TICAD6・笹川アフリカ協会30周年記念シンポジウム開催を振り返って

2016年9月15日

笹川アフリカ協会(SAA)は過去30年間、サブサハラ・アフリカの小規模農家支援に尽力してきました。それを記念し、2016年8月にケニアのナイロビで行われた第6回東京アフリカ開発会議(TICAD6)にて、公式サイドイベントを開催いたしました。6度目にして初のアフリカ大陸での開催となったTICADで、「農業を通じた社会保障と雇用創出への貢献:サブサハラ・アフリカにおけるササカワの30年」と題したシンポジウム形式で実施しました。

冒頭では、1986年SAAの創設以降資金援助をしてきた日本財団会長である笹川陽平氏がスピーチし、「我々の最重要ゴールは、サブサハラ・アフリカの小規模農家の生活レベルが改善されることであり、この目標を達成するための手段として、人材育成にフォーカスしてきた。特に我々のプログラムを担う農業普及員のトレーニングである」ことを指摘しました。また、今回の周年記念シンポジウムの重要性にも触れ、笹川氏は「議論が活発化することを期待し、根底を覆すようなアイディアがSAAの今後30年における新たな指針を示すものと信じている」と述べられました。

基調講演ではアフリカ開発銀行総裁であるアキンウィミ・アデシナ博士を迎え、アデシナ博士は笹川氏の優れたリーダーシップ、「熱意、責任感、そしてそれら以上に(笹川氏の)アフリカに対する愛」に敬意を表しました。アデシナ総裁は、アフリカは「農産品への付加価値創出」を行うことが求められるとし、「国家繁栄のための方程式は明快だ。豊かな国ほど付加価値の高い製品を輸出している。貧しい国ほど原材料を輸出している・・・。アフリカで生産されたものならば、アフリカ内で価値をつける必要がある。そうすることでグローバル市場におけるアフリカのシェアを高めることができるだろう。アフリカの農家は価値のないことのために汗をかくことはなくなるだろう。」と述べられました。

そして、アデシナ博士の意見に呼応する形で、笹川氏とアデシナ博士の立会いの元、アフリカ開発銀行農業産業局チジ・オジュクウ局長とSAAルース・オニヤンゴ会長との間でパートナーシップを約束する覚書が交わされ、サブサハラ・アフリカにおける農業及び農業ビジネスを共に振興していくことが約束されました。

日本の安倍首相からも、SAAに対し敬意が示されました。首相は、SAAの創設者の一人であるノーマン・ボーローグ博士の「それを農家の手に」という最期の言葉にも言及し、「SAAはこの言葉を忠実に守り、エチオピアやマリ、ナイジェリア、ウガンダで活動を続けている」と述べられました。

なお、ナイジェリア連邦共和国農業村落開発大臣であるアンデュ・オグベー氏は、SAAがナイジェリアの農業普及制度や農家の教育、農作物の生産性の向上において果たした役割を評価し、「我々はSAAの尽力に対し、今後も常に敬意を表するだろう」と述べられました。

続いて、米国元大統領であるジミー・カーター氏から寄せられた特別書簡がシンポジウムの場で代読されました。「私はアフリカの農家とともに活動を行っているSAAを讃える。ノーマン・ボーローグ博士と笹川良一氏は、今日までSAAが成し遂げてきたことを見たらそれらを誇りに思うだろう。笹川陽平氏そして日本財団に対しては、アフリカの農家と彼らの未来への責任を果たしていることに祝意を表したい」と記されていました。

その後、「アフリカにおいて変化しつつある農業」と題し、ルース・オニヤンゴ会長が議長を務めパネルディスカッションが行われました。アフリカ連合村落開発局長ツムジメ・ローダ・ピース女史は、マラボ宣言の文脈における気候変動への適応について、エチオピア普及局テスファイエ・メンギストゥ氏は、エチオピアの経験を例に小規模農家の恩恵に資する農業政策について、SAA理事であり国際肥料開発センター(IFDC)元理事長であるアミット・ロイ博士は、土壌の肥沃度と小規模農家の生産性について、さらにアフリカ緑の革命のための同盟(AGRA)の農業普及局長レビー・ハラワ女史は、小規模農家のマーケットにアクセスできることの重要性について述べました。

日本の民間セクターからは、トラクターや重機製造会社である株式会社クボタより木股昌俊社長がパネルディスカッションに登壇され、日本の稲作用農業機械がもたらすアフリカの農業への貢献について述べられました。

最後に、世界食糧賞財団会長のケネス・クイン大使がスピーカーを務め以下のように述べ、シンポジウムは閉会となりました。「ここから30年後、再び私をこの場に招待してくれることを期待したい。世界の人口は90億人に達し、私たちは人類に対するこれまでにないほど深刻な課題に直面することになる。私たちは90億全ての人々に食糧を提供することができるのか?私はこの点において楽観的でいる。なぜなら、私たちにはノーマン・ボーローグ博士と笹川良一氏が残した遺産があるのだから。」

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