻く環境の多様性を理解した上で、「環境再生型農業」とは何かを定義し、アフリカに相応しいRAをアフリカの小規模農業で実現するための技術的な取り組みと普及アプローチについて議論します。
近年、環境再生型農業(Regenerative Agriculture: RA)が、世界的な注目を注目を浴びています。RAは土壌中の微生物による活動を促進し、機械等による土壌攪乱を最小化「させ」、「更に」マルチングや土所被服作物を利用し、生物の多様性を促すことで、土壌有機物を維持する慣行を奨励しています。RAのこうした活動は、土壌の生物学的・物理的・化学的構造を改善し、作物の栽培環境を向上させ、価格の高騰が著しい化学肥料等の使用を削減することで生物多様性の保全と土壌の健康を維持することを可能にするとされています。
一方、土壌の肥沃度が低く、土壌養分の流出が進んでいるアフリカの小規模農業においてはこれまで、「持続的農業集約化(Sustainable Agricultural Intensification: SAI)」が推進されてきました。SAIは、総合的土壌肥沃度管理などを通じた生産性の向上に重きを置きつつ、各地域の土壌・気候・社会経済条件に応じて、有機・無機肥料の適正使用や耕起を併用することを提案しています。
つまり、アフリカの小規模農業の文脈においてRAのビジョンを実現するには、土壌の健康の回復と共に、従来のSAIを通じた食糧安全保障を両立させた、アフリカの小規模農家が実践できる「真に“再生可能”な土壌の健康管理」を定義し、実現していく必要があります。本イベントでは、アフリカの小規模農家を取り巻く環境の多様性を理解した上で、「環境再生型農業」とは何かを定義し、アフリカに相応しいRAをアフリカの小規模農業で実現するための技術的な取り組みと普及アプローチについて議論します。
プログラム
● プログラムは都合により変更になる場合があります。
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時間 (日本時間) | セッション | 講演者 | |||||||||
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19:30~19:38 |
開会の辞 |
Ruth Oniang’oSAA 会長
小山 修JIRCAS 理事長
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21:13~21:53 |
4. パネルディスカッション「アフリカの小規模農業において土壌の健全性と
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モデレーター 飯山 みゆきJIRCAS 情報プログラム プログラムダイレクター
パネリスト Kofi Boaアフリカ不耕起農業センター(CNTA) ディレクター
Edmundo Barrios国際連合食糧農業機関(FAO) 作物生産・保護部門農業担当官
Tilahun Amedeアフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)
レジリエンス・気候・土壌責任者 Sani MikoSAAナイジェリア事務所長
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21:53~22:05 |
5. 質疑応答 |
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22:05~22:15 |
6. 閉会の辞 |
北中 真人SAA 理事長
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登壇者略歴
モデレーター
Mel Oluoch
SAA戦略パートナーシップ事務所長
SAA戦略的パートナーシップ事務所長。2018年に地域事務所長としてSAAに入団し、エチオピアのアディス・アベバを拠点に活動している。米国バージニア工科大学で園芸学の博士号、フィリピン中央ミンダナオ大学で園芸学の修士号、ケニア東部アフリカ大学で農学の理学士号を取得。世界野菜センター、国際熱帯農業研究所(IITA)、ハーベストプラス、国際熱帯農業センター(CIAT)、ワーヘニンゲン植物研究所(オランダ)で研究開発および指導的役割を担ってきた。アフリカの農村や都市のコミュニティに影響を与える、総合的作物管理技術、気候変動に強い農業手法、回復力のある作物品種、栄養に配慮した技術などの農業技術やベストプラクティスの開発・普及を通じて、農業と栄養を統合する学際的な研究開発分野に注力している。現在はSAAの戦略的パートナーシップ事務所長として、アフリカにおける実践的かつ革新的な農業改良普及指導サービスや能力開発システムの設計に向けたパートナーシップの強化に取り組んでいる。
開会の辞
Ruth Oniang’o
SAA会長
ササカワ・アフリカ財団会長。ケニアを拠点とするNGO(Rural Outreach Program)の創設者として、長年に渡りケニアの小規模農家の支援に従事。また、ケニア政府の食料安全保障・栄養部会の議長を務め、貧困、食料安全保障、栄養、ジェンダー問題に取り組んでいる。学術誌の編集長、国際機関の委員会メンバーや理事を務め、グローバルに農家支援を多角的に行う。2017年、アフリカ食糧賞を受賞。
小山 修
JIRCAS理事長
国際農林水産業研究センター(国際農研)理事長。東京大学教養学部卒業。農林水産省勤務(1979年入省)を経て、国連食糧農業機関(FAO)(1986-93)と国際農研(1993-)で国際的な食料事情の計量経済分析に従事。2002年から研究戦略の策定も併せて担当。2015年理事、2021年から現職。
1. 基調講演
Rattan Lal
オハイオ州立大学特別栄誉教授
アメリカのオハイオ州立大学土壌学特別栄誉教授。ラタン・ラル炭素管理・貯留センター(C-MASC)所長。長年に渡り環境再生型農業に注力し、革新的な土壌保全技術を推進してきた。土壌の観点から自然資源の保全・回復と気候変動の緩和につながる食糧増産のためのアプローチを発展・普及させた功績により、2020年世界食糧賞を受賞。また、フォン・リービッヒ賞(2006年)、農学生命科学高等教育協会世界連盟世界農業賞(2018)、グリンカ世界土壌賞(2018年)、日本国際賞(2019年)を受賞したほか、インドではノーマン・ボーローグ賞(2005年)、スワミナサン賞(2009年)、パドマ・シュリー勲章(2021年)を受賞。欧州・アジア・南米・米国の9大学で名誉学位を授与されている。
Ken Giller
ワーゲニンゲン大学教授
オランダのワーゲニンゲン大学アグロエコロジー・システム分析センター(WaCASA)植物生産システム教授。サハラ以南のアフリカの小規模農家を対象に、特に土壌肥沃度の問題と熱帯マメ科植物における窒素固定の役割を、作物・家畜農業システム内の資源の空間的動態とそれらの相互作用に重点を置いて研究している。N2Africa (Putting Nitrogen Fixation to Work for Smallholder Farmers in Africa) などのイニシアチブを主導し、国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク (SDSN) のテーマ別ネットワーク7「持続可能な農業と食糧システム」の共同議長も務める。
2. 現場からの報告
Fentahun Mengistu
SAAエチオピア事務所長
SAAエチオピア事務所長。インド農業研究所で園芸・野菜の修士号、ウィーンのボク天然資源生命科学大学で博士号をそれぞれ取得。以降30年以上に渡りエチオピアを拠点に農業及び開発分野の研究者、専門家及びリーダーとしてキャリアを重ねてきた。アムハラ地方農業研究所所長、エチオピア・アデット農業研究センター所長、エチオピア農業研究所(EIAR)の事務局長を歴任。2017年から2018年まではアメリカのタフツ大学のシニア農学者として、アメリカ合衆国国際開発庁(USAID)のエチオピア農業の知見の文書化・政策(AKLDP)プロジェクトに携わる。2018年より現職。
Kofi Boa
アフリカ不耕起センター(CNTA)ディレクター
ガーナの不耕起センター (CNTA)創設者・事務局長。同センターはこれまで、何千人もの小規模農家、農業普及員、大学生に対し実践的なトレーニングを実施。ガーナのクワメ・エンクルマ科学技術大学とアメリカのネブラスカ大学で農業科学教育を学ぶ。カカオ農学者としてキャリアをスタートし、その後、ガーナ科学産業研究評議会の作物研究所(CRI)で実地調査の研究員として勤務。ガーナ穀物開発プロジェクトにも従事し、不耕起栽培の研究と普及活動を行った。
Leigh Winowiecki
CIFOR-ICRAF
土壌と土地の健全性に関する国際研究リーダーおよび
Action 4 Soil Health連合の共同リーダー
国際アグロフォレストリーセンター(ICRAF)の土壌学者。熱帯地方で15年以上にわたり、土地回復や持続可能な農業集約化、土壌の炭素動態に関する問題に取り組んできた。過去10年間は、土壌と土地の健全性を評価する体系的なモニタリング手法であるICRAFの土地劣化監視フレームワーク(LDSF)の開発と実施において重要な役割を担ってきた。現在、IFAD-EUの資金による「東アフリカとサヘルにおける劣化した土地の回復のためのイニシアチブ」を率いており、土壌回復に係る開発研究を実施している。2018年、国際女性デーのランドスケープ・ロレアルにノミネートされた。
3. 研究報告
中村 智史
JIRCASプロジェクトリーダー
筑波大学生命環境科学研究科の生物圏資源科学専攻にて博士(農学)を取得。専門は土壌肥料学。2008年より国際農研に所属し、主として西アフリカにおける土壌肥沃度管理技術の開発に従事。近年はブルキナファソにおいてアフリカ産低品位リン鉱石の肥料化技術の開発ならびに直接施用法に関する研究を実施。2022年4月よりガーナおよびブルキナファソを対象とした【アフリカ小規模畑作システムの安定化に資する生産性・収益性・持続性を改善する土壌・栽培管理技術の開発(アフリカ畑作システム)】のプロジェクトリーダーを担当。
4. パネルディスカッション
モデレーター
飯山 みゆき
JIRCAS情報プログラム
プログラムダイレクター
慶應義塾大学商学部在学中に米ワシントン大学交換留学、東京大学大学院経済学研究科修士課程を経て、同研究科博士課程単位取得満期退学。その後、国際文化会館新渡戸フェロー(国際家畜研究所ILRIケニア派遣)等を経て、2008年東京大学博士(経済学)取得。2008‐2018年World Agroforestry Centreにて小規模農民による自然資源管理・技術採択をめぐる社会経済研究に従事。2016年より、国際農林水産業研究センターに勤務、アフリカ連絡拠点研究コーディネーター・研究戦略室長を経て、2021年より情報プログラム プログラムダイレクターをつとめる。
パネリスト
Kofi Boa
アフリカ不耕起センター(CNTA)ディレクター
パネリスト
Edmundo Barrios
国際連合食糧農業機関(FAO)
作物生産・保護部門 農業担当官
FAO農業担当官。持続可能な食料・農業システムへのアグロエコロジー的移行を支援するため、生態系管理、土壌の健全性、生物多様性に関する技術的・政策的助言をしている。カリフォルニア大学バークレー校で生物学の理学士号、ベネズエラ科学研究所(IVIC)で生態学と環境科学の修士号、イギリスのダンディー大学では世界アグロフォレストリーセンター(ICRAF)との共同研究において生物科学博士号を取得した。土壌生態学者として、ラテンアメリカ(CIAT-コロンビア)とアフリカ(ICRAF-ケニア)を拠点とする国際農業研究協議グループCGIARで20年以上の開発研究の経験を持ち、農業およびアグロフォレストリー・システムにおける土壌の健全性、生物多様性、生産性の関連性の研究に従事。
パネリスト
Tilahun Amede
アフリカ緑の革命のための同盟
(AGRA)レジリエンス・気候・
土壌責任者
ドイツ・ホーエンハイム大学にて生態生理学の博士号を取得。AGRAでは、気候変動リスクを考慮し、農業生産性の向上と環境保全の両方に投資する「持続可能な農業」プログラムの開発・制度化に従事。AGRA入社以前は、システム農学の主任研究員、国際半乾燥熱帯作物研究所(ICRISAT)の国別代表を務める(2012年~2020年)。2021年2月にはICRISATパートナーシップ賞、ICRISATファンドレイジング賞、生物科学振興協会による「生物科学への顕著な貢献賞」などを受賞している。
パネリスト
Sani Miko
SAAナイジェリア事務所長
2009年よりSAAナイジェリア事務所長。1999年にナイジェリアのザリアのアフマド・ベロ大学(ABU)から灌漑農学で博士号を取得。その後、同国のサマルー農業研究所で、穀物農学と水管理の普及・研究に従事。SAAに参加する以前は、バイェロ大学作物栽培学科長兼農学部長を務める。
6. 閉会の辞
北中 真人
SAA理事長
2019年SAA理事長に就任。前職の国際協力機構(JICA)にて農村開発部部長を務め、アフリカにおけるコメの生産量の倍増を目的とした「アフリカの稲作振興のための共同体(CARD)」の拡大に尽力した他、ケニアを起点に広がっている市場志向型農業振興アプローチであるSHEPの推進、およびIFNA(食と栄養のアフリカ・イニシアチブ(IFNA)の立ち上げに貢献。